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ぁ・・・ぁ・・・
[窓の外に引っ張られる部長をただ震えて見ている事しか出来なかった。
部長の姿が完全に見えなくなった時、糸が切れたようにその場に座り込んだ]
なに・・・これ・・・
[誰にも聞こえないほどの小声で呟いた]
謝らんでええから、手…――――!
[ふと、体を押さえていた力が抜けて
たたらを踏むように、前に進みだしたけれど]
あ…――――
[伸ばした手は、届かずに
その姿は、闇の中に消えて]
っ…――――
――先輩!
[視線の先で、リウの姿は窓を越え落ちていく。直後、ふっと、足が床から離された。ヨシアキがいる場、リウが落ちた窓の前へと駆けていき]
…――――
[届かなかった 落ちた 下に・・・?]
お前ら、下、下っ!
ここは三階、落ち方がよきゃ助かるわっ!
はよ、降りるぞ!
[倉庫のような教室を、出ようとしたけれど
一人、足りない・・・?]
ち、またトイレかなんかか?
ビビって、逃げたんやなかろうな
[ヨシアキの言葉にハッとしたような顔をする]
そうか、そうだな。
下に行ってみよう。
[教室を飛び出す。恐らく下に行っても何も見つからないだろうが]
[しばらく呆然としていたが、ヨシアキの言葉に反射的に立ち上がる]
う、うんっ
[一人足りないことに気づく余裕もなく、教室を出るヨシアキの後を追う
助かってると信じながら]
あ、ああ、おいね。
外から見て何処か、ちゃんと覚えとかんと……
はよ行かんと!
[ヨシアキに頷き、己も教室の外へと走り出す。走りながら、ざっと辺りを見渡し]
……ん。
そういえば、あの一年が……
シンヤって。さっき、いなくなったって?
[足りない姿に気が付き、先に聞こえていた気がしたセイジの言葉を思い出して問い掛けたが。今其方について深く考える余裕はなく、廊下に出]
[シンヤの背後からシンヤには見えない手が伸びて口を塞ぎ、あっという間に消える様を...は見ていた]
そう…ここでは連れ去られるんだよ。
[人はそれを神隠しと言う]
[ばたばたと、階段を駆け下りる
駆け下りると言うより、飛び降りるに近いが
普通の出入り口は、鍵かかかっているだろう
だから、一階の教室の窓から外に出よう]
おい、お前ら
なんか可笑しい、絶対変や
離れんなよ、何があるかわからんわ
[ヨシアキの呼びかけが聞こえる]
う、うんっ
[言われなくても離れるつもりなんてなかった。
何が起きてるの?部長は・・・怖い。怖い。怖い。
自分の足の遅さに遅れそうになりながら必死についていく]
連れ去られ……?
[セイジの言葉と様子に、訝しげな表情と声色を過ぎらせる。も、問い詰める事はやはりなく、ヨシアキの後に続いて走っていき]
ああ、そうやな。
間違いなく、何や起こって……起こっとる。
一人にはならんようにせんと。
[呼びかけには強く頷いて]
―― 一階 ――
はぁ…―――
[息が切れる、久しぶりに全力で走った]
マシロ、もうあんな事すんなよ
お前が落ちとったら、どうする気や
[がらり、適当な教室のドアを開けて]
……はあ、……
[一階に辿り着けば、膝に手を付いて息を整えつつ]
そう言ったって、仕方ないやろいね。
……まあ、こんな事になったさけ……
気を付けずにはおれんけど。
[ヨシアキに言葉を返す。開かれたドアを後ろから覗き]
ん、気をつけろや
離れんな、助けられんのは嫌やからな
[かつかつと、歩み寄って
窓を開こうと、鍵をあけるけれど
押しても引いても、動かなかった]
…――――
[窓から、奥を覗いてみる
暗くて、良く見えなかった]
開かんわ
校庭から回るか?
開かないって・・・どういう事ですか・・・
[自分でも開けようとしてみる]
・・・どうして・・・
そ、そうですね、そうしましょう。はやくっ・・・はやく行かないと・・・
[少し混乱状態になりながらヨシアキの言葉に同意する]
ん。
ヨシアキこそ、改めて気を付けまっしま。
[後から教室に入り込む。窓を開こうとする様子を、開けられないらしい様子を見て]
開かないんけ?
なら、そうするしかないやろうな。
あと、他の教室は?
[ヨシアキに頷き、また首を傾げる。セイジの声が聞こえれば、其方を向いて]
不吉な事言いなさんなま。
もし、七不思議がどうこうなんやとしても……
校庭と焼却炉は外にあるんやし。
[少しだけ険しい顔をして、窘めるように言った。校舎の外には出られても学校の外には出られないという可能性もあったが、口にはせずに]
他の教室、行ってみるか
校庭の方を回ってみるか
どっちがいい?
[一緒に来た者達に、そう問いかけて]
俺は、気を付けんでいいんや
気を付けたって、盾にされるんやろ
[マシロに、そんな答えを返しながら]
どうやって校庭に回るんだ?
おそらく渡り廊下の扉も閉まっている。
校舎内で検証出来る場所に行くしかないだろう。
…理科室…行くか?
[ちょうど鍵を持っているしと付け加える]
“俺たち”に許される行動は
七不思議の検証のみ。
…それが証拠に、すでに校舎から出ることすら許されないだろう?
[淡々とした口調で話す]
とりあえず近くの教室の窓確かめてみて。
それから校庭に向かってみんけ?
[ヨシアキの問い掛けにはそう提案し]
だら。
それはいざという時や。
いいから気を付けまっし。
[続けてから、セイジの言葉に]
確かめてもみんで、何言っとるん。
まだ此処だけしかやっとらんのに。
ただこの窓が悪いって事も有り得るやろ。
せやから、今言ったろいね。
たとえ七不思議の呪いかなんかやったとしても……
七不思議には、校庭と焼却炉があれんぞ?
出られんにしても、門と囲いから外には、って考えた方が自然やろいね。
ああ、おかしいわ。
いきなり、何や、今起こっとる事は全部わかっとる、みたいに言い出して。
凄腕の霊能者やら、犯人の幽霊やらやあるまいし。
[セイジには、苛立ち混じりに返し]
ともかく、他の教室の窓だの色々試してみんと。
どうとも出来んやろいね。
[今いる教室を後にして、隣へと向かった]
……嘘、こんな事あるはず無いに。
何かの冗談じゃん。
学校の怪談がホントなんてありえなー。
[一部始終を見ても、出てくるのはそんな言葉。
けれど、声は震えて、理由や説明なんて、もうできないけれど。]
引いてもダメにゃらブチ壊せって偉い人も言ってるに、明日怒られるかもしれにゃーけど構わんよね?
[と、窓が開かない様子を見たなら。
窓際に置いてあった花瓶を手にとって、おもむろに窓に向かって投げつけたけれど]
……ありえんぜ。
[がいん、と花瓶は窓に跳ね返されるだけ。]
[返答はイミのわからないものだった]
なに・・なんですか・・・
奴ら・・・?
牛耳られてる・・・?
検証を続けるしかない・・・?
なに言ってるんですか・・・?
[目の前の先輩の不気味な雰囲気にゆっくりと後ずさる]
……奴ら、ってなんぞ?
幽霊やらなんやらが居るなんて、そんなこと。
[と、セイジに]
本当なら上等じゃんか、わたしが見てきて確かめて。
そんな事は絶対に無いって、証明してやんじぇ?
…………っ。
[乱暴に理科室の鍵をセイジからひったくって。]
理科室て、保健室の隣り、だったよにゃ。
[場所は知っている、けれども確かめるように口に出した理由は。
かつかつ、と。何かを振り払うように教室を出て、そちらに足を向けた。**]
[異様な雰囲気に怯えながらセイジとナオのやり取りを見つめる。
ナオがセイジから鍵をひったくって理科室に歩いていくのをみて]
せ、先輩、一人になったらダメだって・・・
[慌てて後を追った]
[隣の教室へと入り、窓を確認する。開かない事を確かめた後に廊下へ戻り]
駄目やな。とりあえず、校庭に……って。
ちょ、待ちまっし!
[ナオが一人歩き出すのを見ると、すぐにその後を追おうとした。瞬間、背後から低い声が聞こえてきたのに、はっと振り向き]
……、
[視線の先にセイジしかいない事を認める。ふっと、その周囲に白い靄のような物が見えた。それは瞬きの後には、跡形もなく消えてしまって。
少し、無言で立ち止まる。も、すぐさま]
……ちょー待ちまっしって!
ほら、ヨシアキも、はよこ!
[改めて、タカハルに続いてナオの後を追い始める。ヨシアキに呼び掛けつつ――セイジを呼ばなかったのは、無意識だったか否か――慌しい足音を*響かせ*]
…――――
[背中が、寒い
いや、寒いのではない、冷たい
氷でも背負わされているかのようだ
セイジの言動の異常は、俺も感じているけれど
今は、それに反応するよりも]
ナオ、またんか
さっきの、見たやろ、切れたらいかんて
[マシロに続いて、後を追いかけた]
[おいつけるかは、わからないけれど
それでも、止めなくてはならない
また、目の前で何かがあったら
そして、またさっきのような事になったら
俺は、自分に自信がなくなってしまう]
やめ、ナオ
幽霊がおってもおらんでも、ええやんけ
自分の体が、一番大事やん
[理科準備室のドアをおもむろに開けた。
次の瞬間、何かに引きずり込まれるようにセイジの体が準備室の中に入り、ドアが閉まった]
……ったた…あれ?ここ…どこ?
[突如意識が戻った。
…が、
一人で準備室にいるのが不思議だった]
おい、なんで一人なんだ?
[ドアを開けようとするがびくともしない]
あれ?なんで…?
[ドアを叩く。向こうからもドアノブを回しているようだが、どうしても開かない]
十分冷静だから、確認しに行くんぜよ。
[理科室の鍵は、たやすく外れる]
……幽霊なんて、信じにゃーよ。
[100均ライトの光量の弱さのせいか、それとも別の理由か。
ぼやん、としか視認できない理科室に、自然と喉が鳴る]
人体模型は、準備室かに?
[準備室の前に立って一呼吸。ドアに手を掛けてーー]
何するんに!
[ぐわ、とセイジに肩を掴まれて、後ろに退かれる。
勢いのせいで2、3歩よろけて、後ろの机にぶつかって。
再度準備室に視線を向けた時には、一人入っていく後ろ姿が見えただけだった。**]
キタネ…
キタネ…
クス… クス… クス…
[耳に飛び込む声に歯の根が合わず、ガチガチと音を立てる。
人体模型の目から目を離すこともできない。]
―――――…ッ!!!
[声にならない叫び声。と、同時に全身に激痛が走る。
校舎に入るところから記憶がなく、気づいたら準備室にいた。
そして、耐え難い恐怖と苦痛に晒され…
...は錯乱状態に陥る]
[一緒に行こうという声とは別の声が聞こえる]
「痛いのが辛いなら
連れていってくれと頼むが良い
楽になるぞ」
楽に…なる…?
楽に…なる…のか…?
[やがて理科室の前に到着して。ナオが準備室の扉に手を掛けるのを見ると、すぐに後から入れるようにと歩み寄っていき――]
!? ……
[瞬間、ナオを押し退けてセイジがその扉を開けた。そして、中へと入っていった。素早く、何処か不自然に。見えない何かに引きずり込まれるかのように]
セイジ!
何してん、いきなり……
[よろけ下がったナオを一瞥してから、扉に手を掛ける。そのまま開こうとした、が、鍵のかけられていない筈の扉は、しかし先の教室の窓のように、びくともせず。
ガチャガチャという空転する音ばかりが、あちら側から扉を開く音と共に響き]
[此方側からあちら側から、開こうとしようと叩こうとしようと、扉はびくともしない。ヨシアキが近付いてきたなら試みるのを譲ったが、彼がやっても――誰がやっても――結果は同じ事だっただろう]
っ……
おい、セイジ! セイジっ!
[聞こえてくる叫び声に、祈る思いで名を呼んで*]
[ナオを追って理科室にたどり着く。
理科準備室の扉を開けようとしたナオだが中に入ったのは割り込んだセイジだった]
・・・
[中から叫び声が聞こえる。中から扉を必死に開けようとしてるのが分かる。でも開かない、開かない]
また・・・なの・・・
[必死にセイジの名前を呼ぶマシロの後ろで、タカハルはそう呟いた]
[がちゃがちゃ、がちゃがちゃ
マシロから交代した、ドアを開く試み
だが、押しても引いてもドアは開かずに]
おい、セイジ…――――!
[叫ぶ声も、届くかどうかわからない
どんどん、どんどん
ドアを叩いてみるけれど、弾かれてしまう]
くそ…――――
[不意に片手が自らの意志と関係なく持ち上がる。
指先が切られるような感覚がしたが、それ以前に体中の激痛により、その痛みを認識することはなかった]
“言葉は契約、願いは呪力”
[...の指が勝手に床を這う]
[血に塗れた指は勝手に床を這い、
言葉を紡いでゆく]
“祈りは糧にして、恐怖は甘味”
“理を知らぬ者に、亡者の手を”
[すでに...の意識はほとんどなかった]
[次に扉を開けた者は、この言葉が...の血によって、
床に綴られているのを目の当たりにするだろう]
“ 言葉は契約、願いは呪力
祈りは糧にして、恐怖は甘味
理を知らぬ者に、亡者の手を ”
[この意味を理解する時、…何を思うのだろうか]
コトバハ…
ケイヤク…
ナンダヨ…
[模型が...に吸い寄せられるように“入り込む”]
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
[断末魔の叫びを残して、...は…消えた]
[ヨシアキとマシロが必死にドアと叩いているときに呆然と突っ立っていることしか出来なかった]
[その時、一段と強い叫び声が]
[タカハルは一瞬ビクッとして・・・そしてすぐに感じた]
[あぁ・・・もう・・・]
[それでも、なにもすることが出来なかった]
[連れて行ってくれ。そんな声が聞こえた。何処か遠く、軋むような、ノイズに割れた音のように。それからまた、叫び声が――激しい、一際大きな叫び声が、聞こえて]
セイジ……!
[名を呼ぶ声は、空しく空間に響き]
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