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―休憩室―
[少女は本を読むのが好きだ。
特に星の本はいい。
暗い世界に輝くいくつもの点は、とてもキラキラして見えた。
だから今日もベッドで星の本を見ていたのだけれど、病室の外が何故か騒がしくて、そちらが気になって集中できなかった。
本を読む気にはなれず廊下に出ると、医師や看護師、患者まで何か慌しく焦ってる様子だった。
彼らの様子から何かがあったことは察せられても、何が起こったのか確認するのは怖くて。
人を避けるように歩いていると、休憩室まで歩いてきてしまった。
ここには漫画の本がいくつか置いてあって、内容は正直よくわからないけど暇つぶしには丁度いい。
今日は先客が居るようで、そうした時はいつもぺこりと頭を下げて挨拶をするのが自分なりの決まりだった。
だから頭を下げて、先客の前を通り過ぎて本棚の前へと行こうとした所でふと足が止まる]
…ねむってるの?
[首をかしげて、しげしげと様子を見つめる。
少女の両親よりは年上だろう。
祖父母と同じくらいだろうか、よく分からない。
起こしてあげた方がいいのだろうか、あるいは音を立ててはいけないのだろうか。
判断がつかず、おろおろと休憩室を首を振って見渡す]
きゃ。
[声をかける前に目を覚ました事に驚いてしまい。
おそるおそると見つめた後、安心したように笑顔を浮かべた]
えっと、おはようございます、なの。
おじい…おじちゃん、ここでねるとかぜひいちゃうかもなのよ?
るりね、まえにねむっちゃったとき、すごくおこられたの。
かぜひいて、しゅじゅつがえんきすると、いけないのよって。
おそと、さむいもんね。
ゆきがね、たくさんふってたのよ。
[こんなにいっぱい。と、示すように両手を広げて。
10本の指を動かしながらゆらゆらとその手を下ろす。
どうやら雪の物まねをしているつもりらしい]
うん、えっと…。
あしたがね、しゅじゅつのひなの。
[首を傾げて記憶を探り。
思い出して、どこか誇らしげに伝える]
うん。
いっぱいふって、たのしかったよ。
おそとであそびたかったけど。
かんごしさんが、だめっていうから、おへやからみてたの。
うさぎさん…みてみたいなぁ。
あのね、うさぎさんは、おりおんさんにおわれてるんだよ。
ほんにかいてたの。
[説明を欠いている事にも気付かないまま伝えようとして。
思わず話にも熱がこもる。
しかしそこで、たまたま通りがかった看護師に見つかり。
そろそろ寝なさいと怒られてしまって、寂しげに頷く。
二、三言ほど離すと看護師は仕事に戻ってしまいそれを見送って手を振り]
ごめんね、おじいちゃん。
るり、あしたにそなえて、ねむらないといけないの。
[首をかしげてそう伝える。
看護師の受け売りである「明日に備えて」という言葉は片言だった]
じゃあおやすみなさい、おじいちゃん。
[ぺっこりと頭を下げる。
そのまま病室に戻ろうとしたが、ふと振り返り]
またゆきがふったら。
ゆきだるまつくるの、てつだってくれる?
[問いかけと微笑みを投げかけて。
その返事を聞く前に小さく手を振って、病室へと戻って行く]
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