[メイは立ち上がり、中庭から美術館の中へと足を進めた]
うわぁ・・・・・・なんか怖いし。
彫像なんてほとんど怖いし。
[美術館の中は真っ暗ではなく、作品が一つ一つ確認できるくらいの薄暗さだった。
それらはどれも昼間と違う顔をしていて、脈打つような生命を持っているように感じられた]
ん?何か動い、た・・・・・・?
[恐る恐る、そっと近づいてみるとそれは天使の像。
左のくるぶしから下にかけてだけ朱色をしている。その部分が、やけに浮き上がって見えた。
しかし周りに人影は無く。]
やっぱり誰もいないか・・・・・・。朝になるのを待つしかないかな。
あーあ、まったく。居眠りなんて、恥ずかしいなぁもう。
[そう呟いて、向かう先は一枚の絵の元。]
はぁ・・・・・・。馬鹿みたい。
[大きなため息を吐いて、暗い中でも馴れたように、絵画のブースへ足を進める。
絵にも彫像にも、特に興味があるわけじゃない。
なのに最近、殆ど毎日通い続けているこの美術館。]
ほんと馬鹿みたいあたし・・・・・・。
[ぽつりと呟いて、足を止めて*俯いた* ]
[絵画のブース。
メイは一枚の油彩画の前に立っていた。
その絵には赤毛の少年が描かれている。
ヴァイオリンを弾いていて、翠の瞳が、生きているみたいにどこかを向いている。
随分と、洗練された雰囲気が漂っていた。]
[指をスッと高く上げた。
ヴァイオリンを弾く少年の絵の目の前で、指揮者のように。]
・・・・・・何、やってるのかな。ふふ・・・。
[4拍子を二小節分刻んで、自嘲気味に笑う。指を下ろそうとした時、どこからか旋律が聞こえたような気がした。]