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[ノギの声を聞いて振り返る]
あなたが、助けてくれたのですか?
ありがとう……ございました
[深々と頭を下げる]
外はまだ吹雪いていますが、どうしましょうか
[肩や足を動かす。あまり感覚はないが、火の側にいたせいか、なんとか動くことはできそうだ]
大丈夫みたいですね。
きっと駐在さんに早く見つけてもらえたおかげでしょう。
ほんとうにありがとうございました。
[再度、ノギに向かって丁寧なおじぎをする]
『この男、何か厄介な匂いがするわ』
『とにかく、警戒されないように気をつけなさいね、ふふ』
[ノギと話をしながらも、頭の中にはあの声が響いている]
そうですね。
みなさんに心配かけてるかもしれませんし。
[ノギの提案にうなずくと、火の後始末をしてから扉を開ける。部屋の中の暖かさをかなぐり捨て、一歩外に出るのには、多少の踏ん切りが必要だった]
はい。わかりました。
多分、大丈夫だと思います。
[行きは一人、帰りは二人。ノギの存在を心強く感じながら、風鳴る吹雪の中、一歩一歩管理棟への道を辿って行く]
すみません。
[道中、足の感覚がなくなって歩みが緩慢になり、ノギに肩を借して欲しいと頼んだ]
桜に近寄るな……ですか。
一体、あの桜には何があるんですか?
[ノギの言葉に、作家としての好奇心が鎌首をもたげる]
ヒトを喰らう為に……ですか
それは怖い話ですね
[いったいどれほどの艶やかさなのだろうか。その桜が咲く所を見てみたいと思ったが、口には出さず]
管理棟にあった本に書かれていた人狼伝承と、何か関係はあるのでしょうか
そうなんですか。
[ふと、普段は寂れているセろうこの集落に、短期間に大勢の客が集まったことに疑問を感じた]
もしかしたら、僕たちはその桜に導かれてこの集落に集められたのかもしれませんね。
[冗談とも本気とも取れるような口調で話す。ノギの様子が深刻なのに気づいて]
どうしました?
あ、管理棟……
戻って来られたんですね
[光を見ると感慨深さがわきあがる。家の灯りがこんなに愛しく見えたことはあっただろうか。気が抜けると同時に力も抜けかけるが、雪を踏みしめながら入り口まで歩こうとする。突風に倒れるノギに投げ出され、地面へとダイブ]
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