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―集会所―
[老婆の声に促され、暖炉のそばに座り込む]
あら、貸してくれるの?ありがとう。
[青年が差し出した毛布をにっこり微笑んで受け取ると、座ったまま全身に被り顔だけ出している]
ほんと、寒くって凍え死ぬかと思ったわ…。
―し…ぬ?なんだろう、何か引っかかる―
[何事か考え込みながらぼうっとしている]
[ユージーンの手を軽く握ったまま、リズムが取りやすいようにリードした動きで]
あら?墓守だってなんだって関係ないわ。貴方が踊ってみたいなら踊ったらいいじゃない。下手だからっていいわ。上手に踊る事が大事なんじゃないのよ、楽しく踊る事が大事なの。でも、
[ゆっくりと手を放して顔を覗き込む]
踊りたくないならそう言わないと。自分が何をしたいのか、解るでしょう?
さぁ、どうするの?踊る?
[ユージーンのゆっくりとした喋りを我慢強く聞いて、残念そうに小首をかしげる]
自分が駄目で恥ずかしいって事ね?
人目なんか放っておけばいいのに、つまらないわ。
[喋りながらも緩やかに踊り続け]
あの人も下手だから恥ずかしいって言っていつも尻ごみして…。
あの人…って、誰…?
[食卓に食事の用意が整ったあたりで暖炉からテーブルに移動し、上の空で食事を始める]
―あの人…ダンスが下手で、いつも私の踊るのを幸せそうに見ていた。
あの人と私がここにやって来たのは…誰かに会う為で…誰、だっけ?
何の用事で…。――
[ぼんやりと食事をしながら椅子の上で腰をずらすと、衣装の腰のあたりにガサリと言う違和感を感じ探ってみる]
手紙…?(がさがさ)差出人は私ね。でも宛名がない。
これは…結婚式の招待状?…っつ。
[激しい頭痛にスプーンを取り落とし、両手で頭を抱える]
【―過去の記憶―】
もうこんな貧乏な暮らしうんざりなの!
このしみったれた村も惨めったらしい服も大っ嫌いなのよ!!
「まて!待ちなさいキャロル!」
―制止を振り切って家を飛び出したのは15才の時。子供の頃に若いジプシーの男と家を出て行った母親のせいで、この村では惨めな思いを沢山した。
『あばずれの娘 本当に父親の子か解ったもんじゃない 男を垂らしこむ目だ いやらしい娘だ…』
村人たちの蔭口はちゃんと私の耳に届くように囁かれたものだった。
こんな村にいても私の未来は真っ暗。未練なんか欠片もない。一生戻らないと決めて出て行ったあの夜、私は自分の名字すら捨てたんだった。
なんで忘れていられたんだろう…。あの憎い村人たちの事を…。全員死ねばいいと思っていた事も―
[青ざめた顔でふらりと立ち上がると、食事もそこそこに2階へ上がって行く。誰かに話しかけられても上の空で返事を返すくらいが関の山]
―でも、私はなんの力もない小娘だったから、村人たちを殺すなんて出来なかった。ただの妄想だけ。
でも村人たちを見返す為に必死で修行を積んで舞踏家として成功もしたし、愛する人にも出会った。
あの日この村に帰って来たのは、成功した姿を意地悪で貧乏な村人たちに見せつける事と、この招待状を直接渡して父さんを街に連れて帰る為だった。
なのにあの雪の中で…私の時間は…――
止まったんだった。私…死んだんだ。
父さんの顔も、あの人の顔も、名前すら思い出せないなんて…。
[2階の廊下の突き当たりにあるサロンまでふらふら進んで行ったが、そこまで思い出すとがくりと力なくソファーに*崩れ落ちた*]
[ソファーに倒れ込んだ姿勢で目を閉じる]
皆意地悪だったわ…。でも…何人かいたの。優しい人が。幼馴染が。何…人…か。
[両手で肩を抱きしめ眠りにつく。閉じた目の端からは*涙が一筋流れていた*]
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