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階段:踊り場
[静かに沢渡の部屋を後に、急いで搬送室を目指した。
目指した、つもりだった。
このところ、録に眠れていなかった。
精神的に不安定な為、数種の薬を服用していた所為もあっただろう。
冷たい汗が額を滑る。眩暈で地面が揺れる。
胸が、締め付けられるような痛みに襲われた。
壁に凭れて胸元を、強く掴んだ。]
いやだ、……死、ぬのは、…… 、
[ 嘘だ 死にたくない
どうして 何故 こわい
助けたい たすけて
生きていたい ごめんなさい
ひとの ぬくもりを 感じたい
――生きていたい。
何があっても たとえ自分が死神だとしても]
[震える指先で白衣のポケットを探り、父の形見の、柏木と『誰か』が直してくれた腕時計を握り締める。
血圧が上がっていた。視界が赤に、染まる。
……は、ぁ……、…… っ、
苦しい。気管が狭まる。
薄く開いた唇から零れる言葉は、もう音にはならず。それでも、意思だけは大気へと溶けていく。
人は最期の刻、何を望むのだろう
もしも、願いが 叶うなら――]
『 』
[自分の声の代わりに哀しげな白鳥の鳴き声が、聞こえた気がした。
医師はその場に崩れ落ち、意識を取り戻す事はなかった。
けれどポケットの中の時計はずっと、時を刻み続けていた。
陽光が傾き掛けた頃、人の気配の欠いた階段の踊り場で医師の遺体が見つかる。
急性心筋梗塞だった**]
[野木は、受付名簿に記された名前を見つめていた。
さっき入院患者よりも青白い顔で入っていったのは、誰かの母親だろう。
―――子供を亡くす母親が一番、見ていられない。
不吉なことを考えた自分に気づくと、誰に誤魔化すでなく咳払いをし、深く帽子をかぶり直す]
「結城先生もありゃ寝てないね」
[同僚の言葉に頷き、しかしそれはいつものことであり]
また、医者の不養生なんてことにならなきゃいいが
[待合室から歌が聞こえてくる。CDでも流しているのだろう、今はもういない歌手の歌だ。祈りの言葉は病院に相応しいようでいて―――けれど……。
野木は口を噤み、目を逸らして日常に戻った]
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