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─回想─
『──知ってる?小6の時に引っ越したチカノちゃん。プログラムで死んだんだって』
[そう囁くように告げた安西アンの目は、好奇心と恐怖が入り雑じったような光を湛えていた。
彼女に悪気は無かったのかも知れない。
だが、自分には許せなかった。
興味本意で、そんなことを安易に口にする彼女が。
忘れかけていた面影が、きらきらしたまま消えるのを無惨に砕かれた事が。
── おさげの、控え目だった笑顔が過る。
多分、初恋だったのかも知れない]
[彼女は、どんな風に死んでいったのだろう。
優しくて、しなやかに強い女の子だった。
ぶっきらぼうな自分は、ろくな事もしてやれなかったけれど。
けれど、きっと彼女なら。]
(……お前なら、自分だけ助かりたいなんて。
思ったりしねぇよな、きっと)
[ごめん、と呟いて。
最期に胸に過った思いは、誰に届く事も無い]*
“向井雅史様”
[それは、女の子らしく少し丸目の綺麗な文字で。
宛名が書かれた封筒が届いた時の、嬉しかった気持ち。
少年自身は、大分、前に忘れていただろう。
──けれど、このふたつだけは覚えている。
返事を書こうとして。
何度も、何度も書いては捨てた手紙。
未だ幼く素直になれなかった少年は、結局、その返事を返すことが出来なかった。
そんな自分自身が、とてももどかしかった切なさと。
そして。]
“私、みんなの事、大好きだよ。離れても友達でいてね”
[その言葉。書き記された古い手紙は、今も机の引き出しの奥に仕舞われたまま]
─A02─
[もう動くことの無くなった学才服の身体。
爆発した首輪は跡形はなく。
血に汚れた胸の前、寝癖がついたままの頭を深く項垂れるようにして。
普段のように、眠っているように少年は廃屋の壁にもたれて座っている。
自分の選択肢が、どんな結果に辿り着いたか。
そらすら知らぬうちに、少年は時を終えていた。
──遠く。遠く。
静まり返ったエリア内の向こう。
誰かの慟哭が響いたのに呼応するように。
……ゆらり、と頷くようにその頭が揺れると。
静かに壁を滑り、その身体が倒れ。
それきり、その廃屋に音は無くなった。]**
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