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―道―
ええ、良いお天気ですね。
欲を言えばもちょっと、涼しいと嬉しいんですけどねえ。
[にっこりと笑みかえし、
女性の手中のカメラへ視線を向けた。]
……写、真ですか。
このあたり、絶景とかでもないし、
撮影するひとなんて初めてみたわあ。
いい景色……かしら。
地元民としては、なんだか嬉しいわあ。
こんな田舎より都会の方がいいって人も、村人のなかにはいるし……。
カメラが御趣味?お祭りも撮るのかしら。
子供たちがお神輿を担いだり、櫓の上で笛を吹いたり、
ここのお祭りは素敵なんですよお。
泊ることにした、なんて風来坊みたいねえ。
もう宿をとってお荷物をおいてらっしゃるのかしら。
あそこの旅館、どうでした?
[見たところ、相手はたいそう身軽だったので、
そう判断して訊ねてみた*]
[異国の風貌の女性と。]
えええ、
お連れさんとはぐれちゃったんですか。
[彼女の説明にぽかんとしている間に、
女性は歩き出していた。]
この辺りに宿泊できる場所はあの宿しかないから
すぐに合流できそうだけど……大丈夫かしら。
[去りゆく背を見守っていると、
突然振り返った彼女にカメラを向けられ、]
ぴ、ぴーす……
[うろたえつつVサインを作った。]
またね、ふーらいぼーさん。
―ネギヤ邸―
こんにちは〜、うちの組の分の鉢巻きお持ちしました。
それといつも通り、冷蔵庫お借りしてもいいですか。
[ネギヤ邸のたたきを上がると、家人にことわり、
自治会用の飲み物を台所の冷蔵庫に入れた。
そして祭りの衣装が収められている座敷へ、
手製の鉢巻きを持って行った。*]
―祭り前日・ネギヤ邸―
[ショッピングバッグから鉢巻の束を取り出した後]
ネギヤさん、お客様のお相手を?
では御挨拶は遠慮しておきますねえ。
[来客の件を家人に聞いてそう言った時、向こうの襖が開いて、プレーチェが出ていくのがみえた。]
あら、あの子、さっきの……?
[プレーチェの素性を教えてもらい、]
まあっ、ネギヤさんの姪っこさんなんですかあ。
[似ていないわ、との感想は胸の内に留めた。]
―祭り当日―
おつかれさまですー。
はい、ええと、ネギヤさんはコーヒー牛乳、萩原の奥さんは烏龍茶でと…
[汗だくになりながら、
神社の本部テントに飲み物を運んだり*]
―本部テント―
あら、プレーチェちゃん、こんにちは。
おじちゃん……ネギヤさんね?
あら?…さっきまでここに居たけど。どこかに行っちゃったみたい。
[奥様方と噂話に興じているうちに、ネギヤの姿は消えていた。
プレーチェに尋ねられれば、見回して困って首を傾げ。]
[ヨシアキにも同じように教えて]
あ、よければ後で、お面配り手伝ってちょうだ……
[そう頼みかけたところで、向こう、
よろめいてしゃがみ込んだ少年の姿がみえた。]
[テントから少し踏み出して観察する。
怪我をした様なら、
ユウキを呼び戻そうかと一瞬考えたが、
ヨシアキ含めて幾人かがそちらへ向かい、
少年が立ち上がったのを認めれば、安堵した。]
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