ンなもン返すな。思い出せねェし、答えようがねェよ。
第一…この感覚、宇宙だろォ?ここが宇宙船なら、誰かしらいるだろォし、通信システムだってあンだろ。
適当に捜すしかねェのか…。
[微か、不安げな面持ちで結城の後ろをついていく]
そもそも、誰がいたかも思い出せねェ…。オレら以外誰もいねェ、なら…ぞッとすンな。男二人とか。
一応、少数精鋭の可能性は高ェか。
[結城に続き、室内に入る]
…通信室、だな。船内に連絡すンには、確か…。
[機器を操作し始める]
オレだって勘弁願いてェぜ…。
[持てる知識を総動員しても、正しい反応は得られず舌打ちする]
……分かったのは、船の中にも、外にも連絡が付きそうにねェ事、だな。
やべェな…ついに、本格的な妨害工作が入っちまったかァ?
多少メカに強いくらいでどうにかなるもンじゃねェよ。
訓練受けてるオレでさえ…。
[苛立った視線を機械に向ける。
尋ねられ、自然と口は重くなる]
あァ…。……火星の宇宙事業にはな、ちょっとした組織抗争があンだ。
オレは、日本の組織の人間で……。
[重く息を吐く]
悪ィ。アンタを巻き込んだの、オレかもしンねェ…。
それも、思い出せねェよ。
…船医として、呼ばれたンじゃねェの?
[適当な口から出任せ]
二人して記憶障害なンざ、故意だろォな。
JINROに敵対してるどこぞの組織にナノマシンでも射されたかァ…?
……はッ。喋ってても埒があかねェな。
この船の構造には覚えがある。
食料庫漁りに行くが、どォする?
説明いンなら、ついてこい。
道すがらで、かつ、教えられる限りでいンなら、少しは話す。
[そう言って、部屋の外へ歩きだそうと*する*]
悪ィ…。JINROが、何かは詳しくは言えねェ。
つか多分、知らねェ方が良い事だ。
…アンタがここに来た理由?さァな…記憶の無いときに宇宙に目覚めたか、あるいは、どこぞの組織員がなンか仕組んだか…。
ま、推測しか、できねェな。
空調が働いてンなら酸素の方は平気だと思うが。
………。
[言い切れず、けれど、逆の言葉を口に出すのは更に躊躇った]
[こんな状況下では、パニックになるのも、させるのも、拙すぎる]
食料の確保と、人間の捜索。あと、するこたなンだ?
あァ、一息ついたらさっきの機械の復旧もか。
[仕事があれば、まだ嫌な気持ちを誤魔化せる。
しっかりとした足取りで、食料庫の中へと入る]
[幾つか積まれたコンテナの影、]
……?オマエ…アン、か?
オマエも、この船に乗ってたのか。
[知り合いの姿に、小さく息を*洩らした*]
[学んできた分、今の状況が酷いことは分かっている。だからこそ、]
怖がって…?ンなはずねェだろ。
[軽く笑い飛ばす。単に、笑われまいとする意地の問題かもしれないが]
あァ、そうか…。ここにいる3人とも…。
確かに出来すぎだァな…。
捜せば、まだ他の奴らもいンのか?
…なァ、アン。オマエは誰かに会ってねェのか?
[問いかけにも、微かにアンは首を横に振るのみで]
そォか。てっきり、クルミや森山もいンだと、思ってたが。
まだ、会えてねェだけか…?
…あァでも、少なからずアイツはいねェか。
自分から窮地に飛び込むはず、ねェもンなァ。
[名前を口に出そうとすれば、また頭痛に襲われた]