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よく……うーん…まあまあかな
[夜中に吐き気を覚えて目がさめたことは言うつもりはない。入院してから増えた薬の副作用だろうと、見当はついている。
ぼたんのくしゃりと寄った顔は感情が読み取りにくく、けれど下を向いて椅子に座った少女にはそもそも見えていなかった]
おばあちゃん、私ね…明日
………んと、検査があって
おばあちゃんの顔が見たいなあ、って思って
[痛みを隠す表情はなく、俯きがちに顔を背けるのみ]
………ありがと
[顔は見せないようにして、ぼたんにそっと抱きついた。老人の匂いがしたけれど、家族との触れ合いは少なくとも、それは病院の匂いを忘れさせる懐かしい匂いだった]
元気に…な った
元気、返すね
[少しだけ力を込めてから腕を離した。点滴の管が椅子にあたり音を立てる。
顔をあげた少女の表情は、少しだけ口元が歪んでいたけれど、泣き顔にはぎりぎりなっていないはずだ**]
やだな、謝らないでよ
ほんとにただの検査だからさ……
だから…今度こそ、また
[視線を反らす。次の言葉まで間があいた]
……また明日ね
[唇を引き結び、白い頬は強張ったまま。
立ち上がると点滴装置を握り、右手はひらりと振って]
603号室
[病室に戻った少女は荷物の整理を始めた。未だ半分以上は未読の本の山を鞄に詰め、洗濯して感想させた着替えをその上に重ねた。
昼食が今日最後の食事となる。売店で買ったプリンをデザートにして、歯磨きを終えれば歯ブラシセットも鞄に詰め]
個室はやっぱり…広いよ
[片付いた病室に背を向け、再び入院棟内を歩き始めた]
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うーん、っと
たかくんは結城先生いってるし、墓落ちるし(霊化するかはともかく)
小春ちゃんとチカちゃん・・
二人ともいないから・・うーんと
[点滴装置の持ち方も堂に入ったものだ。エレベーターに乗って、少し迷って押したのは、五階も四階も通り過ぎて、結局一階に降り立つ。
明日は家族が来ることになっている。無事に手術が終わって病室に戻ったら、退院したら。一緒にご飯を食べるのが恒例となっていた。大抵、退院後すぐはろくに食べれなくて、美味しいとも思えないのだけれど。
すれ違う医師の顔をひとつひとつ確かめる。知った顔があれば、柏木がどうなったのか、約束の、時計がどうなったのか。聞きたかった。取りに来ますと言った自分か、置いておくと言った彼か。約束を破ってしまったのはどちらなのか、はっきりさせたかった]
/*
おばあちゃんんんんん
かわいいよおばあちゃん
ありがとう、だいすき
あれこのねがい・・・
おばあちゃんへのむちゃぶり・・?
そして自分への無茶振りでもある
[売店を覗いて大好きなお菓子を買った。勿論今は食べられないけれど、きっと母親も好きだったように思う。だからきっと、無駄にはならない。
六階に戻ると、廊下の隅まで行って夕日を眺めた。それは柏木が落ちた窓のひとつ上で、そうとは知らずとも、目に留めた看護師の一言で、夕日を最後まで見送ることは出来なかった。
だから病室に戻って、ただ海を眺めることにした。
赤く染まる海。
暗く、一足先に夜を感じさせる海。
いつか還っていく、海]
ごめんね、おばあちゃん
[手術が無事終わったとして、明日は無理だったな、と今更気づく。そんなつもりはなかった。嘘をつくつもりではなかった。
また、戻ってきたい。
その想いを現しただけで――守られることのない、約束。
待たないで、と明日のぼたんを想い、ベッドに入った。
あとはうつらうつらとしているだけで、知らぬ間にカーテンは引かれ、点滴は交換され、夜は、最期の夜は――更けていった]
翌朝
[朝の早い病院で、それでも入院患者のほとんどが寝静まっている頃、少女は着替えて病室を出た。ストレッチャーに乗って着いた手術室は、眼鏡を外した彼女にとって、どこかぼんやりと、夢の中にいるかのような、存在すら曖昧な場所に見えた]
…お願いします
[掠れた声に誰かが頷いた]
[そこで少女の意識は途切れ、二度と目覚めることはなかった。
心臓を一時止めて行う手術。
一時は成功したかに見えたそれは、輸血に切り替えても止まらない出血により、耐えられる時間は過ぎ去り――]
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