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[老婆の見た光景は、極々一部であった。何かを防ぐ目的で屋上に備えられていたものが、彼女に全貌を見せるを妨げた。それでも、先ほどの潰れる音と合わせて何が起きたか知るには十分だった。十分すぎた。]
[ 田中老人はよろめき、後ずさった。
自身の手で、人形で、顔を隠すように。真っ赤に焼き尽くすものを見、目がつぶれてしまうを防ぐ様に顔を覆った。]
おお……おォ……
違うよう、あたし、あたしァ見てないよう
何も見ない 見なかったんだァよ
大丈夫さ 何も何も………なんにもなかった……見てないよぉ
帰らなきゃ――帰らなきゃァ……どこに?
おうちに帰んないと。おっとさんに叱られる……帰らなきゃ……。
[震える体で地を這うように菓子袋をひっつかむと田中老人は足を叱咤して駆け出した。
そこで見たことを、目を潰すような鮮やかな色のことを、彼女は同室の誰にも、看護士にも言わず寝台の中で丸くなった。]
午前 ラウンジ
[彼女は食堂へ行かなかった。
菓子袋に入れたものから適当につまみ、そうして彼女は朝食は済ませたと言い張った。菓子袋に手を入れた時、四角い小包装のチョコレートに触れて、老婆は人形と一緒にその胸に抱き、それからもう一度、大事そうに袋の中に戻した。
そうして朝の食事の時間をやり過ごすと、食事についてこれ以上看護士に怒られないようにと病室を抜け、いつもの彼女の定位置へと向かったのだった**]
せいしゅん…?
[きょとんとした顔で、千夏乃は首を傾げてみせる。]
うん。ゴトウさんは、きっともてるね。
[屈託のない笑顔を見せて、]
朝:とある病室
[震えた瞼を緩慢に開いて、強制的な眠りから目覚めた。
病室の白い天井。窓からは陽光が差している。
ゆっくりと上肢を起き上がらせて、次に見たのは自分の着衣だった。]
―――…、……ですよね。
[入院着を着せられている。つまり、緊急入院させられたのだろう。
医者の不養生を実践してしまった。皮肉そうに頬を引き攣らせ、起き上がり衣服を着替え、切れた瞼上に貼られた絆創膏を剥がす。
柏木さんを追い詰めたのは、―――…
過ぎる思考を其処へと残し、医局へと向かった。]
[医局に戻ると、昨日現場にいた先輩医師に深く謝罪した。
『良く眠れたか』との問いに二つ返事を返す。
念の為と簡単に診察もと言われたが、それは丁寧に遠慮した。
壊れたものを治せないもの は
壊れるまで 壊れたものに尽くすだけ
職務や使命などという綺麗なものの為ではない、ただ流れるままに――職務へ戻った]
午前:無菌室前
[幾つかの回診を終え、無菌室前へ辿り着く。
殺菌室で殺菌を追え、マスクを着用した。]
鎌田さん、鎌田、小春さん。
入るよ。
[扉前から声を掛け反応を待つ。
医師の背後には鎌田担当の看護師もついていた。]
[そうして、また幾らか他愛もない話をして、時間を過ごす。夕方に近づくに連れて気もそぞろになる千夏乃。ぼんやりしたり、急に話し始めたり。
そして]
『チカノちゃん、お父さんきたよ』
[千夏乃は駆け出して*いった*。]
―夕方―
[バレーボール部のみんながお見舞いに来てくれた。]
わあ、みんなありがとう!
[代表で一人が殺菌室を通ってから入ってきて、
皆の寄せ書き入りバレーボールを手渡してきた。]
ありがとう!頑張る!
[私はエースだ。ここで倒れている訳にはいかない。
みんなで全国大会を優勝するんだ!]
→翌日へ
―朝―
[今日は朝から調子が良くない。
このままずっと眠っていたいけど。]
はい…。
[検診の先生がいらっしゃったので返事をして身体を起き上がらせる。]
えーと…何先生、でしたっけ。
[もしかしたら以前に聞いたかもしれないけど、忘れてしまったか思い出せないか。或いは知らないか。]
昼・3階、談話室
[やがて、お婆さんが戻ると言い、立ち上がると]
さむくなってきたから気をつけてね、おばあちゃん。
お菓子、ありがとう。
[千夏乃も立ち上がって、廊下まで見送った。]
[か細く伝う反応を耳に、隔離された病室の扉を開く。
看護師と共に室内へ入り、患者の横たわる寝台へと近づいた。]
おはよう。
僕は結城と言います。今日は僕が診させて貰うね。
[恐らく常と同じように微笑んだ筈だけれど、笑みをみせることは無く。
けれど怒っているようにも見えないだろう、無表情のままに彼女の頬へと触れ、口腔から診ていこうと。
鎌田の顔色は余り、良くないように見えた。]
どうかな、身体の調子は。
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