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なんだ、冗談か……。
[言葉には素直に納得などしつつ]
……ちょっと、戻ってみる。
あ、そうだこれ、忘れないうちに……。
[白猫獣人の顔のついた一般的に言って多分、成人男性が使うにはかわいらしすぎるイヤホン。袖の中で触れていたそのケースを差し出したところで、ノイズ混じりの電子音声が響いた]
『 8thは5階で10thの死体を見る 』
……え?
[告げられた言葉に、戻る足が急いた]
確実な方法なんて、やる前に誰が分かるん?
それこそ、かみさまぐらいじゃねーの?
…、…――自分の正体、
しっかり明かして、
そんでちゃんと会話しようとするヨシアキは、
オレ様さ。 …すごいって、思うぜ。
『―秒後、8thは5階で10thの死体を見る』
[回避出来ないだろうほぼ確定の未来が、そんな風に告げられることを知ったのは、
倒れ伏す人影が視界に入る直前だった*]
…ははっ、
[かみさま。その単語に笑ってしまった。
そうか。勝って神になれば、そんなことも可能だろうか。]
───…まだかみさまじゃ、ないもんな。
[別になりたくもない。
そう言ったくせに、埒もないことを思う。
もしもそんな力があったなら、と。]
…、ん。そうか。
後悔は──…したくない、からさ。
[口にした言葉は、
どこか一度クルミから聞いた言葉に少し似ていた。]
[階段を上りながら、私は端末を操作して、メモの画面を開く。
そして、すぐ後ろのカノウくんだけに見えるように、後ろ手に持って、画面を見せる。]
『後で、聞きたいことがあるの』
[カノウくんが読み終わる頃、後ろ手のままボタンを押して、画面は消してしまう。
2階から5階まで、階段を上る足はやけに重くて、ゆっくりになってしまって。]
――――…………おじさん。
[5階の、階段。
辿り着いた先で、絞殺されているおじさんの姿を見つけてしまった。
身体の傍らに、おじさんが構えていたポールが転がっている。
私はそれを、そっと*拾い上げた*]
デンゴ、君は──…いや。
[ソラはいい。でもきっと子供に見せるものではない。
そう口にしかけて、言葉を飲み込む。
彼も日記所有者だ。見る権利はあるだろう。
だから来るというなら拒むことはしないまま、]
───……、
[階段を登る途中、クルミが見せてきたメモに、僅か目を細める。
画面が他に見えないよう、彼女との距離を少し詰めた。
彼女が画面を消して日記を仕舞うまでの動作を確認して、
少し足取りの重くなった彼女をするりと抜き去る。]
…あとで。
[その一瞬、耳朶にごく小さな声で了承の意を囁き返した。]
……。
[5Fには10thの死体が横たわる。
知らなければ知らないままに終われたはずの相手。
手向ける言葉は持たぬまま、
後悔に似た表情でその死を見下ろして*いた*]
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