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朝
もうすぐ、クリスマスですね。
[浮かれているのは世間のみか。
院内では、今日もひとつの死を送り
ひとつの生を、迎え入れる。
サンタの人形は入院患者名簿の中の
[926号室の住人 ロッカ]と――]
―926号室―
[アネモネを全部風に託した後、わたしはそのまま屋上にいました
ハイライトを吸っていたのです
かみさまにも届きますように、って
その時、屋上の扉が開きました
ひろくんです
ひろくんがわたしの名前を呼びます
わたしは笑って、彼の方へ駆けよりました
ひろくんは、今日も泊まってくれると言ったのでした]
<926号室の井川様、井川六花様――>
[機械を通した、女の人の声がわたしを呼ぶのが聞こえました
ひろくんは、もうお仕事に行っています
わたしは、どうして呼ばれたのだろうと思いながら部屋を出ました]
―休憩所付近の公衆電話―
‥‥はい、はい
そうですか、わかりました
ありがとうございます
じゃあ、お待ちしていますね
[呼ばれたのは、わたしに電話が来ていたという連絡があったからでした
かつみさんからでした
わたしはテレホンカードを公衆電話に差し込んで、かつみさんに電話しました
テレホンカードは、数えなくていいので楽で、わたしは好きです
今日の午後、こっちに来るとかつみさんは言っていました]
[良かった。
受話器を戻して、吐き出されたカードを取りながら、わたしは思います
何となく、絶対じゃあないけれど、予感があったからです
わたしがわたしでいられるのは、たぶん、あと数日だけだって
だから、早い方がよかったのです
わたしは、わたしのままでいられると思いました
ひろくんや、傷のにいさまたちにも、一緒にいてほしいと思ったけれど、
そうしたら、きっと、止められます
だから、それなら、我慢しようと思いました
手紙だけ、遺しておこうと思いました]
[わたしは、かみさまの分の煙草を買っていこうと思いました
煙草の自動販売機の前へ行きました
今日は、ユウキさんには、会いませんでした。**]
暁闇
[夜が明ける少し前、男はゴミ捨ての為に外に出た。
キンと冷え切った空気の中、闇空の元には未だ星が巡り。
星座に疎いので、「オリオン座はどれかなァ」なんて
探す事にも時間が掛かる。
不意、右から左へと確かな筋を描いて
流れ星が見えた]
綺麗、だァ……
[願いなんて、唱える間もなく
流れ星は掻き消えた]
[今日も、母の意識は戻らなかった。
このまま逝ってしまうのだろうか。
けれど、苦しまずに逝けるならば
それも、悪くはないのかもしれない。
人は歳を取れば、必ずや死ぬのだ。
それに抗う事は出来ないし
抗う事で苦しみを覚えるくらいなら、と。
けれど、それは自分が決める事ではない。
母が決める事だ。
母が、まだ生きたいと思うのならば――]
かァか……、そうかァ
元気に、なれよォ……
[「苦しまずに逝けるなら」なんて
そう思った自分を恥じた。
母はまだ、生きる事を望んでいるのだ]
[母を元気づけ、自分もまた元気を分けて貰い。
集中治療室を後にした男は、階段を懸命に昇って
屋上へと向かう。]
……ふう、こりゃしんどい、な
運動不足なんて、昔は……、
[仕事が忙しかった頃は
毎日、筋肉痛になるほど身体を動かしていたから
こんな風に、足腰が悲鳴を上げることもなかった。
そして、こんな風に頭痛に悩む事も――
ずきり、走る痛みに蟀谷を押さえ
軋む扉を、ゆっくりと開く]
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