あははははーー。
とぉじこめちゃったぁー。
ぐぐぐふ。
これからゆっくり精気をいただこおぅう。
美味そうだー。
[中空に浮かんだ次元の曲がった先。水鏡の向こう側をうっとり眺める。一人の少女の姿がうっすら確認出来る。]
[と。本来の身体の持ち主の内なる声が聞こえる。]
そんな喚くなよ。
まだ喰ってねぇだろ。
オレは食通だからね。
美味そうになった頃合を見計らってこう。
ぱくっとね。あはあはあははは。
そぉか。そぉかー。
お前昨日バシャバシャやってたやつなんだな。
適当に手ぇ伸ばして掴んでみたんだけどなぁあ。
[くつくつと喉をならしながら、歪んだ次元の先の、閉じ込められた少女を眺めている。]
あーんまり遅くまで水際にいるからだぜ。
くくく。
ぐぐぐふ。
クルミだっけかぁ。
うん。次はこいつを閉じ込めちゃっても良いなぁあー。
あはあははー。
[「やめて。やめて」と身体の奥から抗議の声が聞こえる。]
オイ!!うるさいぞ!
お前はぁ、そろそろ黙っても良いんじゃないか?
ちくしょう。
あんまりイキのいいニンゲンは扱い難いぜ。
なんつっても久しぶりだからなぁ。
[不意に自分を支配した感情に戸惑う。]
なんだ。なんだ。厄介だな。
このコハルってやつしぶといぞ。
オイ!今更じたばたしてんじゃあねーよ。
じょおずぅーにかくれんぼしとくのが肝心なんだから。
邪魔すんな。
[夜の風が雨の匂いと湿った空気を運んでくる。昼間の太陽の下奪われていた力が、ふつふつと満ちてくる。]
あははははぁー。
ようやく調子が出て来たなぁあー。
昼間は暑くていけないぜぇ。
さあて。
夜遅くまで悪さしてる子は誰かなぁー。
くくく。
[少しずつ深まっていく夜闇の中へそっと思念を広げていく。]
まず、ひとり。
みぃーつけたぁ。
暗くなってもお家に帰らない悪い子だあな。
くくく。
[外灯もない細い道の闇は、どんどん深くなっていく。]
どうしようか。
今もうここでつかまえちまおうかぁー!?
ぐぐぐふ。あはあは。
それともそれともぉおー。
[向こうからもう一人少年が近づいてくるのに気が付いた。]
くっくっく。
みぃーつけた!みぃーつけたあぁー!!
ふたりめだぁー。
[そして、闇に広げた思念の触手の先に、もう一人。]
あはははは。
さんにんもぉー!
ダメだぜぇ夜ってのはぁ、
お家の中でじぃーっとしてないとなあー。
怖い目にあいたくないならなぁ。くくく。
[ざわざわざわ……と、静かに、震えるように、闇が波打っているのが聞こえる。思念の触手はまた一人いけにえをみつけたようだった。]
あははははぁー。
お家を出て来た悪い子がもうひとりー。
いそぉーだなぁ。くくく。
あははははー。
またひとりー。みぃーつけたぁ!
んーーふふー。
誰にするかなぁー。
[コハルの身体を中心に、一際深い闇が広がっていった。ゆっくりゆっくり、とても静かに、まるで水が染み出していくかのように。]