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[奪った包丁がクルミの首を、華奢な果物ナイフが傷を狙う。片手はつないだまま、足を使って果物ナイフを持つ腕を地面に縫いつけようとする。
柔道の寝技に似る]
幼いのは、クルミちゃん。君にはおばあちゃんやら友達やら、野球か何かやってるんだったらチームメイトがいるだろ?
その子らにお別れも何もしないで忽然といなくなってもいい、って思ってることだな。
酷く目の前に大きなことを投げ出されて、何だってやっていい、ってそう、お前さんはただ自棄になってるように見える
[ナイフの刃が返り…]
[3rdと12thのもみ合う姿を目にする、
3rdについては5階で告げられた言葉にひとまずの保留をして、その喧騒はやり過ごす]
……、
[そして足音をやり過ごす、
かける姿は6thであったが別に自分を見つけたからではなさそうだ、人探しの気配はない。
6thの駆けて来た方へと足を向ける。
うっかり踏んだら滑るだろう血の跡]
[走り去るコハルの背を見る為に
首を動かすノも億劫だった。
足音が去ると同時に、
エスカレーターが止まって音が減った。
傷口を抑えた手が、脇に落ちる。
最早 赤の勢いも衰えてきていた]
…あー。
魔法がありゃ、なぁ。
うまいもんは多いが、…
…不便な、世界だぜ…
[呟いて、そっと目を閉じる。
痛みと熱が全ての感覚を支配しているのに
叫びも出ず暴れも出来ず―――
自分の鼓動の音が、随分と遠くに聞こえた]
[しかし彼女は10thを招かなかった。
ちょうど、11thと2ndとが対峙している場面を、見ていたから]
……。
[10th付近の空間に亀裂が入り、
お茶の入った透明なグラスを持った細腕だけがそっ、と差し伸ばされる]
まあ、受け取れ。
[ぱっ、と手を離すがグラスは落ちないし中身もこぼれない。
10thの傍に漂い浮き続ける。
空間の裂け目から完全に腕を抜いて一息。
彼女もまた、乱戦の様相見せる4Fへと注目する]
[果物ナイフを持つ腕を押さえようとする足を、腕で払い、足にナイフを突き立てようとする。]
それは……仕方ないよ。
でも、きっと私が何かやってるんだなー、っていうのは、分かってくれると思う。
チームだし、……親だから。
それに、戻ってももう元の生活には多分、戻れない。
……何なら、みんなから、私の記憶も消しちゃえばいいし、ね。
あと、自棄になんて、なってないよ。私なりに考えた結果、だから。
だから……自棄なんて、言われたくない。
ちなみにさ、なんで――守ってくれたんだと、思う?
[問いかけて、ああいや…と続けて首を振る]
答えは今じゃなくていーんだ。
オレ様さ、マシロのねーちゃんに頼みがあるんだ。
[さっき落とした自分の荷物をひとつひとつ、
ゆっくり拾い上げる。
ほとんどはズボンのポケットに詰め込んだ。
入らないペットボトルとクッキーは、
ぽんぽん、と持て余すように手の中で遊ばせた後、
―――あげる。と、マシロの目の前に置いて、]
…、…ゼンジのおっちゃんに会ってやってよ。
[濃厚な血の匂い、多少灯りはなくても見える目は、暗闇と紛れる血溜まりの手前で足を止める。
視線の先には、11thの姿があった]
……、なんだ、
結局、狩られたの……、
[その様相を認めれば、零れるのはそれだけだ。]
/*
ネギヤさんは走って5番さんの方に言ってたんだから、それでこっちに急ぐっていうのは何かこう、距離感的な違和感が。
1stたちのすぐ近くにいた、つもり、だった。
[すぐ傍まで辿り着けば、ネギヤは横たわり。
即座に激しいクラッカーの音が鳴り響く。
どうやらそのその音はクラッカーのようで。
鳴らした相手はコハルだと知り、彼女がソラを庇うように連れて行くのが目に映る。
追いかける気持ちは毛頭も無く。
ネギヤとソラは無事かと思う反面、後ろから追いかけて来るであろう1stへ顔を向けた。]
オレ様はマシロのねーちゃんのこと、割とさ、
嫌いじゃねーんだ。
生き残ることに貪欲で、
手を汚せるくらいの覚悟があるオトナは、
自分と、似てるから。
だから、ちっと、安心できて。…怖くない。
[年に似合わない薄い笑みと、年相応の弱々しい苦笑。
足して二で割ったような曖昧な表情を浮かべて]
だから…―――
守るとか、ほんのついさっきに、
言ってたのに ね……
[誰が告げた言葉は口にしない、
それは別に誰に聞かせる気も無い独白だ]
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