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[明日は、大切な日。
そう告げる携帯のスケジューラ。
窓の外、降り始める雪。]
…っ!?
[一瞬、通り過ぎるヘッドライト。
けれど、車の姿は無く。
とっさに押さえたこめかみ。
指先にぬめる、鮮やかな赤。]
…嘘だ。
[震える手を見つめたまま、瞬く。
はらりと幻のように、痕跡は消え去って。]
そんなはず、無い。
…ああ、かけてみるといい。
[異変については言えぬまま、イマリに頷いて、]
…メール?
[そこには、無機質な名前が5つ。]
…ジュンタ?
[欠けた、名前。]
[電話中のイマリを黙って待ち、漏れ聞こえる会話に目を伏せた。]
…イマリちゃん。
[結局何も言えず、幼子にするようにお団子頭をそっとなでてみる。]
[ただ、頷いて。
泣きそうな肩をワイシャツの腕が包む。
すがりつかれる事も構わないと。]
[されどその身のぬくもりは、既に淡く薄い。]
…もっと早く、逢えてたらな。
[長い沈黙のあとに、こぼれたのはそんな言葉。]
[長くは居られない。
けれど、連れて行くなんて出来なくて。]
なんで…だろうね。
[目を伏せる。
聞こえるざわめき、遠く救急車のサイレン。
アスファルトの固い感触と、肩へと舞い降りる冷たい雪。]
[手の中の携帯は、赤い飛沫に汚れている。]
[さらさらと、こぼれおちる砂のように、記憶は静かに薄れ行く。
最期数日間の、それだけが色濃い。]
パフェ、食べにいこうか。
[約束だけは、消えず胸の中。]
もう一つがもう無理なのは…わかってるから…さ。
[永遠に訪れない11月2日。
それを待ち続けるだけの…永遠の今日。]
なら、約束の方が先さね。
あぁ、行こうか。
[少女の笑みに、笑い返して立ち上がる。]
…何処の店のが良いかな?
[その様子だけなら、まるでデートのようで。
けれどもそれは、最初で最期。]
…ぁ。
[指摘に、たはは…と情けない笑み]
流石に、女の子が喜ぶようなおしゃれなカフェとかはあまり…
[くしゃくしゃと髪をかきながら。]
うん、君の好きな店でいいよ。
ぁ。
あー、あの店?
場所は分かるけど入った事ないなぁ。
普段は向かいの牛丼屋とかで済ますしさ。
[コンビニを出て、雪舞う道を歩きはじめ…]
そんな良い店なら、いっときゃよかったなぁ。
いいんだよ、ちゃんとゴボウサラダも喰ってる。
[妹のようなことを言う…と苦笑い。]
そうだな、これから。
…ん?あいつら……
[道の向こうのデンゴに片手を上げた。]
あぁ、だいぶ良くなったさ。
[心配げな少年に親指立てて。
されど、はらり…雪のようにほどけかけて…ぎゅっと手首をにぎった。
吐く息は、白くは無い。]
―喫茶店―
[先に入ったイマリが店員のようにあいさつするのに、一瞬目を丸くして。]
へぇ、そういう趣向かぁ。
[丸くなった目は、すぐに細められた。]
じゃあ…ブルーベリーのヨーグルトパフェをひとつ。
[手をのばし、彼女の切りそろえられた前髪に触れ、
髪を分けるその指は、もうぬくもりを失っていたけれど]
…会えて、良かった。
[額へと、それは触れたか触れぬ間か。
顔を寄せたまま、うすれていく姿。]
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