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[メールを送った後に食器を洗い終わりリビングへと戻ろうとする。
ふと携帯の液晶に目をやれば新しい日が始まる1分前。]
…………。
[手の中にあるそれをぎゅっと戻り、リビングへ入ればデンゴとジュンタの姿。
ふいにリビングにある時計が0時を告げるメロディーを奏で始めれば、目の前にいたはずのジュンタの姿がふわりと消える。
彼がいた場所に舞う白い雪。
それはアンが消えた時と同じで。]
え………?
う……そ……。
[信じられないと目を見開く。どんなにその場を見てもジュンタの姿はなくて。]
どうして…?
ずっと傍にいてくれるって言ったよね?
[ぽろぽろと目から零れ始める涙。
ジュンタが座っていた場所へとよろよろと近づけば、へたりと座り込む。
彼がいた場所には彼の携帯と白い雪が残っているだけで。]
うそ…!絶対うそ…!
[それ以上、言葉は出なくて、繋いだ手の温もりも好きだと言ってくれたあの声も笑顔も鮮明に覚えているのに、今はここにいない彼。
隣で呆然と見ているかもしれないデンゴに]
どうしてジュンタなの?
どうして?
[そう言って誰かに縋らずにはいられなくて。小さいその子に縋って涙が枯れるまで泣き続けた。]
[暫くそうして泣き続けていればジュンタがいた場所に残された携帯からウィンターホールが流れ始める。
流れていた涙の痕をごしごしと手で拭い、縋っていたデンゴには]
ごめんね…。
[泣きはらした目で謝り、鼻をくすんと啜る。
彼の携帯を手に取り、表示を見れば「イマリ」の文字。]
………。
[誰とも話したくない。でも、この状況を伝えるべきなんだろうかと考えながら、通話ボタンをぽちりと押す。]
…………もしもし?
[彼の名前を紡ごうとした相手が自分の名前を紡ぎ直すのが聴こえてくる。]
………そうです……。
[何か言葉を紡げばまた涙が零れそうで。ただ聞かれた事にこたえるのみで。
今、目の前であった事を伝えなければと思うのに言葉が出なかった。]
[イマリの問いにまた思い出したように涙が零れ始め、嗚咽が漏れる。]
……うっ……ジュンタ…消えちゃっ……たっ…。
[そう言えば、堪えきれずに声をあげ泣き始め]
ど…して…?
どうしてジュンタなの…?
[電話の向こうの相手に聞こえる悲痛な叫び。]
[電話の向こうで何かを言おうとしている彼女の声。
何を言おうとしてるのかわからない。
それでも泣き続けていれば、紡がれる謝罪の言葉。]
……ごめん……って…?
[彼女が何故謝るのかわからず、嗚咽を漏らしながらも尋ねる。]
[メールという言葉にはたりと思い当たる。彼女はきっとジュンタの名前を綴ったのだと。
口から責める言葉を紡ぎそうになる。
でも、自分も同じように違う人の名をメールに綴った。責められない…。
自分と同じようにこの人も言われた事をした。その結果。そう思えば責められなくて]
ごめん…な…さい…。
また…連絡します。
[そう言って彼女の返事を待つ事なくぷつりと通話を切る。
これ以上、彼女の声を聞いていれば責めてしまいそうだからそうすることしかできなかった。**]
[イマリとの電話を切った後、携帯を握りしめたままうなだれていれば、服を掴まれる感触。
はっと我に返り、流れ落ちる涙を拭いながらデンゴの方を向く。]
デンゴ君…ごめんね…。
さっき何か言いかけてた?
[デンゴが呟く言葉。瞳を瞬く彼には何かが見えているようで]
ん…?何か見えるの…?
[自分もきょろきょろと周りを見回してみるも何も見えなくて、彼の目に映る物は何なんだろうと小首を傾げる。]
死者の想いを還せば…デンゴ君のお母さんもジュンタも本当に戻ってくるのかな?
[隣にいるこの子も母親がいなくなって辛いのには違いないのに、自分ばかりが泣いているわけにはいかない。と思いながら、ふと窓の外へ目をやれば、再び天から降り積もる雪。]
デンゴ君、疲れてない?
寝るなら一緒にいるから眠るといいよ?
[そう問い掛け、少年の頭を優しく撫でた。**]
[デンゴが眠ると言ったなら、押入れから布団を探し出し、敷いて寝かせるだろう。
少年が寝ている間、眠る事もできずジュンタの携帯を握りしめたままで。
ふと思い出す。雪が天へと戻っていく中、彼が自慢できるかもと言ってムービーを撮っていたのを。]
勝手に見てごめんね。
[もうそこにはいない彼にぽつり謝罪の言葉を呟き、フォルダを開いていく。
一番上にあるムービーを再生すれば、変わらぬ彼の声が聞こえて]
元の世界に戻ったら自慢するって言ったくせに…ばか…。
[ぽつり呟く。]
死者の想いを還せば…戻ってくるんだよね?
[そこにはいない彼にそう問い掛けた。]
[ムービーを再生するのをやめ、傍らに寝ているデンゴの頭を撫でる。]
デンゴ君が見た人影って…ジュンタだったりしないよね…?
[すぅすぅと寝息を立てて寝る彼が答えられるわけもなく。
そのうち気がつけばデンゴの横でうとうと。
それでもデンゴが起きれば、それに気づくだろう。]
[微睡の中、何かが体に当たるのに気づく。
それでもすぐに起きられなくてデンゴの言葉を夢現で聞く。
デンゴが何かに驚く声をあげればはたりと現実に戻り]
デンゴ君?
[身を起こし布団の中で何かを凝視している少年の顔を見た。]
[誰だと何かに問いかける少年の様子に首を傾げる。]
え…?何にも見えないよ?
[少年が指さす方を見るも何もなくて。ふるふると首を左右に振る。
布団から起き出したデンゴが触るなと言って慌てて手を振る様子を見て]
デンゴ君…どうしたの?
何か見えるの?
[少年が見えている物がなんなのか分からず頭の中は疑問符だらけ。]
[何かと対峙しているらしい少年の様子に訳が分からないまま。少年が見つめている方をじっと見る。
見てもやはり何も見えなくて。
その時、デンゴが発した言葉に]
え…?
ジュンタ…?
…………。
ごめん…。
私には見えないみたい…。
[ふるふると首を振り、それがジュンタであるなら自分も会いたいと目を凝らしてみるも何も見えなくて。
肩を落としてしょげる少年の肩にぽんぽんと触れ慰める。]
[こちらへ視線を移したデンゴがしょんぼりするのを見て、頭を撫で]
うん。見えないんだ。
私も見えれば2人でデンゴ君が見えてる物がなんなのか一緒に悩めたのにね。
ぼんやりとかー。
デンゴ君のお母さんが心配して見に来たのかな?
それともジュンタがまだ近くにいてくれるのかな?
[にこり微笑んでもどかしそうにしている少年の気を紛らわそうと]
ほら。また雪が空に戻っていくよ。
[外を指さし、彼が消えてから1日が過ぎたんだ…。そう思いながら窓の外へと視線を送る。]
[ふいに声を上げたデンゴを見れば何かを目で追っていて、目線が自分の顔でとまる。
首を傾げれば、頬に何かが触れた気がする。
自分の気のせいなのかなんなのか。
頬に手を当て不思議そうな顔をして]
見えないけど…何かが触れた気がした…。
[ぽつり呟いた。]
[隣にいるデンゴがぽつり呟く言葉が耳に入るもただ聞くだけで、頷くのを見てなんとなくデンゴが思っている事がわかったような気がして]
デンゴ君のお母さんにもジュンタにも早く帰ってきてもらわないとね。
[デンゴの母は元の世界に戻ればきっとそこにいるのだろう。でも、この世界で消えてしまったジュンタは元の世界でまた会うことができるのだろうか。]
そこまではアンちゃん、教えてくれなかったなぁ…。
[ぽつり呟き、ぎゅっと手に力を込める。]
[こくりと頷いた少年が何かに驚いた顔をしたのに首を傾げる。
ふいに立ち上がったデンゴが行くというのを聞いて、イマリとの電話を思い出し、なんとなく行くのは躊躇われたけれど]
じゃあ。私もいこうかな。
デンゴ君待って!
[玄関へと向かい始めた少年の後を慌てて追う。]
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