準備は整った……と。
後はブラックキャットの待つ、ミル・シティに行くだけじゃの。
[三毛猫がぶるりと身を震わせる]
おお。どら美や。
……。
大福。
今からいう復号キーでこれを傍受しろ。
[ネギヤに指示をすると、妙にクリアな音声が響く。
聞こえるのはここの住所]
だれか準備の時にヘマをしたか。あるいは……。
困ったのう。ブラックキャットを手に入れないと引退できないではないか。
おやおや。
[3杯目のお代わりのココアを手に、急にがらんとした店内を見回す]
若いもんは素早いのう。
せっかくわしらのために来てくれるんだから、出迎えの準備くらいはせんと、逆に失礼だろうて。
[ウェイターに端末を借りると、魔法のように取り出したチップからダミーのアクセスが始まった。
過去にさかのぼり履歴を改ざんする。
後でやってくる警察たちが、手がかりを探す際の攪乱くらいにはなるだろう]
おまえは茶菓子の品揃えは悪いが、茶を煎れる腕前と、手際は悪くないのう。
逃げ切ったらここに連絡をするといい。悪くはされないだろう。
[ウエイターに渡すのは、もちろんダミーの連絡先。
しかし彼がそこに接触すればその記録は分かる。
飲み頃に冷めたココアを味わうと、三毛猫を抱き直し、アン・シティへと向かう]
─アン・シティ─
[オープンテラスのカフェで老眼鏡を拭いている。
テーブルの上にあるのは、生クリームなのかパフェなのかよく分からない、デザートのような甘いコーヒー。
膝の上の三毛猫がぶるりと震え小さく鳴いた。
一瞬眉をしかめる。
予想より、ほんの少しだけ、早い]
[ポケットのガラケーが鳴る]
どうした大福。ほう。おまえも気づいたか。
[どうやらこの街でも警察にかぎつけられているよう。
提案されたのは、誰かを捕まえさせて、その間に逃げるという作戦]
そうだの。悪くない。
[自分がミル・シティにたどり着けば何とかなる。
むしろそちらの方が面白い。
まずは、提案者に敬意を表するとしようか]
みなにもそう伝えるといい。わしも協力しよう──まずはユウキからかのう。
[でまかせの名前を口にした。油断させてネギヤを落とすほうが楽しそうだ**]
あれだ。
これだ。
どうなるんだw この村w
ターゲットは最初ランダムでWho埋めたら、自分の名前が出て慌てて削除したって言うね。
─主要駅─
すいません。
[制服を着た警官に、インドなまりながら堂々と話しかける。身なりは古いけれど粗末ではない服装]
ええと、昨日ここにきて、大きな、あの有名な──ああそう、ビッグ・タワーに行きたくてのう。
はい。人がたくさん居る。
[ここの観光名所などチェックしていなかったので、相手に言わせた。
わざわざ訪ねるとは困ったことでもあったのかという親切な警官に、ビッグ・タワーの営業時間と入場料を尋ねる。観光パンフレット扱いだ]
ああ。そうそう。
夕日のきれいな時間はいつごろでしょうかの?
[若干鼻白んだ警官に、いけしゃあしゃあと尋ね。
最後に大げさに相手の手を握り上下に振って謝意を示して別れた。
歩きながら自然な動作で薄い手袋を外す]
何に使うかのう。
[外側をうちにしてポケットにしまう。
隙があると収集してしまうのは悪い癖だ]
[そうしてビッグタワーに向かいながら、先ほどネギヤに提案したプランを思い出す。
要約すれば、ウミがユウキを呼出し、適当なタイミングで連絡をするから、そこに警察を呼び寄せろ、というもの。
囮にすれば用心するだろうが、逆ならばどうだろうか。
企んでいたとしてもネギヤには害はない。
この作戦のポイントは『電波の届く場所に居てくれ』ということ。
電波が届くということは、位置が察知できるということ]
……さぁて。夕日でも見に行くかのう。
あ。もう23時だ。
これでユウキさん突然死して涙目とか切ない。
いや、無事ならいいか。
単なる愉快犯のおっさんだな。このじーさん。
─ビック・タワー─
[観光客にまぎれながら、絶妙なタイミングで移動を行い、誰とも触れ合わず、赤く照らされている塔の頂上に上る]
絶景かな絶景かな。
[ふと悪戯心を出して、とある電話番号に掛けてみる。
それは、ネギヤに約束した通りの相手、ユウキだ]
若造は働いているのかのう。