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[>>3]
私にお酒を教えてくれたのは、かみさまでした。
煙草も、かみさまに教えてくれました。
私の知っている事のほとんどは、かみさまが教えてくれたのです。
でも、それがぽろぽろと零れ落ちるように消えていくのです。
私はそれが、たまらなく怖いのです。
全部、ぜんぶ消えてしまうのが。
私を「嬢ちゃん」と呼んだ人は、サングラスをかけていました。
初めて見たとき、ちょっとだけ怖いと思った事を覚えています。
でも今は、悪い人じゃあない事もちゃんと知っています。
だって、悪い人が、かみさまの為に泣いたりするはずがありません。
[>>4]
かみさまは、いなくなってからも、いろんなところにいるような気がしました。
まるで木の葉が風に舞い散るみたいに。真っ黒なコーヒーに落とされたお砂糖が、溶けていくように。
いろんなところに、飛散していったのだろうと思います。
ポケットの中に、おまもりみたいに忍ばせた石が、ちょっぴり重たくなった気がしました。
銀色のジッポは、かみさまの髪の毛の色でした。
私はその色が大好きでした。
優しいその色が大好きでした。
だから私は、このジッポを使うのです。
少しでも、かみさまに近づきたいから。
[>>5]
初めてこの煙草を吸った時、私はむせこみました。
ちょっぴり涙も出ました。
かみさまは驚いて、それから呆れたように、でも笑いました。
笑っていたのです。
だから、私もつられて笑いました。
私は、煙草を吸っているかみさまが大好きでした。
[>>8]
みどりの黒髪。
「發」と書かれた小さな牌を持って、かみさまは呟きました。
お前の髪がそうなんだろうな、と。
そう言って、かみさまは私の髪を一房救い上げました。
緑なのに黒髪なのはどういう事だろうと思いましたが、かみさまの手が気持ちよくて、私はそんな疑問がどうでもよくなって目を閉じます。
みずみずしくつやのある、美しい黒髪の事をそう言うのだと、ひろくんが教えてくれました。
すると、傷のにいさまが言うのです。
六花が發なら、アンタは白だな。
三元牌のうち、真っ白なそれ。私はそのなめらかなものが好きでした。
かみさまみたいに綺麗だったから。
そうしたら、ひろくんが言ったのです。
じゃあ、■■さんは中ですね。三人合わせて大三元だ。
傷のにいさまの髪の毛の色は茶色でしたが、ひろくんよりは赤に近いものでした。
なるほどたしかに、と私は頷きました。
それを聞いたかみさまは、くつくつとおかしそうに笑いました。
じゃあひろは黒いから風牌だな。
私も笑いながら言います。
四人そろって、字一色ですね。
違いあるめぇ、かみさまはそう言って笑います。
そして、私の頭を優しくなでてくれました。
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みなさん、個性があってすてきですね。
クルミさんとテンマさんの
手紙のくだりがとてもすてきだ。
どんな関係性ができあがるのか
楽しみです。
[>>44]
ですから、どうか
あなたとおなじせんたくをしても
おこらないでくださいね
きらわないでくださいね
わたしは、あなたのことがだいすきなのですから
私にとって、かみさまは父親のようであり、兄のようであり、恋人のようでした。
私の世界を彩ってくれた人でした。
私の全ては、かみさまによって作られたのです。
生きる術を教わりました。
読み書きそろばんを教わりました。
他にもたくさん、たくさん、教えてくれたのです。
私は、そんなかみさまが好きで好きで、どうしようもなく好きでたまらなかったのです。
ああ、かみさま、かみさま。
どうして、私も連れていってくれなかったの。
[とある見舞客の手記]
六花は、日に日に記憶を失っている。
それでもあの人の事を必死に忘れまいとしているんだと思う。
例えば、ハイライトを吸ってみたり。それから、ちょっとした仕草を真似てみたり。
それでも、病状は進行しているみたいだ。
今日はフォンダンショコラを持っていったけど、覚えていないようだった。
あの人が飽きるまで、毎日作って、何度も俺は味見をさせられたのに。
昨日はあの人の墓参りの帰りに四人で寄ったけど、俺以外の名前はちゃんと呼ぶ事が出来てなかった。
彼女は恐らく、このままだとあの人と同じ選択をするんじゃないかと思う。
けど俺は、例えどんな状態になったとしても生きていて欲しいと、そう思う。
20××年 ◯月△日 記す
[手を合わせ、思わず慣れ親しんだ経を唱えてしまった。
はっと我に返り、そそくさと廊下を後にする。]
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ありがとよ、先生。
気づいてくれて、ありがとうよ…
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