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― 夢 ―
「なに?按摩の婆が死んだと?」
「トシだっただよ。”ちか”はどうしますだ?庄屋さま」
「もう数えで六つなのだし、庵も畑もある。たまに様子を見るくらいで構わんだろう」
「”ちか”、もうお前さんは他人の手を煩わせずとも生きていけるだろう?」
ばあばは・・・どこ・・・?
「婆はもうおらん。”ちか”はいい子だろう?」
・・・うん、いい子。
「なら大丈夫だな」
あ・・・庄屋さまぁ・・・。
さむい・・・ひとりは、さびしいよ・・・。
― 夢・了 ―
[自分の涙の流れる感覚で、目が覚めた。
目を開けた拍子に涙がもう一筋頬を伝い、耳元に落ちる]
なみだ・・・。
[悲しい夢を見た。
でも、内容を良く覚えていない。
ただただ寂しさだけが後に残り、不安を掻き立てる]
さびしい・・・さびしいよぅ・・・。
[しんとした部屋の中、天井の木目から逃げるように両手で顔を覆い静かにぽたぽたと涙を零す。
いくつもの染みが、枕に刻まれていった]
[ひとしきり泣いた後、少し落ち着いてみると、かすかに聞こえてくるものがあった。
規則的な寝息の音]
・・・アンちゃん・・・。
[起き上がりその発生源を見つけると、さらに熱いものがこみ上げてきた]
かんびょう、してくれたの?
うれしい。
でも、風邪引いちゃうよ。
[自分の布団を引っ張って、アンの上に被せる]
[おなかの調子が回復しているのを感じて、ほっとして]
かわや・・・。
[そっと部屋を出て、お手洗いへと移動する。
その帰り、居間を覗こうとして足が止まった。
”なにか”が失われた感覚]
いやぁ・・・。
[再び急速に寂しさと孤独感が湧き上がる。
その場から逃げるようにして部屋に戻ると、アンにしがみつくようにして布団に*潜り込んだ*]
・・・みんな、いるよね?
とつぜんいなくなるなんて、いやだよ・・・!
[欠けた気配に怯えるように、ぽつり]
じいじ・・・。
[ぱたぱたと炬燵に駆け寄り、ベックの横にぴたりと座り込んで、服のすそをぎゅっと握り締めた]
[ミナツのちょっとした表情の変化を訝しげに思うも、ベックの言葉にやっとほっとしたのか頬を緩めて]
うん、分かったよ。
しんぱいかけてごめんなさいね。
おなかももうだいじょうぶだから、ちいあにさまの作ったごはん、食べるね。
[にっこり微笑んで、重ねられた手のひらを一回ぎゅっと握ると、箸を手に取りかぼちゃの煮つけを口に運んだ]
おいしい!
[ギンスイにもにっこり笑って]
うん、みんな一緒だね。
ちいあにさま、このかぼちゃの煮付け、とってもおいしい!
わたしもこういうのが作れたらいいのにな。
[頭を叩かれた手のひらの下から小さく上目遣いでスグルを見上げ]
ゆめ、ゆめ。
ただのゆめ。
うん、どこにも行かない。
ずっとここにいるよ、あにさま。
わぁ、ちいあにさま、お料理教えてくれるの?
うれしい!
およめさんに行くのに、お料理ができないのは良くないよね?
だんなさまに、おいしいものを食べさせてあげるの。
もちろん、ちいあにさまにも。
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