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─駅前─
[雪が舞い散る交差点。
路面に放り出された、ピンクの小熊の携帯電話。
悲鳴はざわめきを呼び、人だかりを作る。
アスファルトを染めていく、赤い赤い水溜り。]
[急いで駆けつけた救急車は、スーツ姿の男をゆっくりと運んでいく。
残された野次馬達は一様に、諦めだけを抱いて去っていく。]
─駅前─
[路上に転がったピンクマ携帯が、「めーるでふ〜★」と能天気な声。]
…あった、良かったー…。
代替機までやらかしたら、弁償だったもんなぁ。
[携帯を拾い上げつつ安堵の声。]
…雪、か。
[はらはらと舞い落ちる白い欠片を、指先で受け止めて。]
降りれるのかな、この天気で。
…空港、閉鎖にならなきゃ良いが。
[灰色の空を見上げ、その向こうから戻ってくるはずの妹に思いを馳せる。
携帯の着信メールを確かめる。
「もうすぐ飛ぶよ」と添えられた、海外の空港の風景と妹の笑顔の写真。]
やっと逢えるな、奈緒。
[一年間の留学を終え、妹が帰ってくる。
日付変更線を飛び越えて、この街に着くのは11月2日。
彼にはもう、永遠に訪れない明日。]
[いつもの帰り道。
足取りはいつもより軽い。
片手さげた紙箱には、妹の好物の駅前通りの和菓子屋のすあま。]
…お?
今日もここでたむろってんのか?
[通り道の公園。
最近良く見かける学生達に声をかける。]
よ。
[口々に声をかけてくる学生達に笑って。]
まぁ、なんとか無理矢理明日の分も終わらせてきたとこさ。
明日は休暇取ったんでね。
妹帰ってくるからさ、空港まで迎えに行ってやらんと。
[その明日はもう二度と訪れない。
故に無意識に願うのは
…せめて明日を楽しみに待つ、今日という日が永遠に続く事。
降り積もる雪が消えていくように、この思いが消えてしまうまで。
今日が永遠に続きますように。]
…大丈夫?って…何が?
[ずきりと頭が痛む。けれどもそれだけで。
未だ自覚できていないらしい。
自分の体が、どうなってしまったのかを。]
ま、そういうこと。
あまり似てないって言われるけどな。
…ほら、これこれ。
[例のピンクマ携帯を開いて、妹からのメールを表示。
眼鏡をかけたミディアムボブの少女が、人差し指立てて映っている。]
あんまし積もられてもなぁ…
[見上げる空は灰色。]
電車とか飛行機とか止まられちゃ困るさね。
雪自体は嫌いじゃないけどさ。
スノボとか出来るのも、そろそろだし。
ぉ、スノボやんの?
[イマリを誘いかけて、流石にちょっと踏みとどまり。]
いやいやいや、流石に泊りがけで連れまわすのは色々世間的にアレだしさ。
イマリちゃんと友達沢山と行ったら面白そうだが、流石に良い大人がアレじゃアレだろさ。
[楽しいのか困ったのか色々複雑げな表情。]
[食事に誘うジュンタをちらり見て。
邪魔しちゃ悪いかなーとか迷う。
とはいえ、邪魔しないように、とイマリちゃん連れて行くのも大人としてどうなんだ、とか葛藤中。]
あぁ、俺の友達とかも…
[ちょっと考えて。]
いやいや、いかんいかん…それだともう完全に女子高生と合コン状態だ。
妻帯者連中は誘いに乗らないことを考えると…イズミとカワノと…
ぁー、絶対ダメ。
狼の群れんなかに子羊放り込んじゃダメ。
あぁ、行けるといいな。
[じゃ、と手を振ってイマリを送り出し。]
いやー、今日は帰るさぁ。
疲れてっからさっさと寝たいし。
[んーっと伸びをして、軽くこめかみをさする。
ま、うまくやれよ?とジュンタに小さく囁いてから、ひらりと手を振って立ち去った。]
…痛ぅ……
[不意に立ち止まり、頭を押さえる。]
ディスプレイ、見すぎたかな…。
[指先は目の周りを押さえ、首筋を揉みに移動。]
凝ってんなぁ…ゆっくり風呂はいろ…
[くたびれた背中は家路へと*]
─駅─
[いつもなら通勤ラッシュでごった返すはずの構内は、がらんと静まり返っていて。]
…何だ、これ。
[今日は祝日だったろうか?そんなことは無いはずなのに。
定期を使って自動改札を抜ける。
人気の無いホームは、長く長く広い。]
…何を、言って……?
[少女の言葉に首をかしげる。
電車の気配のしない駅。
耳鳴りを伴う、頭痛。
遠く、雑踏のざわめきが聞こえた気がした。]
そーかそーか。
[デンゴをくしゃくしゃなでて。]
お前も無事、と。
どうしたんだろな…この街。
避難とかなら、お知らせあるだろうに。
…他は…だれか居た?
―コンビニ―
そうさな。
…けど、きっとみんなは大丈夫。
[頭痛は止まない。
こめかみを軽く揉んで、少年を見守る。]
もしあれなら、俺のトコ来るか?
[不安そうな少年を誘って。
壁の時計。針が逆回転をはじめたのにはまだ気づかない。]
[こぼれ落ちる砂のように、さらさらと世界は崩れていく。
記憶と思いが、薄れていくように。]
…サヨナラ、なんか…。
[空へと還る、雪。]
[ピンクマ携帯を確認。
スケジューラには【明日は大事な日☆】の旗印。]
…明日?
まだ、一日?
なんで、明日が来ないんだ?
[困惑。
視界が赤く染まるほどの頭痛。
よろけて座り込む。
少年が驚いたかどうかも、わからなかった。]
…消えたくない!
[黒髪の少女が告げた事実を認めたく無くて。]
…だって……
[いつか良いことあると、言ってくれた人がいて。
スノボ行きたいねと言ってくれた人がいて。
明日は、妹が…]
…悪い。頭痛い。
だれか呼んできて…って。
無理か。
[少年に頼みかけるも、ひと気の無さを思い出して。
飲み物をとるように頼み、アスピリンを二粒。]
―コンビニ―
[聞き覚えのある声に、かるく手を挙げる。
たはは…と情けない笑み]
キミも居たね。安心した。
…悪い、頭痛くてさ…
薬飲んだから、多分ひと寝入りすれば収まる…
[カウンターの腰壁に背中を預けて、少し目を閉じた。]
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