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[はらり、と帳面をめくる。
細かい字は、自分のもの]
もう祭りの日か。
[去年も二人、神隠しが起こった。
まだ幼い子のいるモミジと、毎年祭りに訪れたザクロ。
皆が無事に戻ってくるように。そんな願いをよそに、二人の姿は消えてしまった]
[紙をめくる。
はらりと紙が落ちる。
光に透ける厚さではないのに日にかざす、化粧師の名刺だ]
……え、っと。
今年はことさら、忘れっぽくて困るな。
[頭を掻くと、名刺を持って、家を出た。
祭りのにぎわいを抜けて、さまようように、名詞の主を捜す]
[子供たちの誘いを後でと断った先で声をかけられる。
化粧師は笑っていなかったろう、たぶん、自分と違って]
化粧師っていうのは、見えないものを見る力でもあるのかな。
[笑みを抜くように息を吐く。
コエのないまま、問いかけるように首を傾げた*]
神様の尻尾、か。
[なるほど、と一度自分の両手を見下ろして]
俺は、願えないよ。叶いもしない。
[相手を見直して、微笑んで、小さく頷く]
そうか。神様の尻尾、掴みたいと願ってみるのもいいのかもな。やってみる? ンガムラさん。他の願いでもいい、あるならば。
去年、みんなが帰ってきますようにって、マシロは願ったよ。
……優しいな、あの子は。
[うらやましい。と、音なく唇は動く]
それを神様に頼むのか。
[ぱちくりと瞬きを一度]
まあ、調べたというのなら、説明は今更だな。
案内はいる?
いらないといっても、俺もいくんだけどね。
そんなにおかしかった?
[自分も、一度吹き出してしまえば笑いは止まらず]
調べたんだよね、神隠しのこと。
よければ俺に教えてくれないかな。
[少し足をゆるめてみる。叶うならば、化粧師の隣に並んで*]
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