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―眠りに落ちる寸前―
[ビセの悲鳴やバクの声が、フユキとゼンジの声をかき消す。
そして、死者の声は波の音に紛れる]
……胎動。
[この村で夜を明かした以降、ずっと耳鳴りのように響いていた音。
それが、とうに忘れ去った音に似ている気がした]
[神様を殺す、そう言われてようやく腑に落ちた。
窯神様を崇めるのは、この村の存在を知る者だけ。
崇める者が全て死に絶えたのなら、]
神は、死んだ―――…、とそうなるわけですか。
[後ずさったポルテに、眉を顰めて]
動かないで下さい。
窯には近寄らないようにと、言ったでしょう?
>>1
[フユキの声は聞こえなかった。
ただ、その表情だけが目にはいり、意識は途切れる。
間際に聞こえたのは、*爆ぜるような音*]
[ポルテとフユキが対峙する様子を少々の距離を置いて眺めていた。それ以上近付く事はなく、声をかける事もなく]
……終わる、のかなぁ。
もう少しで?
神なる狂気が……消える?
[呟く声に含まれるのは、問いの調子と愉悦の色。どちらも仄かなものではあったが。
小さい、欠伸をして]
[意識の落ちたポルテの躯を支える]
―――…ヂグさんは、摂りこまれましたか。
[オオカミとしての感覚が、ヒト一人が消えた事を告げた。
つまりは、]
このヒトが終われば、後はぜん兄だけですけど…。
起きている間と寝ている間、どちらが良いですか?
[尋ねる声は、他者に向けるものよりも温かみを帯びる]
[意識を失い崩れ落ちるポルテの身体。それがフユキに支えられるのを見、零される言葉に]
ヂグさんが。
……ああ、やっぱりもう終わるんだねー。
[淡々と、だがどこか感慨深げに言い]
どちらにするか? どうしようかなぁ。
どうせだから眠る前に、っていうのも良いかなぁ。
[温かみを含む問いには微かな笑みを浮かべる。声色に怯えはなく、ただ穏やかな雰囲気を纏い]
[抱えた腕から伝わる熱は、昨夜と変わらず焦燥を駆り立てる]
…、 ―――……っ
[露になった咽喉に牙を突き刺して、その血を啜る。
腕を爪で抑え、腹を食む姿は、飢えた獣の荒さ]
……ッは。
そう、もう……、終幕、なんです。
[声は、微かに震える]
[開いた口唇は、ポルテの命の朱に濡れ]
ぜん兄は…、 ……
[怖くないのか、尋ねかけて止める。
少し視線をさ迷わせ、微笑にも泣き顔にも似た表情を浮かべた]
どうしてぜん兄は…、そう、なんでしょうね。
[フユキに一歩一歩と歩み寄る。ポルテの血が少しく跳ねて襟の辺りに付いたか。一尺と少し離れた位置で足を止め、紅く染まるその姿を見据えた]
静かだねー。
[終幕という単語に、ぽつりと]
静かな終幕なんて、なんだからしすぎてらしくない気もするなぁ。
なんていうとあまり捻くれてるかな?
[視線の先、相手の唇は酷く紅く]
どうして? ……どうしてだと思う?
[問いに問いで返す。やや、間があり]
答えはねー。
わたしにもわからない、だよ。
[ふざけたようなその言葉からは、それが真実であるのかどうかは恐らく窺い切れず]
だから代わりに考えてくれると嬉しいかなぁ。
なんて、冗談だけどねー。
…静か、ですか?
ああ、そう…ですよね。でも、
[ポルテの躯を離す。
床に落ち、血の跳ねる反響音。
けれど、それが静まっても]
僕には、ぜん兄の鼓動が…この距離でも聞こえていますから……。
[その音に誘われるように、ふらふらと近付いて]
ぜん兄が捻くれているのなんて、それこそ20年以上前から知っていますよ。
[問いを問いではぐらかすのも、冗談めいた言葉遣いも、昔から知っていた。
その真似をし始めたのは、何時からだったか]
―――…冗談ならば、考える必要はなさそうですね。
[浮かべた穏やかな微笑。
確か、これも幼い頃に真似たもの]
[ポルテの身体が落とされるのを目で追った。静かな空間でよく響く、水面に雫が落ちるような音。鼓動が、と言われて胸元を軽く片手で押さえ]
心臓が動いているの……聞こえるかい?
わたしはこうしてようやく自分の鼓動を認識できるよ。
でも、フユキ君には聞こえているのかな。
[なんだか不思議だなぁ、などと、どこか楽しそうに。胸に当てた手をそっと下ろし]
なんだ、知ってたんだ。
[わざとらしく残念そうな表情を作ってみせ]
必要がないのは……
まー、そうなんだけど。
考えられないのもそれはそれで寂しいかなぁ。
[どうしようか、と悩むような素振りをしてから、相手の微笑に微笑を返した]
[ゼンジのすぐ傍らに立ち、直前まで彼自身の手が置かれていた場所に、朱に濡れた右手を添える。
爪を変じれば、間違いなく、この響きは止まるのだろう]
―――…色々と知ってはいますけれど。
幾ら真似ようとも未だに…、ぜん兄の本心は理解できませんね。
[一瞬の躊躇い。
真似を止めて、真剣な…少し苦しげな表情で見据える]
本当に、これで良いんですね?
[尋ねるのは、きっとこれが最後]
[添えられた右手を中心にして、薄い青色の着物にじわりと紅い色が滲む。
一たび、目を細め]
本心が理解できない、か。
わたしが芸術家ででもあったら、芸術は理解されないものだ、とでも言えたんだろうけど。
飴屋だとどう言い様もないなぁ。
[その口調は尚変わる事がなく。一瞬の間。程近い、曇ったような相手の表情を見つめ返し]
――いいよ。
[短い沈黙と同様、短い返事を口にして]
君がしたくないわけでないのなら、ね。
猫が煮干しの頭を食べ残すのに似てる。
[フユキに一部喰われ放られた自分の身体を、中空から眺める。
テレビを見ているかのように*他人事*]
―個室・皆が地下へ向かう頃―
[ベッドから上半身を起こす。
辺りを見回してから、こめかみに指を当て、苦笑。]
……寝すぎましたか。
ベッドで寝るのも、考え物ですねえ。
よいしょ、っと。
[部屋を出、廊下へ。]
―バクの寝る部屋―
此処でしたか。
[赤色のバクを一瞥し、部屋の竈へと向かう。
枝を組み、上着の内ポケットからマッチ箱を取り出した。]
[シュッ]
[竈が鳴いた。
その黒い息は、煙突の中へと吸い込まれていく。
一礼の後、バクへと振り返った。]
…おや。
今日はお世話、してくれなかったんですかねえ。
[丸まっていたフェイスタオルで、
バクの顔に残る赤を拭う。]
[バクの寝る部屋を出る。
そしてビセの居た部屋の前を、
何も無かったかのように、しかし少しだけ目を瞑って、
通り過ぎた。]
…よく、聞こえていますよ。
[何かを確かめるように、ぽつりと独り言。]
よく……
そうだよ。
[肯定にはどのような意味が込められていたか]
礼を言う必要なんてないよ。
全てはわたしがしたいと思ってした事、なんだから。
……そうだなぁ。
手紙で呼びつけられた時から予感はしていたんだ。
それでもこうしてきたのだし。
[ぽつりぽつりと、考えながらのようにゆっくり語る。少しだけ、間があって]
フユキ君は、窯神様が嫌いだと言ったねー。
……わたしも、嫌いだったんだよ。
かみさまも、儀式も、父さんも、みんな……
でも。
「人狼」だけは、嫌いじゃなかった。
[伝えたかったのか、ただなんとなく言葉が出ただけか。独り言のように零した。
おやすみなさい、というフユキの声が落ち]
……あ、
[一瞬、僅かに目を見開く。漏れる微かな声。貫かれる心臓]
……、
[口を何度か小さく開閉させるが、そこからは掠れたような空気の音しか漏れず。少し眉を下げてから、言葉の代わりとするように仄かな笑みを浮かべ]
……
[青に赤が広がるのと比例し、体から力が抜けていく。
瞳から光が失われる。
着物から飴が幾つか床に落ち]
―死者の世界―
捧げよ。
[煙突が黒い煙を吐く様子を見ながら、頬にかかる髪の毛を人差し指に絡めて弄ぶ]
お父さんは人狼だったのかな。
[自分の髪と瞳が、遺伝的にありえないと知ったのは高校生のとき。
父方は代々日本人の家系だった]
人狼の遺伝子は弱い?
[仮説を口にした唇は弧を描いた]
満月の夜に、窯神様にお願いしてごらん。
[そんなことを父が言っていたのはいつのことだったか。
願いごとを考える]
来世でも祈ろうか。
叶えてくれるのかな。
[煙の動きを目で追って、空の色の移り変わりを*目に焼き付ける*]
[最期の言葉になると分かっていた。
語られる全てを、受け止める覚悟で]
[それなのに]
[「人狼」だけは、嫌いじゃなかった。]
[胸に落ちた最期の言葉は、嬉しいもののはずで。
――…けれど、何処までも哀しい言葉だった]
[バラバラと床に落ちる飴の音も、仄かな笑みも。
聞こえていた。見えていた。
ただ、どうすべきかは分からなかった]
ぜん、に――… ……、
[名を呼ぶことが、許されているのかさえも。
分からなかった。
知りえたのは、欲しいと願う衝動で。
鼓動の途切れたその場所に、口を寄せ、紅を吸う。
それは、甘くはなくて。なぜだか少し、*塩辛かった*]
―未完成のまま著者の喪われた原稿―
[××年、×月。
人影の無い筈の山の中腹から、細い煙がたなびいた。
山火事の可能性に、近くの住民たちが様子を探りに行くと、それは13年前に失われた村から上がっていた]
[村の奥に進むと、其処には一軒の建物があり、その煙突が、煙の源だった。
その建物には幾つかの窯と、それに応じた数の煙突があり、ひとつひとつを彼らは探ったのだが、火の気のある窯はひとつも無かった。
その代わりに彼らが見つけたのは、幼い少年と学生らしい少女の無残な死体]
[火の元を探すうち、彼らの一人が気付いた。建物には地下があったようなのだ。
しかし、其処へと通じる階段は何かの衝撃に崩れたようで塞がっており、その奥へと進むことは叶わなかった]
[なんらかの事件の可能性から、警察は建物の地下の捜索を行おうとしたが、諸々の理由からそれは頓挫した。
代わりに、建物の1階部分に残されていた品をこと細かく調査することになった]
[多くのものの詳細は、此処では省く。大事なのは1点。
一つの鞄の中には、とある作家の手記があったという。
それも、あの二人分の死体に関する内容のものが。
しかもそれだけではなく、もう他に何人もこの建物内で死者が出たというのだ]
[いや、より正確には、このあと自分が何人も「死者を出す」だろう、というものだ]
[一見犯行声明のようにも見えるが、人狼というこの地方に伝わる迷信などのフィクシャルな部分も多く、警察は彼の創作用のメモだと判断したようで、この手記は現在重要視されていない。
だがそれを何故、大切だと言うのか]
[それは元この村の出身である人々が、如何にもこの件に関して口を閉ざすからだ。
それも事件についてではなく、この手記に関して。
先ほど述べた人狼についてはまだ語ってもらえるものの、当文の最初に述べた窯に関する点に話が及ぶと彼らは口を閉ざしたきりになってしまった]
[それが窯神、という彼らの崇めていた神に関するものらしいと語ってくれた者もいたが、今ではその情報提供者も行方不明となっている]
[その手記の内容を最後に、一度このレポートの詳細を区切り、次までには更なる内容を
―以下空白]
―付属のメモ用紙の内容―
オオカミは神殺しを行う。
古き神を忘れることで、オオカミからは逃れられる。
古き神の名を呼べば、オオカミの災厄が降る。
ヒトの躯を捨てたオオカミは、常に貴方の後ろに立っている。
忘れることを、忘れぬように。
[走り書きのメモはぐしゃぐしゃに握りつぶされ、その半分以上は、赤く紅い血で*汚れていた*]
[フユキが去り、その後警察やマスコミなどがこの村を騒がせたが、それもひと時のこと。今は再び無人の、廃墟の村の煉瓦の館で]
どうして?
[と、ずっと同じ言葉を口にしながら、窯の前にうずくまっている。言葉の意味も、何を問うているのかも、既にわからない。時間の感覚は、とうにない。ただ、この場所を彷徨っていた]
>>39
[うずくまる少年に近づいた。
体温も気配もなくした魂だけが、ふわりと佇む]
少年よ、大志を抱け。
[的外れなことを言いながら、くすくす笑って見下ろしていた]
……ふふ。暖かいよ、窯神様。ふふふ、ふふふ。
[窯の中に取り込まれた女性の楽しそうな嗤い声が響きます。]
手紙、書けばいいの?
うん。みんな一緒なら、楽しいよね。
村、もう一度、復興できたら。今度はカレー、食べられるかな?
[村から少し離れ、打ち捨てられた廃墟の中。
今日も女性の眸は狂気の光を、窯は鈍色の影を放っています。]
もう、誰も来ないのかな?
[いつまでここにいれば救われるのか。この時間に終わりはあるのか。一体誰が終わらせてくれるのか]
カミサマ?
[呟くと、目を閉じた。いつか訪れる、その時を待つために]
[波のようなノイズは消えた。
入れ違いに現れたのは、浮遊感]
泳ぎは苦手なんだけどな。
[身体の行方と、独りにしてしまった母のことを考えるが、不思議と悲しくはなかった]
[煉瓦の家の廊下、其処に並ぶ部屋への扉を一つ一つ、確かめて歩く。]
[コツ][コツ]
ビセさんは…元気そうですね。
カレーは辛口、でしたっけ?
ふふっ。
[静かだった空間が、ひっそりと動き始める]
また、何かが始まるのかな。
[少しずつ膨らんでいく『予感』に心が躍った。例えばそれが、新たなる悲劇の始まりだとしても]
もう、飽きたもんね。
[終わりが来るのをただ待つことをやめて、立ち上がった]
えっ?身代わり見つけたら、出られるの?
……ううん。あたし、ここがいい。暖かいから。ここなら熊にも狼にも、襲われないから。あの子たちも、近くにいるから。
ね、窯の中も外も、人でいっぱいにしよう。そうすれば、寂しくないよ。もう、誰も窯神様を見捨てたりしない。
だから……ね。
[窯の内壁にそっと身を寄せ、真っ黒に焦げた体の中、唯一真っ赤な口を、にいっと三日月の形に歪めます。]
窯神様、窯神様。
[満月はないけれど、願い事を唱える]
――目覚めを下さい。
[窯の先、煙突の先、立ち上り散る行く末に、新しい世界がありますようにと。
暗く細い闇は、産道を思い出させた。記憶になどないはずなのに]
[目を閉じると、何かが爆ぜる音**]
[シュッ]
[指先で小さな炎が揺らめく。
燃え広がろうと、揺らめく。]
窯神様は、何時でも此処に居るんですが、ねえ。
[炎の伸びる先、空を*見上げた*。]
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