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[すいと、足を返した、アン]
アン…?
[ルリの前で立ち止まり、
彼女の透ける指が、何かをさした]
なんですか?
[みれば、
直前まで佇んでいた、墓碑がある。
赤い花が彩るそれはアンのものらしい]
獏は凄いね。
[心配そうな声に、真顔で答える]
難しい。
思いが色とか、2進数で割り切れないことを言う。
でも、色を映したり、みんなを見ていると──。
簡単じゃないものがたくさんあって。
それが、たいせつ。
ずっと味方なの?
うれしい。
私も、獏の味方だよ。
[安心したような*笑顔*]
――絵を、ありがとう、と。
『あやまらないで。ミナツの絵、好きだから。
描いてくれて、ありがとう』
そう、ミナツに伝えてって。
レンが言ってます。
それと…獏。
[ミナツ越しに獏を覗き込んで、
大きな瞳が瞬く]
ミナツを守って、って。レンが、頼んでます。
それから。世界の歌を聞いてみたい、と言ってます。
[記憶がないのにレンの事が手伝ってか、少々遅れて声を発する。
暫くの間周囲の会話をぼんやりと聞いていたが、そのうちに立ち上がり]
失礼。
もう少しだけ寝てくるよ。
[誰にともなく言い残して、その場を*後にした*]
[少し不思議そうに
ミナツと獏とを、交互にみた]
[頷くともなくミナツへ頷くと、
いちど温もりを握り返してから離し、
膝をはらって立ち、アンの墓標の方へ向かって*]
アン、ここですか?
えっと…?
[赤い花をかき分けのけてみると、
西欧の文字で記された下、花に隠れていた、
東洋の文字の綴りと、5桁の没年が露わとなる。
数字には、どこか覚えがあるかもしれない。
その傍の墓標に刻まれた、数字は4桁]
アン…?
[確かめるように振り返り、かろうじて届いた囁きは…幽かで、とても聞き取りにくかった]
ら く え ん …? と、何…?
もしかしてアンは…
眠る前のこと、覚えてるですか?
[刻まれた数字を見比べ、また向き直る。
すると長い髪の少女は、
肯定も否定も伝えず、手を挙げ今度は上を、
硝子の天井を包み込む素振りをして。
そして空中へ溶け込むように去って行った]
[その時ひときわ、
カナメの声が高まる]
カナメ…?なに…。
ルリが、生き延びる為に…?
ミナツ…?
ミナツが、どうしたですか…?
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