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[ザ
ザ――――
その視界の位置は、村役場を遠くに収めるように。
やがて、隣に立つ 誰か を見た。
両の眼から紅い涙を流す、土くれのような色の肌をした人影を]
(“屍人”がいる)
[長雨を思わせるノイズ音の合間に、声が拾えないかと耳を済ませるが、何も聞こえなかった]
(この村は、もう手遅れかもしれない。
それでも私は――――)
[やがてノイズ音は引いていき――――]
………何か言った?
[無機質な声音で訊きながら、相棒と少年の顔を交互に見やる]
「トカイの料理は美味かったって教えた。」
[確かに昨年二人で欧州方面に旅に出たけど。何故ここでトカイの話が?
首を傾げる視線の先、相棒の表情はどこか陰のあるものだった]
「美津保おねえちゃん、…か。」
[少年と別れた後、隣から聞こえた重苦しく呟く声には肩をすくめて]
他人の家庭の事情を暴くのは探偵か三文記者のやること。私達のやることじゃないわよ。
行きましょ、ソラ。
[やがて村役場から、二対の足音が遠ざかっていった**]
[女は、走っていた。隣に相棒の姿はない]
まずったわね……。
(まさか、屍人が集団で行動しているところに出くわすなんて。)
[とっさに二手に分かれて逃げた先には、古い家屋が立ち並ぶ一区画があった。
隠れる場所には困らなさそうだと、束の間、安堵の息を吐いた。
ザ――――
追っ手の一人、素手の男性の視界に、女の姿は入っていない]
[ 目標をロストした男性は、のろのろと歩きだした。
どこへ向かうのだろうか、話は通じるのだろうか――屍人の中には人間としての意識を残す者もいると聞いているが。
ふと、よぎる考えがある。
もしも話が通じるのならば―――]
……逃げ切れた ?
なら、探さないと。ソラの視界は、どこ?
[思い、探すも、映るのは砂嵐ばかり。
だから壊れたラジオを直そうとするかのごとく頭を叩こうとして――その手が止まる。
女は駆け出した]
助けてください!
[焦燥を滲ませた声は、物置を出て歩き出した人影に向けて**]
[―――もしも話が通じるならば。
この村のどこかにあるらしい、異界との“境界”。
その、在り処について訊いてみたい、と。
古い文献には、屍人ははじめ、“境界”を守護するために生まれたと記されている。
それは真実か否か、そして―――その役目は、今もなお伝えられているのだろうか?]
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