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[今夜でなくとも。死ぬ事もないと。
目の前に屈んだトゥーリッキに。
押さえつけられたまま攻撃も出来ず――だからといって詫びも媚びもせず、敵意を込めるまま見上げ。]
……、どうだっていいんだよ、んなことは。
お前、……、なんで――、
[続きを飲み込んだのは、終まで言うを躊躇ったのやもしれず。
明かされる"ワケ"に怪訝な顔を向けたのも一瞬、]
今ー―この瞬間に、俺が、……っ
―――うぶ、……、っ、
[言葉の合間、かかえる重さに吐き出しかけた息ごと、トゥーリッキの靴先を叩き込まれ――脳髄まで響いた衝撃と刹那消える視界と。
首か口腔か顎か喉か、チカチカ巡る痛みと程なく訪れる酸欠に続く言葉も奪われ――されど意識までは奪ってもらえず――]
……っ、ん、
[震えたのは寒さにか、それとも虫の息と化した体の起こす痙攣ー―言葉が耳に届いても記憶まで沁みたかどうか。
相手が靴先を抜く頃には、狼の抑えがなくとも動けはしなかっただろうけれど。
"頭目"が去り、無数の狼が囲うを感覚だけが理解し、仄か浮かべた色が表情として象られることはもはや*ない*]
―???―
[引き裂かれた意識がまた結び始めたのはいつの頃か。
心残りで?
誰かの呪いで?
理由はない――今自分はまだ、村に居る。]
死んじまったなぁ――……
[思い出すのはトゥーリッキが"そう"だったこと。
約束の"一発"はそのまま致命傷。]
そういうんは、サービスって言わねえだろ。
[苦笑いしか浮かばないけれど――この地において今は寒さも痛みもなく、場を動くことも容易い。]
[同じくこの村に留まる死者の気配にか寄せられて。
もっとも――自分が知るのは報せを受けたウルスラと、自身の手で殺したビャルネの死だけ。
ビャルネには会いたくねぇな、と思考が望むのと、目の前に当人を見つけたのはどちらが先だったか。
共にウルスラが居たなら、生前同様、いつもの通り挨拶するのに肩竦めて――同じく手をあげる。]
[やはり、と言われるとばつが悪そうに少し視線を背けて。]
――本当に狼遣いじゃなかったみたいだな。
レイヨから聞いた。
[謝罪はそれでも紡がぬか――]
"いじめて"悪かったな。
[それは"殺し方"への謝罪。
殺したことへは誰にも詫びることは出来ないから。]
これも、誰かの呪いなのかも、な。
[等しく留まらされる現状にか呟きひとつ。]
――みたいだな。
[それを確信に変えたのは。]
褒められても嬉しくないスキルだな。
本来壊れたモンを直すのが仕事だってのに。
[その他、頼まれごとなら出来ることは――時に許容を超えてもぶっきらぼうにこなすのが日常。]
……知っていた?
何故。
[語尾上げぬ問いかけ。
たった二音に留めたのは意味に幅を持たせるため。]
[ドロテアに話が及べば視線を投げやり、死ぬ直前にトゥーリッキから"頼まれた"問いを脳裏に浮かべる。
ゆるく首を振り、続いたビャルネの声に思案げに瞬き]
容疑者、ね――俺は最悪……最悪の時は。
集められなかった他のヤツらが"確実に"安泰になるなら
容疑者丸ごと殺しちまってもいいんじゃないかと、
想ってたよ――言えなかったけどな。
[その場に留まるビャルネの近く、そんな言葉を落とした。]
――……。
俺も――ずっと気になってた、言葉ではあった、な。
[暫くの間の後。
ドロテアに向けて投げる言葉は呟きのよう。
"お気の毒様"と確かに彼女はそう言ったから。
長老のテントに呼ばれた日。自分はそれを見た。
気の毒なのは、誰もが彼女だと――そして彼女を差し出す
長老だと想っていたはずだから。
だから――]
"守らなかった"理由の一つが、その声だった。
長老を怖いと想った理由の一つが、その声だった。
[これから起こる疑心暗鬼と殺し合いにかけた言葉かと想えど ならば ――何故笑っていたのか と。
ビャルネやウルスラは何か言葉を発したか否か。
ただ、ドロテアに打ち明けるようでも、その場に居る死人に教えるようでもある声は]
――暴虐を阻む者。
力はマティアスに。そしてレイヨに。
お前には、使わなかった――謝罪は置かねぇ。
――気が向いたら、一つ答え、返してくれ。
俺の、"親友"が、
村のために身を捧げるならなんで――
毒を喰らっておかなかったのかと。
莫迦なことを言っていたから、 さ。
[答えを期待するようでもないのは、娘がまだ一度も言葉を発していないからに*他ならず*]
[矢継ぎ早に零される言葉。]
……答えになってねーな。
[ごちるも、問いを重ねることはなく。]
不安なら、お前を捧げる前からずっと。
無力さなら、お前を見捨てた時からずっと。
だから俺は一度も祭壇へは行かなかった。
[指先に滲む赤は何をも想わせず。
娘の赤散る花飾りに視線をやる。]
考えてしまったら――あるいは絶望したかもな。
肉親の死を心の底から望む者なんかいない……。
だからと言って、お前より長老が辛かった
なんて言う気はさらさらないけどな。
[後ずさり、いつかと同じ笑みを称えるに眉根寄せ]
お前の気持ちは、実際にそうならなきゃ実感出来んし
判るとか陳腐なことを言うつもりもない。
[右手で帽子を被り直すもあまり実感はなく。]
が、やはり――気の毒なのは、ドロテアだ。
[呟き、視線を落とした地には今はその冷たさも感じぬ*白*]
[ウルスラの言葉に一拍の間を置き]
"赤"が――血のようだから好きだと、言った。
ビャルネを殺した後、
俺に「赤をありがとう」と言った。
あいつは、立場どうこうじゃなく、
――……べきだったかもな。
[抑えた声ば不穏なものでしかないけれど。]
最初はあのオーロラを好きつってたから、
まあヨソ者だし、色彩として――それもありだと
想ってたんだが、な。
[同じく、ソレ以降は ない話だと。]
今のこの状況も、
合法的に人を殺せるようなもんだろーしな。
[イェンニがどこまで、本気で何をどう想ってるかなど、知るほど話したわけではないけれど。]
[ビャルネの言葉に考える前。]
――ビャルネは、
"あっち側"だったってことか?
すくなくとも"こちら"じゃなさそうだ。
[咎める色も特になく、閉塞的というのに苦笑い。]
……否定はしねぇさ、俺は此処に満足してただけだ。
……もしそうなら、此処は世界一平和だな。
[イェンニのような感性の人間が溢れた世界を少し想像して、眉間に皺を寄せた後、速攻で服を振る。]
手を汚す大義名分がありゃ、するだろ。
――たぶんな。
[吐き捨てるように呟くと、ふと空を見て]
結局、狼使いが何したかったのかが、わかんねーな。
滅びを望んでるようにも、見えなかった……
贔屓入って 見えなかっただけ、かもな――
[何を考えているのか、わからなかった。]
言わんこっちゃねぇ……
[イェンニとマティアスに息吐いて]
生きてても、これは守ってやれんな。
呪なんて、そんなもんだ――。
[目を逸らすつもりはない。
殺し合いなど、結果を見るまでわからないのだから。]
ああ――…… あー、 やめた。
世界平和とか、俺が願う顔してねーだろ。
[何か気恥ずかしくなって帽子を深く被る。]
守る――ってのは、生きるだけじゃなくて
"生かす"意味があるのにゃ気付かないんだろーな。
…イェンニは。
……―――。
[過る顔はあったがそれも帽子の下。]
願うだけなら、ね――……
せいぜい口にはせんようにする。
[からかう声に少し拗ねめく気配。]
"殺し"の意味――生かす意味がわからなきゃ
わからないんじゃないかね。
トゥーリッキは……
[口に出し、言葉は飲んだまま。
今はイェンニとマティアスを見て*いる*]
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