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[ばたばたばた]
[慌てたような足音が家へと段々近付いて来る。
扉が開く音。玄関に上がる音。廊下を駆ける音。
様々な音の中にゴンッとぶつかる音を混ぜた後、家の中にとある人物を見つけてそれらの音は一旦止まった]
アンっ! 杏奈!!
それ持ってくな、親父のだ!
[封筒を手に首を傾げる妹>>0に制止をかけ、寄越せと手を伸べる。
逆の手は後頭部を擦っていて、先程のぶつかる音はそこから発されたと言うのが良く分かった。
妹に、「またぶつけたの?」と言われながら友幸は封筒を受け取る]
今日は棚…。
っと、話してる場合じゃない、行って来る!
[ぶつけた場所を口にしたところで時間が差し迫っていることに気付き、封筒を鞄へと仕舞って再び慌しく外へ]
ヤバイ、後10分。
間に合うか…っ!
[移動手段は徒歩。
免許は持っているが、乗り物は生憎出払っていた。
いくつかの荷物を肩に掛け、友幸は全力で走り出す**]
[190cm以上ある体躯が疾駆する姿は正直目立つ。
見慣れた者には、またか、と思われる姿だが、急ぐ友幸にそんな風に見られていると言う意識は皆無だった]
あの店を………左っ!
[目的地は父が診断の依頼を受けた植物園。
公園に隣接するその場所を目指しているのだが、急ぎすぎて曲がる時に人が居ないか確認することを怠ること多々。
運良く誰も居ないことがほとんどだが、時折ぶつかりかけて進路変更、後に壁や電柱に衝突と言うことも少なくない。
お陰で生傷が絶えず、妙に丈夫と言う身体が出来上がっていた。
さて、今回は無事に曲がれたのかどうか]
…、 ぬあ!
[残念、無事ではなかった。
出会い頭に見えた姿に進路を右へ。
その先には勿論、電信柱]
《ゴッ》
[人にぶつかるのは避けた。
その代わりに額を電信柱へと打ち据え、軽く仰け反った]
〜〜〜〜〜〜ってぇええぇぇええぇ
[しゃがみ込んで右掌でぶつけた額を強く抑える。
ジンジンとした痛みの他に、くわんくわんと脳味噌が揺れたような気がした]
[頭上から、大丈夫かと問う声がかかる]
だ、大丈夫、大丈夫。
いつもの ことだ し。
[痛みに涙目になるのは已む無し。
相手に心配をかけないように笑って顔を上げたが、目がチカチカして相手の顔が上手く視界に入らなかった]
……はれ?
[見上げた状態で何度も瞬きをする。
繰り返すうちに視界は戻り、目の前に居たのが近所のおじさんであることに気付いた]
…あ、何でもない何でもない。
頭ぶつけたせいでちょっと目が回ったみたいだ。
ごめんなおっちゃん、びっくりしたろ。
[様子が変と見て取ったおじさんから問われて、再び笑みを作って首を横に振る。
それから前方不注意の非を詫び、友幸はようやく立ち上がった]
うん、ちょっと急いでてさ。
……………
───あ゛っ、やべっ
[近所のおじさんと会話して、思い出して腕時計を見る。
腕時計の針は規則正しく動き、指定の時間は無情にも過ぎていた]
おっちゃんすまない、また今度!
[慌てて走り出すその様は先程の出来事をすっかり忘れたよう。
後には荷物から零れたらしい木槌が一つ、転がっていた**]
親父っ、悪い遅くなった!
[慌しい様相で辿り着く植物園。
既に診断を始めていた父を見つけ、謝罪を口にしながら駆け寄る]
《ゴッ》
[梯子の上から脳天に拳を食らった]
っ だあぁああぁぁああ〜〜〜
[さっきの余韻も相まって、頭の中がまたくわんくわんと揺れた]
わ、悪かった、って
これでも、急いできたんだよ。
[脳天を押さえながら父を見上げる。
その額はぶつけた名残で赤くなっていた。
上から見下ろす父の表情が呆れたものになる。
それから零される声。
「早めに行動する癖をつけろ」と]
大学の講義もあんだからしょうがないだろ…。
ああもう、今日で3回目だよ頭ぶつけたの。
[家で後頭部をぶつけ、道で額をぶつけ、ここで脳天を叩かれた。
脳細胞大丈夫かな、などと考えながら父を手伝う準備をする]
……と、そうだった。
親父、手紙来てたぞ。
[思い出して鞄から封筒を取り出して、梯子の上の父へと渡した。
封筒の中には手紙と写真が一枚ずつ。
先に写真を眺めた父がそれを友幸へと渡してくる]
お、これってあの藤園?
綺麗に咲いたなぁ。
[写真に写っていたのは満開の藤。
10年程前まで住んでいた街にあった、有名な場所。
花が咲いた時は勿論、診断や治療のために父が訪れる度に着いて行ったのを覚えている]
杏奈も気に入ってたよな、あの藤園。
ずっと行けてないしなぁ…また直に見たいな。
[父が樹木を再生させるのを見て、自分も同じ道を辿りたいと思ったのはあの藤を見てから。
想い出の藤の美しい姿に自然瞳が細まる]
……そーいや。
[この藤園を持つ家に同い年くらいの子が居たよな、と。
記憶を辿るに連れて一つ思い出す。
話をしたことはあまり無かったが、可愛い子だったと記憶は告げていた。
そんなことを思い出していると父の声が頭上から降ってくる]
に、にやけてなんかねーよ!
ほら、作業すんだろ、何やれば良いんだ?
[呆れ顔の指摘に焦りながら返して、話題を打ち切ろうと本来の仕事を父に促した。
道具を一つ落としてきていることに気付くのはもう少し先の話**]
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