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[がらがら。トランクを引く音が響く。その黒いトランクの上部には、同様に黒いメイクボックスが編み紐で括り付けられている。
それらの持ち主――紫色の着物を纏い、畳表の草履を履いた男は、目的の館の前まで来て足を止めた]
……此処が……
[懐から畳まれた「招待状」を取り出し広げては、館と交互に見、小さく息を吐き]
……嫌ね。
本当に辺鄙な場所だわ。
[呟いた声は、男性らしくも微妙に高い音を持っていた。
眉を寄せ、懐から今度は扇子を――着物より濃い、帯と同じ紫色の物を出して、閉じたまま口元に当てる]
全く。真相がわかったとか何とか言って。
あんなもちもちに何ができるっていうのよ。
……あの餅肌は、賞賛に値するけれど。
まあ、いいわ。
その真相とやらを聞いてあげようじゃない。
そしてこのわたくし、名化粧師にして名探偵であるンガムラが真の真相を……
……紛らわしいわね。
[それから、館の門をくぐり]
ごきげんよう、ネギヤさん。
お久し振りですこと。お招き感謝しますわ。
三年前の「酢豚にマンゴー事件」以来ですわね。
あの時は、お世話になりましたけれど……まさかこんな館をお持ちだなんて思いませんでしたわ。
[玄関で出迎えた館の主に、そう話しかけた。『クリームパン殺人事件』の真相とやらを教えようともちもち意気込むネギヤに]
あら。それは良いですけれど……
他の方もお呼びになっているのでしょう?
だったら、急ぐ事はないと思いますわ。
勿論、早く聞きたいのはやまやまですけれどね。
それなら先に部屋へ案内する?
助かりますわ。
[そして宛がわれた部屋、
[蔵]へと*向かった*]
……げほっ、ごほっ。
何よ!
客人を蔵に泊まらせるなんて、どうかしてるわ!
このわたくしを馬鹿にしているのかしら……!
もちもちのくせに!
[埃っぽい薄暗い蔵の中。
きぃぃ、と閉じた扇子の端をかじり]
……いいわ。
酢豚にマンゴー事件と同じように……
いいえ、それ以上に華麗に!
わたくしが全ての謎を解き明かしてあげるんだから。
覚えてらっしゃい。
どんな探偵が来るんだか知らないけれど。
通称「[性別が逆転した]事件」をも解決したわたくしに勝てるわけはないわ。
あの事件で私は思ったの。
私はやっぱりこのまま、自分の気持ちに正直に生きるべきなんだと、ね。
思い出すわ、ドウゼンさんのあの可憐な姿……
……それにしても。
本当に蔵よね。掃除もしてなさそうだし……
埃っぽいたらありゃしないわ。
泊まるなら少し何とかしたいところだけれど。
そろそろ他の探偵とやらが集まってきた頃かしら。
[眉を顰めつつ隅にあった椅子の埃をはたくと、そこに座った。メイクボックスを開き、点検をし始め]
[それからメイクボックスを手に居間まで来ると、室内を見回して]
……あら。
思っていたより静かですことね。
他の皆さんは……ああ、それぞれ部屋に。
[ネギヤに問い掛け、納得したように]
では、少し此処で失礼させて頂こうかしら。
誰かと思ったら、ホズミさんじゃない。
相変わらず元気そうで……何よりですわ。
[その胸元を一瞥して、扇子の端を口元に当て]
わたくしはネギヤさんがどのような「真相」を披露するのか、気になって来たのですわ。
名探偵だという方達にも、お会いしたかったですし。
[そのまま扇子を広げては、おほほ、と笑い]
ええ、頂きますわ。有難う。
クリームパンはわたくしも好きですのよ。
(01)ヶ月後くらいにはそのようなブームが来るのではないかと思うわ。
アーヴァインさん……
ゲルトさんと間違われて殺された、可哀想な人。
精悍な顔立ちの、いいお人でしたのに。
学生さんと、花嫁さんと、フランスの方?
それはまた、随分と変わった方達ですこと。
元々、同業の方には風変わりな方が多いですけれど。
そうですわね……
行く先々で何か起こるのは、探偵のさだめですものね。
幾つ恋を見つけても、儚く散ってゆくのですわ……
[ほろりと、哀しげに。
余裕の笑みにぴくりと眉を揺らし、ほほ、と誤魔化す]
……若い方が好きなお人でしたわね。
[じ、とホズミを見たりしつつ]
奇遇ですわね。
わたくしもそう考えていますのよ。
ゲルトさんの傍に落ちていた、[お取り寄せバッグ]から……
[呟き返して、頷いた。
居間に来て書斎へ向かうドウゼンには、典雅に一礼をした*だろう*]
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