[1] [2] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
-ペンションの前-
[一台の車が止まり、後部座席から舞台衣装らしい派手なドレスの女が出てきた。大きく伸びをする]
ああよかった。間に合ったのね。いい空気。
[ボストンバックをえいやっと引っ張り出して扉をばたんと締める]
え? うん。ちゃああんと帰ってくるわよ。ちゃあんとね。
私みたいなぽっと出なんて、帰らないと仕事なくなっちゃうじゃない。
帰りも迎えに来てくれるの? ……うん。ありがとね。
[しばらく運転手となにやら話をしていたが、にっこりと笑って去っていく車を見送った]
あー。あー。
[喉に手を当てて小さく声を出してみる]
歌いすぎかしら、それとも営業周りのしすぎかしら? 営業周りのし過ぎね、きっと。
せっかくのマチコの誘いだし、のんびりさせてもらっちゃおーっと。
えっ。
ジロウさん……整形したの?
再婚な分けないわよね? ハガキにはジロウ&マチコ(はーと)って書いてあるし。
旦那さん。変わったお名前なのかしら?
なっ……もう冗談はやめてよ。びっくりしたじゃない。
私、マチコの友達だもの。ジロウさんの顔くらい知ってるわ。
[むぅと膨れたあとに苦笑する]
露草ザクロよ。いちおう、歌手やってるわ。
若旦那さんなの?
器用なのね。
若旦那さんって色々できるのね。
私も何か手伝おうっかなー。
え? マチコなんで止めるのよ。ひどい。
今までに料理で病人なんて出したこと無いわよ!
[一瞬だけ嬉しそうな顔をしてしゅんとしたあと、気を取り直すように笑った]
うん。まだバリバリ無名だから!
若旦那さんが影薄いなんて、ずいぶん激しいお爺様とお父様なのね。
鶴賀ってきっと素敵な宿なんでしょうね。
あらら、可愛いお客様ね。
はじめまして、こんばんは。
私は 露草ざくろって言うのよ。よろしくね。
[にっこりと微笑んで丁寧にお辞儀した]
大女将さんなの。
きっとしゃきっとしているんでしょうね。
[ゼンジの乾いた笑いを耳にして、微笑む]
お父様とのお泊りなのね。それは楽しみね。
あのね……ゼンジおじちゃんじゃなくておにいちゃんなんじゃないかしら?
いい年なの?
あまり私と変わらないかと思ってたわ。
ジロウさんは……落ち着いてるのよ。ね?
ちょっと待って! マチコ怒らないで! ここ台所だから怒ると危ないわよ!
マチコっ!
だから台所は危ないって。えーと。ジロウさんマチコ押さえてっ!
[ゼンジのそばにやってくると心配そうに見上げた]
大丈夫? でも……口は災いのもとじゃないかしら?
ジロウさんはマチコより年上よ。いくつかはナイショだけどね。
えーっと。
ここにいると、なんか流血の惨事になりそうだし、私が手伝うと……だからマチコ笑わないでよ! もー。
ええ、食堂で待ってるわ。
ルリちゃんも一緒に行く?
どういう料理って……。
普通に砂糖とか塩を使って、爆発とか焦げもなく、見た目が普通な……ああ自分で言ってて悲しくなってきたわ。
簡単に言うと、あんまり美味しくなかったのよ。マチコは死ぬほどまずいって言ってただけ。
中学時代の調理実習の話なのにね。
お茶ありがとう。いただきます。
ー食堂ー
若旦那さん。それなりの年齢とか、酷い。
そりゃ確かに子供じゃないけど、むぅ。なんだか納得いかないわ。
[小さな声でぼそぼそと]
まさかジロウさんと同じ年だなんて思わなかったし。
[耳をぴくりと動かし、断片的に聞こえた単語をオウム返しに呟く]
クサイメシ? コレウケトレトリャー?
……何だろ。チェックインかな?
元気の良さそうな声。後で会えるかしら?
まぁ。綺麗なお人形さんですね。
ジロウさん人形作りが趣味だなんて意外だわ。
丸太を切ったりとか、そういう……大きな物を作る感じ、だったので。
[少し言いよどむと、視線をぐるりとさまよわせ、何か納得したかのように微笑んだ]
でも、そう言われてみれば、小物とか、窓枠の飾り彫りとか、しっかりとデザインされていて、綺麗ですね。
あ、私、マチコの友人の露草ざくろと言います。よろしくお願いしますね。
夫婦って……若旦那さんと……? いえいえ、夫婦じゃありませんっ!
ルリちゃんは、これからお父さまがいらっしゃるんです。
若旦那さんは、若旦那さんだから、旦那さんかもしれませんが、私はまだ、結婚はしてません。
[テレビから、「はらたいらさんに3000点」と言う声が聞こえている]
ええ、ジロウさん、斧担いでいるのが似合いそうですよね。
[くすくすと笑っていたが、綺麗と言う言葉に酷く照れたように赤くなる]
そ、そんなことないですよ。
綺麗って言われると嬉しいんですけど、ええと、照れちゃいます。
若旦那さんとお似合い……ですか?
[今までの会話を思い出しつつ、首をかしげた]
え。お見合いって、だからどうしてどこをそう見るとそうなるの!?
アンちゃん。ビールは駄目だからね!
未成年が飲んでいいのは甘酒だけだからね!
クリスマスのシャンメリーは……よかったかも!
セイジ君落ち着いて、若旦那の淹れたお茶飲むといいと思うわ!
ボタンさん。違いますよ。
若旦那さんのお見合いの相手はセイジ君みたいですよ。
セイジ君。みんな初対面だから緊張しないで、それに歌手って言ったって、全然たいしたことないから落ち着いてね。
セイジ君どうどう……。
ほら、あるわよね。動揺すると歌詞間違えたり忘れちゃったり「るーるるるー」でごまかして「キタキツネ呼ぶ気か!」とか酔っ払いに突っ込まれたりとか、いろいろあるのよ。
[ゼンジの馬が趣味という言葉にぽつりと]
じゃあ。食べる方なのかしらね。
食べる方といえば……マチコのぎょうざ美味しいですよね。おなかすいた。
マーチーコー。育ち盛りがおなかすかせてるよー!
[意外なほど通る声で台所に向かって呼びかけた]
あらら、セイジぱぱとルリちゃんは親子なのね。可愛い。
[幸せそうな2人を見て目を細めている]
若旦那さん。お醤油ありがとう。
マチコ、ご飯とかこのお櫃からよそっちゃえばいいのー? お味噌汁とかー。
あ、アンちゃんありがとうね。
いっただきまーす。
[1] [2] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ