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―むかしむかし そんなことがあったのです。
[ゆっくりと少女は物語を語り始める。
そこには本を開く魔法使いと黒猫。
そして飛びまわる妖精の姿。]
―「たいへん、たいへん、よくないことが起こったよ」
と魔法使いの周りをくるくる回りながら叫びました。
[妖精が運んできた凶報。
それは、隣の村の魔法使いが、遠い遠い最果ての山から訪れた狼に食べられたというものでした]
なぁに?
そうね、魔法が使えるのにね。
でも魔法使いは狼に食べられちゃったのよ。
だけどね、大丈夫。
この魔法使いにはお友達がいるもの。
[納得がいかないまま唸る兄を宥めるように言うと、ページをめくる]
そして次の日も、またその次の日も。
あの村で、この村で。
次々に魔法使いが食べられていきます。
魔法使いの村がひとつ、またひとつなくなりました。
魔法使いは仲間たちに言いました。
僕たちは戦わなくてはいけない、と。
そして魔法使いの冒険が始まったのです。
…あれ、リッくん?寝ちゃったの?
[隣で寝息を立てはじめた少年をゆっくりと寝かすと毛布をかけて本を閉じた]
特急列車に乗るところが面白いのに。
[呟いて、窓の外を見る]
パパ、遅いな。
[兄に並んで寝転ぶと、いつしか眠りが訪れた*]
[はらりはらり。
窓の隙間から入り込んだ風が物語のページを捲る]
んん、パパは…?
[目を擦りながら体を起こす]
朝…夜?
[判然としない明けの曇り空。
手元に置いたままの本に視線を落とす。そこには恐ろしい狼の影と特急列車が描かれていた]
――特急列車は止まらない。
ぐんぐん、ぐんぐんスピードを上げていきます。
「だめだ、魔法が使えないよ」仲間の一人が叫びます。
「ここには魔法封じの魔法がかけてあるんだ」もう一人の仲間が言いました。
しかし狼には魔法が使えません。
一体、誰がこの魔法をかけたというのでしょう。
[ぱたりと閉じると続編の本を抱えて、階下に降りて行く]
ママ?
もうパパは帰ったの?
…どうしたの、ママ。泣いているの?
[子供の足音に、瞳を拭った彼女に涙の理由を問うた*]
魔女狩り…?
あたしたち魔法なんて使えないわ。
[そうでしょう?と説明をする父と母を交互に見る]
…ヨーギシャは、狼さんのこと?
この村に狼が来たの?
[母の涙は夫と娘の名がそこにあったことか。
失われた命のためか]
…やっぱり狼さんは、お友達の中にいるのね。
パパはこのお話を読んだことがある?
[俯き加減に話を聞き終えて、ぽつりと呟く。
机に置いた本に手を置くと父を見つめた]
お話の中にね、いなくなった仲間が狼さんか分かる魔法があるのよ。
そんな魔法、本当にあると思う?*
[問われると、考え込むように俯いた]
…看護婦のおねえちゃんは本物の魔法使いなのかな。
でも、魔法使いは生きている狼さんを見つける魔法は知らないわ。使えるのは、いなくなった人が魔法使いか狼さんか分かる魔法よ。
その魔法を使って狼さんを見つける方法は…。
ウェンは好きじゃないわ。
[握った手に少しだけ、力が加わった。
やがてたどり着く自衛団倉庫]
[父の背後からちらり、盗み見たのは鋭い刃。
声をあげそうになって懸命に呑みこむ。
無意識に肩にかけた鞄を握る手に力が入った]
パパ…ここで、狼さんを探すの?
狼さんはここにいるの?
[そこにいる大人たちを見まわして、最後に父を見上げた]
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