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[ンガムラかと思った姿は、ヌイだった。小さく息を吐き]
……すみません、失礼します……
[勧められて、軽トラの荷台に乗り込んだ]
……
[辿り着いた人形店の前。遠目にもボタンの姿が見えれば、うつむき、黙り込む。てるてる坊主を握り締め、何かに――頭の痛みと声に――耐えるようにしていた。
結局その場では何も言えず、軽トラはまた走り出し]
……ギンスイ君が……間引かれ、た?
それは、どういう……
[どういう事なのか。ヌイに伝えられた内容に、困惑する。頭のどこかでは、朧げに把握できていたが、理性で納得はできずに。
やがて止まった軽トラ。ンガムラの姿に、一礼する。
ボタン雪、と言って尋ねたヌイに、息を呑み]
……ヌイ、さん。
[去ろうとした彼を呼び止めた。止まって貰えたならば]
……ンガムラさんを、頼りにして。
ボタンさんに、気を付けて……
[そう二言だけ、告げただろう]
[そうしたのは、ヌイが、特殊な事実を知っているように見えたから。どこか自分と通じるものを、感じたから。
ヌイが去っていけば]
……ンガムラさん。
少し、話したい事があるんです。……いいですか?
[改めてンガムラに向け、切り出した*だろう*]
[ンガムラの軽口にも、弱く笑んで返すしかできずに、軽トラの助手席に乗り込んだ。おまえまで、と続けられた内容には、ヌイの事を思い出し――息が詰まるようだった。話の先を促す様子に]
……仏さんとも、幽霊とも、言いません。
でも、きっと……同じような事です。
[相手の横顔を見ながら、沈痛に話し出す]
言っても、すぐには信じて貰えないでしょう。
僕だって……
こんな騒ぎになる前は、気のせいじゃないかと思ってました。
そうなら、いいと……
[一呼吸、置いて]
……声が、聞こえるんです。
突然、頭が割れるように痛くなって……
人のものとも思えない、声が。
消えた。気を付けろ。
そう、言うんです。
ンガムラさんの顔が頭に浮かんで……信じろ、って。
……ボタンさんの顔が頭に浮かんで、……疑え、って。
言って、くるんです。
何かが……
[そう訴えるように告げる声色は震えて。指先も震えていた。
尋常でない様子は、声だけでも伝わるだろう]
……ねえ。
こんな事言っても、僕がおかしくなったとしか……
思えない、ですよね。
でも、本当なんです。
消えた人達が、何かによって、消えたとしたら……
次に消えてしまうのは……僕かも、しれません。
[刹那だけまた覗く、鋭い視線]
だから……
伝えて、おきたかったんです。……
[語り終えると、下を向いた。ンガムラはその話にどんな反応をしたか。やがて家に着けば、辞儀をして、帰っていっただろう*]
あれ、なんでヌイっちとおキク?
[セイジに遅れ、駆け寄った軽トラックに乗っていた二人に瞬きひとつ。
送るから、という言葉には、んー、と悩むよな素振りを見せるものの、頷いて荷台に乗り込んだ。
たどり着いた人形店の前。
セイジの様子には、ほんの一瞬だけ目を細めたりしつつ。
夜食を受け取る中に先に呼びかけてきた男の姿を見かけたなら、自分たちが裏山で見つけたものの事を伝えた]
よっと、あんがとな、ヌイっち。
……セイちゃん、無理しないでちゃんと寝ろよー?
[自宅前に降ろされると、すこしだけ真面目な面持ちでこんな事を言って、荷台から飛び降りる。
それから、軽トラが見えなくなるまで、てるてるを振って。
振り返った、人の気配のない家に、ふ、と表情が失せる]
……てるてるぼーず、てるぼーず。
あーした天気にしておくれ、っと……。
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