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[>>1怒鳴り声に、びくりと身をすくめる。
不意に男の落とす影に覆われた]
……あ。
[振り仰ぐと見えるのは。
薄暗い店内。
濃い闇に覆われた、男の顔。
手に持ったままの写真が、なにかを訴える」
[考える暇なんか無い。余裕もない。頭は繰り返し警告する。
逃げる、逃げなきゃ、逃げないと――
逃げないと、なんだ?]
やだ――あっ!
[立ち上がったところ突き飛ばされる。
がしゃりと、ぶつかった骨董品と一緒に床に投げ出された]
――ぃっ
[両腕を広げて迫る男に、身をすくめる。
黒い写真と、小さい物を握りしめたままの手で、羊のぬいぐるみを抱きしめる]
なんでよぉ! 骨の人、バラバラにしたら可哀想って言ったじゃない!
[男の手に捕まる寸前、叫ぶことが、最後の抵抗*]
……生き……?
[>>16ひく、と引きつる声で。
影の向こうに見える笑みは、いつも見るものと同じような気がした]
そんなの……やだ。
[遺骨を、バラバラにすることも。
人が、生き返るなんてことも。
骨董屋の、暗い顔も]
[全部嫌だと言いたかった。なのにかちかち歯がなるだけで、声がでない。
右腕、左腕、掴まれた部分が痛い。男の言葉が理解出来ない。ただ、胸が痛い。
自分を見ていないような相手と目が合って。
のど元に伸びる手は、恐ろしく緩慢に見えるのに、抗う方法がわからない]
[高く響く靴音。
ぱちりと瞬きする。
骨董屋の視線が逸れて、手の力がゆるむ]
むきー!
[闇雲に、引っ掻く形の手を振り回し、男の下から抜け出した。駆け寄る、相棒の元へ*]
[>>29いつかとおんなじ様に笑ってくれる相棒の顔が見えれば、ぐし、と涙ぐみそうになるけれど。
ぺちり、と額を叩かれて。ただうーと唸った。
手を握られる、痛くなく。
導かれるまま相棒の後ろに隠れるが]
相棒……
[ゆらりと立ち上がった骨董屋が、火掻き棒を構えるのを見ると、心配そうにヨシアキを見上げる]
[>>43渡された鞄は荷物が減ったはずなのにずしりと重くて。
押し黙った相棒の顔は、じっと見上げてもぴくりとも動かなくて。
色を失って立ちつくす骨董屋は、先程までとは別人のようで。どう見たって選択を迫るヨシアキが優勢なのだろうに。その横顔も、なんだか別人のようで。
少しだけ不安が募って、相棒の背広の裾を握った*]
[>>77棚の上から落ちてくる黒い人形。
肩を落とした男は、それでもなんだか大きく見える。
言葉を返す相棒の笑った顔は、ここからじゃよく見えないけれど。
耳に届く音に、ぎゅうと背広の裾を握り締めた]
[提示される条件。少しだけ目を見開いてヨシアキを見上げる。
誰かのいたずらの誰かが自分になっても構わないと思う。
あの土地がちゃんと売れて、会社員が困らないといいなと思う。
消えてしまったみんながちゃんと、帰ってくればいいなと思う。でも]
骨の人、またどこかに置くの? バラバラにするの? まだ寝せてあげないの?
[そこまで言って、答えを持つのが相棒ではないと気づいて、黒い人形を持つ男に視線を転じた]
[見つめた先にいる男は、少しだけ唇を震わせていて。
紡がれた言葉は到底――]
……。
[無言のまま、かぶりを振る。差し出された手を拒絶するように、ぎゅうと小さい物を握りしめた]
そんなの駄目。
悲しいからって、死んじゃった人を呼んだら駄目。
[ゆるゆると首を振るのは、かつての自分がしたように]
困らせたら駄目なのよ。骨の人がゆっくり寝られない。
悲しいときはね、いっぱい泣いていいのよ。せめて向こうで幸せでいるようにって、思っていいのよ。
[ぽつり、ぽつりと言葉を落とす。次第に、握りしめる手に向けるように]
[握りしめられる男の拳も。
震える肩も。
思い出の底の泥が舞い上がるようで。
一度、唇にきゅ、と力を込めて。
持っていた鞄も、羊の人形も、黒い写真も、相棒に押しつける]
……ん。
[言葉は、ない。
男に歩み寄ると、両手を広げる。
男の位置から見えるだろう、薄らと首に残る、男の手形]
終わったら、ちゃんと寝せてあげてね。
[手を広げたまま、言う]
[聞こえない、こんなに近いのに。
抱き寄せられる、その腕の強さもあやふやで]
――。
[何を言おうとしたのか、わからない。
自分が何を見ているのかも、あやふやで。
ただ自分が唇を震わせたときだけ、聞こえた気がした――優しい女性の声]
[ゆるりと腕の力がゆるむと、音が戻ってくる。
静かな男の声は聞こえるけれど、ああこの声とさっき聞こえた声が並んでいたのかなんて思っていたら、意味を理解しそびれた]
[男の背中にかける言葉なんか思い浮かばなかったから。
困って困って、困った顔で相棒を振り返ったら]
……。
[あんまり見ない不満そうな顔がねるねるねるねをすすめてきた]
食べる。
あと……ごめんね?
[長靴てくてく近寄って、相棒を見上げた]
[>>118相棒を見上げていると、静かに静かに言葉が振ってきた。
まるで無垢な、真っ白な言葉は、額に当たって溶けていって、少女はぱちりと瞬きする。
宙でゆらりと揺れる相棒の手がやがて髪に触れるときには、相棒の顔は手に隠れて見えなかったけれど。
にこり、と。笑った**]
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