情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了
え...?
[振り向いたモミジの顔に、遠い記憶が過る...泣いていたのは......あれは?]
えっと七咲さん、だいじょう、ぶ...?
[たき火から離れて一歩踏み出した途端、同じようにモミジの方へ振り返っていたマシロの姿が、ふいに消えた。
ばさ、と音をたてて、焼き芋の入った紙袋が地面に落ちる*]
[近付くと、モミジの顔は赤く、明らかに熱っぽい様子に見える]
やば...本格的に風邪ですよ、これ。とにかく火の傍に。あ、これも着て下さい。
[大慌てでジャケットを脱いでモミジの肩にかける。例え遠慮されてもそこは強引に押し通した]
座った方がいいな、ええっと...
[きょろきょろと辺りを見渡す]
え?乙葉さん?ほんとだ、居ないな...でも消えたって感じじゃない、ですよね?
[雪に半ば埋もれた砂場から小さなプラスチックの子供用バケツを見つけ出してたき火の傍に裏返しに置きつつ首を傾げる]
とにかく、ちょっとここに座って休んで下さい。
水分もとれたほうがいいんだけど...水飲み場動くかなあ?
......早く帰らないと。
[モミジの様子を見ながら、初めて真剣にそう呟く]
俺ね、ここに来たのは偶然じゃないって気がしてるんです。
ずっと昔、子供の頃に住んでた家の近くの公園に似てるんだ。
[そして、思い出しかけた何かを、懸命に掴もうとするように、言葉を重ねた**]
[遊具に一度視線をやって、ふるりと頭を振る]
......雪、は、ちょっと食べると冷えすぎるかな。
あ、でも...
[どこかへ飛んでいきそうな思考をつなぎ止めるように、話し続けながら、雪の上に片手を乗せる。じん、と感覚が無くなるくらい冷えてから、その手で、そうっと、モミジの額に触れた]
こうすると、気持ちよくないですか?熱っぽい時って。
[冷静になれば、ほぼ初対面の女性に対して、相当に無遠慮な事をしているとは思い至れただろうけれど、今はどうにも「普通」の感覚が遠かった。
まるで、周囲から散々に変わった子だと呼ばれていた、子供の頃に戻ったように]
雪って、冷たいけど、優しいですよね。
雪の精みたいに......
[そうだ、オーロラの輝く国で優しい雪の精が色々な人に幸せを運ぶ、そんなおとぎ話だったっけ**]
.........
うわっ!...す、すみません!
[ふいに、我に返った]
何か俺、すっごく失礼なこと...!すみません、急に子供の頃のこととか思い出しちゃって!
[わたわたとモミジの頬に触れていた指を引っ込めて、落ち着き無くに空中で握ったり開いたり......思いっ切り動揺している*]
マール...あ...
[公園で一人で本を読んでいると、時々傍に寄ってきた子犬。
ある日、ちょっと年上の女の子が、その子犬を「マール」と呼んだ。
女の子と子犬は仲良しで...いいな、と思ったけれど、話しかける勇気はなくて]
[でも]
[微笑んだモミジの頭の重みが肩にかかる]
...七咲さ......
[その微笑みは、今まで彼女が見せていたどこか微妙な笑顔とは、なんだか少し違っているように見えた。
そう、ずっと前に、どこかで見たような]
[彼女の身体が、地面にずり落ちぬように、肩に腕を回す。
とく、とく、と、聞こえる鼓動は自分のものか、彼女のものか]
あの子の名前......
[空を見上げる。
白い雪がふわふわと、舞う空を。
寒さは、今は感じない*]
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 エピローグ 終了