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五穀豊穣を担う神様は多そうですけど、その一歩前として、『いい天気』だけ担当の神様って珍しいんじゃないですかねー。
[軽トラへと戻る途中、枯れた花が視界に入ると、酸性雨という言葉が脳裏に浮かんだ。
家まで送ると月下に声をかけてみたが、やんわり断られ一人、村の道を走りだす]
そー言われても、さ。
ここまで来て、「んじゃやめるー」ってのは、言えねーよ?
[セイジに返す言葉は淡々と。
続いた低い声。
ふ、と表情が失せる]
『『堰』は間もなく飲まれる。
……邪魔は、させぬ』。
[応ずる声は、氷の冷たさを帯びていた]
[車から川へ移動する途中、羽音に振り向いたが、すぐにまた川辺へと視線を戻した]
よう。
何してんだ?
[ぴりぴりした空気に気付いていないような口調]
上るか、下るか 知らんどん。
[連日の雨で増水した、川。
櫂を拾った移民の男は、師匠さえも舟を出さないその川へ
――がこん、引っくり返していた高瀬舟の舳先を向けた。]
堰、 越える みちが ひとつだけ ち
思い違いしとる 阿呆は 見ちゃおられんが。
[自分の口から出た声に、戸惑ったような表情をしたが、すぐにはっとして]
……それでも、駄目だよ。
たとえ、どんな理由があるにしても……
人を消すなんて、駄目だ。
人を、悲しませるなんて……
[きり、と鋭く目を開く。強い光の宿った双眸]
“「空」を侵す者を――
主らを、見逃してはおけん。
誤りし者め――”
川くだりの前に、自分とこの蜂はちゃんと手懐けとけよ。
[蜂を見ないまま軽く指差してヌイへと向ける]
タカハルは、こういうの好きか?
[取り出したのは、てるてる坊主ひとつ]
“ネギヤ 廃屋”って書いてあるんだけど、何これこの村独自の流行?
……なこと、言ったって。
[悲しませる、という言葉。
ぎ、と唇を噛んだ]
オレ、そんなん、わかんねぇもん。
[正確には『忘れたつもり』。
そうしないと──耐えられなかったから。
誰もいない家とか、話もろくにしない父親とか、そういう冷たさに]
『何をして正と、何をして誤と成すか。
我は、我の在り方のままにゆくのみ……!』
タカハル君……
[名前を呼び、悲しそうな、苦しそうな表情をする。その声と表情は...のもので]
“愚かな。
暗夜に落ち、道理も見失ったか。
その錯誤、正してくれようぞ”
[強い声と表情は...に降りる「何か」のもの。入り混じり、混ざり合い、ただ、どちらも終わりを求む]
流行に敏感じゃねーと、この仕事やってけないんだぞ、っと。
[羽織のポケットからペン状のものを取り出して、逆さてるてる坊主に点を二つを描く。右目と左目]
キティーちゃんに口がない理由しってっか?
[一拍置いてから「教えてやんない」と笑い、てるてる坊主を投げた。タカハルへと弧を描く、それ]
トレードしようぜ。もう一回。
……ジャマ、すんな、セイちゃん。
オレは……オレは、ただ。
[低い声で、ぽつりという。
傘を握る左手に、力がこもった]
『望みのままに在るを愚かと言うか。
そは、生命の所以。
我は、ただ、『我ら』が望むままに……!』
[それよりも、更に低い声は少年の心の奥に棲みついたナニかのもの。
歪んだ共生の果て、互いに互いを侵蝕したそれらが望むのは、現状からの解放のみ]
……タカハル君の邪魔、なんて。
本当は、したくないよ。
でも……
“望むは、自由なれど――
理を侵すは許されざる事”
[男のようでも女のようでも、老人のようでも子供のようでもある声。一歩、タカハルの方に踏み出す。も、ンガムラの言葉に其方を見やり、様子を窺った]
[手に取った逆さてるてるを一度、見て]
……なに、ガム兄が勝ったら、みんなを『還せ』とか、そーゆーの?
……その手には、のんないよ……!
還せなんて言わねーよ。
俺、エスパーとか超常現象とかオバケとか信じてないし。
でもまぁ、タカハルがやったというのなら、良識ある大人としては放っておくわけにはいかないわけで。
[雨に流されて目にかかった前髪をかきあげてから、俯く]
雨も滴るいい男ってのは、いい女いるとこじゃないと意味ないよな。
濡れ損だ。全く。
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