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前向きな人だと思ったけど──…
ゼンジさんは度胸もあるな。
[少し、感心した声色になる。]
裏切られたら顔色も変えずに切り返す。
そんなことも、あるかと思ってたよ。実際。
10thと8th?
では暫くの間、そこの動きも掴めるか?
ゼンジさんが8thを押さえられるなら、
残るのは───0th、だな。
あれからさっぱり見かけてないけど。
[しかしこちらは見られているのだろう。
そう思えば顔も苦くなる。]
待てよ、俺だって別に──…
[君たちよりもと言われれば、咄嗟に言い返す。
けれど言葉を飲み込んだのは未だ躊躇うところのあるがゆえ。
平和というなら、自分の世界も平和であった。
人が人を殺すことなどない。
そんなことをすれば、すぐにシステムに抹殺される。
平和といえば退屈なほどの平和な閉鎖世界。
そこで暢気に学生などしていた自分は、どれ程に平和だったか。]
[けれど、]
…、慣れていないなら、そうだな。
[顔をあわせてなければ声でもない。
ならばきっとバレないだろう。
11thに対したときと同じように、取り繕う。
それが吉と出るか凶と出るかは分からないまま]
協力を申し出て俺から切るような真似はしねえよ。
さっき言ったとおりだ。
俺たちの利害は一致していると考える。
だから敵に回ることを今は考えていない。
…───が…、
[その先は音にならず]
─ 1F・日用品売り場 ─
[園芸コーナーで、目当てのものを見つけた。
殺虫スプレーだ。
店員はいないから、暗闇に向けて試しに発射してみる。
何となく良さそうに思えたものを失敬した。
ポケットに、たこ焼きの錐と一緒にねじ込む。]
刃物はなあ…。持っていても。
[正直、ろくに扱える気がしない。
包丁を一度手にとって、しみじみと見て諦めた。
むしろ鍋の蓋はどうかと思いかけて、これもやめる。
辺りの様子を窺いながら歩き回れば、
店の中心に程近いところまでやって来ていた。
向こう側は食料品売り場か。]
─ 1F・食料品売り場 ─
[日用品売り場から食料品売り場へ至る途中、
フロアマップを見つけた。
右手首の端末に読み込ませる。
同時に見遣った日記に、新たな記述が増えていた。]
”1stは食料品売り場で、8thを見つける”
……へえ。
ということは、向こうがやって来るって話か。
[食料品売り場を歩き、棚の向こうに目を凝らす。
ひとまず、開けた場所からは見通せない位置に身を潜めた。]
[ヨシアキの潜む辺りは、調味料の棚だ。
胡椒やら何やら、小さなスパイスが並んでいる。
通路挟んで向かいは調理済み食品コーナー、
だが残念ながら、営業の終わった今は何の品物もない。]
…あそこに出れて良かったな。
[そんな感想が、落ちた。*]
[それが作戦のうちだったとは思い至らぬまま。
姿勢を低くして、菓子ワゴンの陰に隠れる。
そうして、右手首の日記を確認したが、]
”1stは食料品売り場で8thに見つかる”
[記述が書き換わっている。
慌てて見渡したが、人の目に暗闇は見通せず]
…──8th、いるのは分かってる。
[見えぬまま、ただ闇に声を放つことに*なった*]
なんだ、人数も分からないで来たのか。
[そう返したのは、せめてもの意趣返しだ。
日記の記述の変化。
つまりは、自分はミスを犯したのだろう。]
余計な世話だ。
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