腹が減ってはなんとやら。
みんなで食べようかね。
[紫水晶のピアスでキクコとムカイの出現場所をサーチすると、ぱちん、と指を鳴らしてその付近の明かりを灯してやる。]
塔の明かり全部灯した方がいいかねぇ。
いっそ塔のドア、開いちまおうか。みんなでちらし寿司を食べるかい?腹が減っているだろうし。
[しれっと言い放つ。
当然だが、開けようと思えばいつでも開けることができたらしい塔の封印。]
[ぶーたれるヒナに悪戯っぽく笑って]
とりあえず携帯電話は見つかったようだからねぇ。
ヒヨコが携帯電話を運ぶのは…ふむ…。
[困ったように肩を竦めてあえて視線を逸らすと、ちらし寿司を一口]
…いやあガモンさん、ちらし寿司も上等さね…!
いい仕事してるよ本当に。
[美味い美味いとちらし寿司を口に運ぶ]
[水晶を見るまでもなく外から聞こえてくる声に]
…ほう。お友達が来てくれてるようだねぇ。
いいじゃないか、みんなで食べようちらし寿司。
ほれ、この馬鹿弟子。お前さんも機嫌直しな。お前さんだって黒のを脅かしすぎだよ。自業自得さね。まったく…。
[弟子の頭をコツン、と軽く小突いた。]
[アンに睨まれてびくっとなったキクコに歩み寄り]
黒の血は強いものだからねぇ……中世の過酷な時代を生き残った強さの証さね。誇っていい。
[微笑むとキクコにの頭を優しくぽふり、として。
その手をとり、手のひらにそっと乗せたのは上質のオニキス。]
それは黒の魔法使いと一番相性が良いはずさ。
――『力の安定』。
うまく使いこなせるかどうかはお前さん次第さね。
使い方を考えるのも修行のうちだよ。
そうそう、みっちり修行したくなったら遥か西の『紫の森』に来るといい。……空を飛べるくらいになるまでは帰さんがね。
[すこしだけ悪戯っぽい、優しい微笑み。]
…完全な分化後は魔力を取ったところで既に魔法使い化しとるからそのうち自然回復するだろうが、
分化直後の不安定な今この時はどうだろうかね……ふむ。
長年の勘からするに、限界のラインは恐らく夜が明けるまで。
…需要と供給が一致するならば挑戦してみるのもいいんじゃないかね。
[ちらりと一瞬オニキスを見ると、今度はスーツのポケットから魔石―――アンバーを取り出し]
…分化祝いにムカイ少年へ贈ろうとしていたこのアンバーさて……まぁ、力があろうがなかろうが構わないか。よし。特別サービスだ。
この夜に集いし魔法使いの血を引く者達に贈り物をしよう。
ムカイ少年にはアンバーを。
ギンスイ少年にはネフライトを。
リウちゃんにはアイドクレースを。
ゾウサクさんにはジルコンを。
ヒナ先生には…そのシトリンの水晶を。ぴよちゃんの動きを追える魔法はそのままにしといてあげようか。ふふ、仲良くやるんだよ。
…ん?お前さんには前に餞別をくれてやっただろう。あの大広間の水晶で我慢しな。あれは十分上等な品だろうよ……まったく。
[どさくさにまぎれてちゃっかり贈り物を頂こうとするアンにはぴしゃりと言い放つ。]
さて…ルリちゃんはどうやってお家に帰そうかね。
みんなに贈り物をしてルリちゃんだけ何もないのも可哀相さねぇ。
[眠っているルリにいくつかの石をかざしてみる。
一つだけ、力の手応えを感じたその石は。]
…そうかい、この子と一番相性のいいのはこれか。
[ぱちん、と指を鳴らすとその石は淡く輝き。
転送の魔法を込めた石――ラピスラズリをルリのポケットに忍ばせてやる。
夜が明ける頃にはルリの意識とリンクして、一番馴染みの深い場所に送り届けてくれるだろう。]
[それ故に、黒は真っ先に狩られる対象であった事は―――言わずに。にこりと微笑み。頭をぽふり、とされて。]
ふふ…そうかい。
そりゃあ楽しみだねぇ。
…追い越しついでにアンの頭もぽふってやるかい?
[見守りつつも、キクコにかすかに…しかし確実に聞こえるくらいの声でぽつりと呟く。楽しそうな人の悪い笑み――面白がっている。]
[塔の窓から外を眺める。
月の色はいつの間にか優しいものへと変わり。
東の空の色が少しずつ変わりゆく。]
修行したい奴はいつでもおいで。
遥か西の『紫の森』。
詳しい場所?アンにでも聞きな。
見つけるのもまた修行。残留魔素でも追ってみるかい?
[右耳の紫水晶のピアスを外してテーブルにコトリ、と置いて。]
…また合う日を楽しみにしているよ。
[朝焼けと同じ色の霧になって、ふわりと溶け行く。]