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─精錬所前─
(せいれんじょ)
[ぴょこん、ぴょこん、ぴょこんと、昨年より一回り大きくなった体で精錬所の入口にたどり着く。
後足だけで立つが、見上げても逆に煙突から上る煙しか見えず]
(マシマロンの言っていた、精錬所ってここだよね?)
[首を傾げつつ、中に入ろうとして]
『ウサギだ』『美味そうだな』『おいこら待て!』
[入口の警備員たちがウサギを見つけ、わらわらと出てくるのに気づき、脱兎になった]
(ボクを食べないでーっ!)
[意外な俊敏さで、なぜか村長さんちの方角へ*逃げ去った*]
親父、これ出目金。
[抱えていた段ボールからビニール袋を取り出すと、すでに水が張ってあったタライに浸す]
普通、金魚屋が金魚すくい屋…以下省略。
[怪訝な顔をする父親の隣の地べたに腰かけると、モナカに針金をさし始めた]
なんかさー、最近はポイとかいうのも出たらしいぜ。
いちいち刺すのも面倒だし、そっちにすれば?
[プスプスと心地よい手応えを楽しみつつもそんな提案。ぐるりと遠くを見上げると精錬所の煙突]
あのくらい大きな迎え火ならあの世の人たちも迷わず来られる…って誰が言ってたんだっけ?
早いものね、もう盆踊りの時期よ、エンゾウ。
[自宅の縁側で、昨年掬った出目金に話しかける]
今年は、私もお手伝いに行かないと。アンさんが――
[途中まで言って、自然と口をつぐむ]
腹減ったからなんか買ってくるわ。
親父も何か食う?
[立ち上がって埃を払う。隣にも舞い散ったのか、顔をしかめられた]
あ、悪ぃ。
そういえば…
[去年の賭けに勝ったのは誰だったか。曖昧な記憶を探りながら、まずは*やきそば屋。*]
でも、本当に?
話にはありきたりだけれど、駆け落ち……のほうがまだありえる。
[神隠しだなんて。唇だけが言葉を紡ぐ。しばらく目を伏せて物思いにふけって]
本当に、誰も知らないのかしら。村に続く道にいらっしゃるお地蔵様なら……
─村長さんち─
[走り疲れて茂みの中で一息つく。
嗅いだことのある匂いに鼻をひくつかせ、元を探って茂みから顔をだした。
縁側で初老の男たちが湯呑みを飲み交わしながら会話をしている]
(……昼間からお酒?)
[暗い屋内では女たちが働いているようだった。複数の慌ただしい気配とざわめきが聞こえる]
(神隠し、あの子、気立てがよかった……)
[漏れ聞こえて来る単語に、耳を揺らす]
(か──……誰か来る?)
[男性が縁側から庭に下りた。
慌てて、村長さんちから跳びだし──]
─村のどこか─
[人気のないほうに逃げているうちに、自分がどこにいるのか分からなくなった。
強い日差しの野道で、半身を上げて辺りを見回す]
(どこだろう。
ボクはバックンじゃないのに……)
[途方に*暮れている*]
盆踊り会場
[今年もまた、迎え火の季節がやって来た。
昨年と同じ様に今年もまた設営の手伝いをしていれば、周りの人の話し声が聞こえてくる]
…ああ、そうか、去年のことか。
[昨年の迎え火の日の翌日、アンが姿を消した。村では神隠しと言われているが]
神隠しなんて非現実的な。
[ぽつりと呟く]
多分家出じゃねーかね。ま、誘拐されたとかで酷い目にあってなきゃいいんだけどなぁ…
[最近あった陰鬱なニュースの事を思わず連想してしまい、顔をしかめた]
[程なくして、準備もあらかた片付いた]
よし、と。暫く休憩してくるよ。
[近くの人に声をかけて、広場を離れる。そして村の中へと歩いていった**]
[盆踊り会場。作業する人たちに麦茶を配ったり、ほんの、ささやかな手伝い]
……そうですね、今年は少し、出店の数がすくないかも。村長さんは、盛り上げて欲しいって言っていたけど。
[会場に、村長の姿は見えない]
無理もない、です。
[わずかなため息]
……と。
[手伝いの駄賃にと差し出された飴細工にいくらか目を見開いて]
ふふ。お駄賃を頂けるような歳ではありませんが、有り難うございます。
[良くできた出目金の形に微笑むと、盆踊り会場を、ぶらり*]
[今年は少し早めに、祭り会場へと足を運んだ。出店の様子を眺めていると、一年前のことを思い出す]
あれは、何だったのかなぁ。
[ちらちら揺らめいていた焔のようなそれは、人混みの中を見え隠れしながら動いていって。そして、一人の少年の肩口にそっと止まると、淡く白く光って消えていった]
ひ……ヒトダマとか、だったりして。
でも。綺麗だった、すごく。
[会場をぐるりと見渡すと、今年もその少年が来ていた]
あの子だ。金魚屋の。
……えーと、誰だっけ。名前、名前。
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