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[訪れたトゥーリッキに視線をやり、蒸らせたらしいお茶を移し替え、戸口から聞く報告にきょとんとする。]
はぁ? なんだそりゃ。
意地悪でもされたのか?
[情報集めは望めども個人の性格を報告されてあげた声は少し間の抜けたもので、緊張もあまりない声は冗談半分。
相手の装いが落ち着けば椅子に促し茶を出す。]
たまたま自分にいれたものだったから問題ない。
[珍しく出したお茶には悪びれもなく告げて、むしろ茶で良かったな、と人の悪い笑みくらいは見せる。]
告白……?
何か実の在る話でも聞けたか。
[状況が状況。即座に内容を問うことはせずも、知りたい意志は隠しもせず。]
――ドロテアは、ドロテアの出来ることをする。
それがどんなに残酷でも、奪ってやるな。
[苦笑とも何ともつかない曖昧な笑みはトゥーリッキへ。]
[見慣れた癖はただ見つめるに止めて、酒が良いと真顔で言われれば、零すは嫌味のない苦笑で。]
ウォッカなら。
[相手が本気なら茶をすすりながら棚を親指で示し、飲めばいいというスタンスは相手がトゥーリッキだから。]
――少なくとも、お前に実のある話だったなら
"危険"を冒す価値はあったわけだ。
[個室に二人。それは今も同じ状況。]
それが俺にも実の在る話なら聞きたいところだが
そうでないなら、しまっとけ。
[椅子に背を預けてお茶をまた一口。]
[ドロテアの話には黙って相手の声を聞く。
目をそらすことは決してしない。
詫びる相手には 構わんさ と添える声音は柔い。]
どうにか出来るなら、どうにかしている。
――が、代わってやることは出来ない。
[長老は言う――ドロテアにはまじないに関わる力はなく、狼使いの可能性もない人間と。
それはつまり。]
まじない師の延命。
――"暴虐を阻む"力を、命を対価に行使するに似ているな。
……無論、諦めたくはない気持ちは、ある。
[次にと告げる声にはゆるく頷き、続く言葉に一言。]
……――奇遇だな。
[本当にその一言だけを返す。
気持ちは無力ではないと告げる声に僅かに表情緩め]
そう言われると、救われる――主に俺が。
[口元は笑んで見せるも複雑さは消えない。]
[それから多少の会話はあったか、やがて席を立つトゥーリッキの言葉。ifを語る間には口を挟まず聞き]
そりゃ"どっち"の前提だ?
[笑まぬ軽口には冗談めいた――けれど単純でない問いを投げ]
――其の時は、一発と言わず腕の一本くらいくれてやる。
が、腕は惜しいし不利だからそうならんことを願う。
[軽口の声音には笑み含ませて。
相手は何か言ったか、部屋から去った後には片付けを始めてぽつりと落とす独り言に憂いは*含ませず*]
ちっとばかし無防備かもな、 …お互い。
[パチリと火の爆ぜる音。
ドロテアを連れた列が進むことも今は知らぬまま。]
……――寒い。
[呟くほどに、凍えてもいないのに。
気まぐれに鏡のある方向に目をやるも、見にいかず、ただ零したものは嫌気のない苦笑。
やがて立ち上がり、帽子と上着を着込むと外へと。]
― 小屋の外 ―
[外に出て、周囲を見渡せば遠く見える灯にも気付こう。
その中にドロテアが居るかどうかまではわからずも、細めた目は複雑に揺れる。]
役立たずは、俺か――。
[自嘲めいた声。
歩みは灯の向かう先に向かわない。
さくり、と雪を踏み、向かうのは人の居そうな場所。]
[ふらり出歩けばビャルネ達の姿が遠くに見えようも、彼の家の前だと知れば何とはなしに近づくことはなく。
ヘイノが群れから離れるには暫し目を留めるもそれだけ。
目が合うようなら片手の一つも振るだろう。]
――何も、進まないな。
隠したまま引き出すなんざ出来ないだろうが
……其れ以前の問題だ。
[やれやれ、と息を吐き、贄の娘を想うも刹那。
足だけを前に進めながら、赤い空を見た]
――凶兆の徴と知らなければ綺麗なのかもな。
それこそ、ヨソの人間や子供なら。
[流れて来たイェンニの声には唐突に声をかけ。]
この状況で"歓迎"ってのは些か想うこともあるが。
[此処へ来て長くは経たない相手の意図ははかりかね。
他方で聞こえた特徴的な足音――否、杖の音だろうか。
鳴らない杖を持つのはマティアスだろうとあたりつけ。]
[相手が見開いた目に、驚かせたと知るも謝罪はなく]
悼んでも儀が止まるわけじゃなし、
ドロテアはドロテアの出来ることをするだけだ――。
[答えは否定を滲ませるも割り切れてはおらず。
赤が好きだと言う相手の様子に特に咎める色なく聞くけれど]
血のようだから好きってか?
[帽子をつまみ、少し深く被る。
赤を血と結びつけた上で好きと言う相手をじっと見やり]
そう。
「赤」が好きなことについては何も。
ただ血のようでと言ったことが気になっただけだ。
[ドロテアの儀式に期待を寄せることなど知りもしないが。]
疑える、とはまた挑発的だな。
信じられる人間と、疑わしい人間なら探してる。
が、疑える人間探しにゃ意味はないだろ。
少なくとも――俺には。
[他者の思考まで知らないから、否定は自身に留めて。]
[怖い、と言う相手を決して人相の良くない目で見やり、日の浅い者が言うことと多くは裡に留めず]
浅さ深さもあるし、別段悼みを強要する気もない。
――俺は俺の意志の元、悼まないことを決めるだけ。
[理屈だけでは済まないことなれそれは自分の決断。]
へぇ……ためらわないって?
どうやら根本的に俺とは違うようで――好かん。
民族の差なんてレベルじゃないだろう、とは
此処しか知らない俺には言えない。
[自分が疑われねば――告げる声に目を細め]
この群れを守る意志のない人間にとったら、
案外そんなもんかもな――。
とするなら、お前はドロテアをどう見てる?
[抵抗もせず、捧げられる贄の娘。
潔白と明かされながらも捧げられる贄の娘を。]
此処に来て1年も経たないヤツにあれこれ言っても
仕方がないだろう――それだけだ。
[相手からひしひしと感じるものが違和感と呼べるものなのか、それほど付き合いもなければはかりかね。]
好かんと言った直後にそう言うか。
ああ、そうだな――これは個人の差異らしい。
[伸ばされた手に自然と警戒しそうになるを抑え、触れられた手が離れれば直すだけ。
疑われるが逃げ延びる道と告げる言葉に相手を見て、紡ぎかけた言葉は飲み込んだ。]
望んでいるかどうかは――さて。
だが、 ……、在る意味想像出来た答えだったな。
[生きる意志のないものは死ぬべきとこともなげに告げる様子に言い表せぬ想いを添えて]
お前は、考えないのか? 生きる術を。
[どこか人ごとのように語る声を訝しんで問う。]
せいぜい気をつけるよ。
赤が好きだと襲われてはたまったもんじゃない。
[ご自愛を――去り際添えられた言葉に本気混じりの*返答*]
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