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え...?
[しっかり支えていた筈の腕を、モミジの身体が擦り抜ける。
否、擦り抜けたのはモミジではなくて]
嘘だろ...
[倒れ掛かるモミジの方へ手を伸ばしても届かない、こちらからは見えるのに、向こうからは見えないらしい、と、その様子から知れた]
ま、ずいだろ、これ。
[倒れてしまったモミジは動く力も無いように見える]
くそ...!
[がじと頭を掻く。焦りを必死で抑え込んで考える]
誰か、呼んでこないと...
[でも誰を?]
そうだ、随原さん!
[狭間に飛ばされたというアンを見えると言った彼なら、と、思いついて]
待ってて、モミジちゃん!
[駆け出す前に投げた、届かぬ声は、無意識の呼び名]
[自分の声が、すでに探す相手に届いているとは気付かずに、公園を出て、最後に随原が向かっていたと思われる方向へと走り出す]
[つまり、現状、微妙に行き先はずれているわけだが...それに気付くチャンスはあるだろうか?]
[雪はまた強くなった気がする。ともすれば方向感覚がおかしくなってしまいそうだ]
随原さーん!どこですかー?!
[道を見失いそうな焦りに、大きな声をあげる。動き出した彼にその声は近付いているだろうか?]
[運動の類は元々苦手で、普段は走ってもすぐに息切れしてしまうのに、何故か今は全力疾走を続けても平気な感じだった]
あっ!
[随原の姿を探して、角を曲がろうとする寸前、複数の人影を発見する]
随原さん!
[駆け寄ると、随原の他にバクやオトハの顔も見える]
みんなも...え?
[マシロが見えるようになったのは、こちらも狭間に飛ばされているせいだろうと予測もついたが、オトハから声をかけられて>>+9目を見開いた]
見えるんですか?
[だが、その疑問に長く構っている暇は無い。一人なのか、という問いに、頷く間も無く、来た方向を指差す]
モミジさんはさっきの公園です。熱があって、動けないみたいなんです。
[いつの間にか、呼び方が変わっていることに、オトハなら気付いたろうか?本人には無意識のことだけれど]
あのままじゃ、凍えちゃいます。
早く......早く助けてあげてください!
[自分では助けられないのだと、焦燥を声と表情に滲ませて叫ぶと、先導するように、踵を返して児童公園の方へと再び駆け出した*]
こっちです、こっち!
[どうやら、ちゃんと話は通じたらしく、皆児童公園の方へと足を速めてくれた。
再び全力疾走でモミジの傍に戻ると、そんな彼等に向かって、ぶんぶんと両手を振り回す]
モミジちゃん、しっかりして!すぐにみんな来るから!
[雪に埋もれそうにも見えるモミジに、聞こえないと分かっていて、声を投げる......]
『モミジちゃん....!』
[ふいに浮かぶ既視感]
(前にも、こんなこと、が...?)
[白い雪の向こう、答えは目の前にあるように思えるのに、まだ、手は届かない*]
ここへ来るまでの道には入れる建物は無かったと思います。
[随原の問いには、そう答えて眉を下げる。
子供の頃なら潜り込めた遊具の中も、今となっては狭過ぎて、強くなった雪を凌ぐにはとても足りない]
駅...なら、屋根だけはあるかも。
[思いついて言ってはみたけれど、そこに戻るには、結構な距離がある*]
やっぱり遠いですよね。
[自分が手伝えるならともかく、動けないモミジを連れて移動するのは相当困難だろうとは分かる。
やがて近場を探していたバクが、屋根付きのバス停を見つけてきて、なんとかそこまで随原がモミジを抱き上げて運んで行く]
すみません、何も手伝えなくて。
[ただ後をついて移動し、傍で心配しているしか出来ることのない自分が腹立たしかった]
外へ...「たからもの」を見つけてってこと、ですよね。
[随原の声に、じっとモミジの顔を見つめる]
[「オーロラの国」「雪の精」「子犬のマール」......断片的に浮かぶ記憶]
[最初に書いた物語が、雪の国の話だったのは、何故だった?]
[「きっと、また会える」...それは、誰が誰に、言った言葉だった?]
...俺の、無くしたものって、もしかして。
[「最後には皆が幸せになるおとぎばなし」を、作ろうと、そう思った最初は?]
(モミジちゃん)
[そう、呼んでいたのは...]
まさか......
[そんな、おとぎばなしのような事が、本当にあるだろうか?*]
[浮かんできた記憶に気を取られていたため、随原とオトハの会話は半分も頭に入ってきていない]
え?三輪さん、どこへ?
[急に踵を返したオトハに慌てて声をかけるが、今、この場所......モミジの傍から離れる決心はどうしてもつかなかった]
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