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よし、できた!
[そこに描かれていたのは、木々の中に佇むレンの絵。
木漏れ日を浴びながら、空を見上げている。
1本の木にはウグイスが羽を休めている]
……カナメ?
この人は……「大丈夫」なんだ。……よかった。
きおく…。かぎ…。
[「むこう」の世界から響く、
それは、優しさとも残酷さともしれない。
俯いて、ふと、
手のひらを見る白衣の男性に、怪訝な顔をして]
[ぺたり、ペタリと廊下に響く足音。
泥は小さな足型も残す]
“手向ける”ってなぁに?
[人影の手前で足を止め、細めた瞳が人々の顔へ順に向けられる]
[響くテンマの言葉に]
……なるほど、ね。答えのない、曖昧であった理由。
俺は、望んだこともあった。
目覚めてしばらくはそれでもいいって思ってた。
どんな形であっても、世界と結びつくことが全てだと。
けれど、あの絵の世界を見たから。
今は、望まないから。
だから、還っていない。
この形で結びつくことを望まないから。
……だから眠れずに居る、のか。俺も……。
[紡がれる言葉は、心の感じるままに。感じることこそが全て。]
あれ……レン?
どこ行っちゃったんだろ。
[しかし、そこにレンの姿はなく。その姿を探す]
[そこにもうひとつ、声が響く。
「誰かを手向けなさい」と]
――…
[背後で呟かれた名は、確かに自身のもの。
ゆらあり 振り向いた影は、穏やかに笑む。]
ええ。
…レンさん、でしたね。
[先刻は――…と声音は含む。歩む距離はみじかい。
亡霊が導く先には…新しく刻まれた墓碑がふたつ。
供えられた赤い華もふたつ。ふたつの死のかたち。
墓所の前には、やさしい桜色に透ける少女の亡霊が
屈みこんで――呆然と、己の墓碑を眺めて居る。]
[ペケレには、頷いてみせる]
はい。
それは…よかったような、気が、します。
[それからふいと
窓へと視線をそらし、小さくのせた疑問]
二つの花はどうして、咲いてしまったでしょう。
[瞼のうらに蘇る、テンマの扉の青い花]
こんどは、あかいはな…?
ダーリンが……カナメが。
[何かに導かれるかのように、ぴんと墓を指差す]
Requiescat in pace
安らかに、眠れ。
あそこで眠らせること。
手向ける。眠らせる……?
「向こう」に行く?
[何かにとりつかれたように、混乱したように言葉を紡ぎ、ふっとその場に倒れた。*眠っているようだ*]
[プレーチェやバクの声が耳に入れば]
手向けるとは、神や仏……死者に捧げ物をする事。
旅人にはなむけ……贈り物をする事。
[視線は赤い花に向けたまま、穏やかだが響く声で二つの意味を口にする。
ふらりと墓碑に近付いては、新たに増えたプレートを、そこに刻まれた名前を確認した。天井を見上げてから、目を閉じて]
[少しずつはっきりして行く意識。
目に映るのは共に居たみんなの騒ぐ様子。
そんな中、スケッチブックを持つ少女へと視線を向けて―――]
そうか。俺を、描いてくれたのか…。
[その手のスケッチブックの中の新しい絵を見て呟いた。]
きっと…俺は強く願いすぎたんだろうね。結びつける事は、きっと、高い代償を伴うもの。そう感じる。
…ミナツ。
君が、もう一度世界の絵を描けますように。
だから。君はこちら側へ来てはいけないよ…。
[強い願い。それは、祈り。自分の置かれた状況は心が感じている。言葉などにしなくとも。]
[彼らの墓碑へ、やがて生者も訪れることだろう。
遠巻きに立ち止まるのは、この亡者の流儀らしく]
…還っていない。なるほど。
[とろりと緩慢な瞬き。浅過ぎる眠りに酔う如く。]
絵、…
ミナツさんの、ですね。
結びつけられた絵の世界…
手向ける。眠らせる…
[それはカナメも告げてきた]
[その意味はまだ、しかとはわからずに」
ペケレ? だいじょうぶですか。
[屈みこんで、眠っているのを確認して]
死者。
[目覚めてから何度か聞いた言葉。
上着の内ポケットから、アンの落とした手紙を取り出して皺を伸ばす]
アン、手紙……。
[封は開いているのに中身を見ることが出来ずにいるそれを、誰に渡そうかと逡巡する]
…そうですか。カナメ。
これはまた、おはよう、のある、ねむりですか。
[そして]
結びつき…?
[向こうの世界から、
そんな言葉が漂ってきたかもしれない*]
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