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[会話の途中、一度ちらと端末に目を遣った。
その示す時計──集合時間を、少し気にする。
クルミとソラはどうしているだろうかと、思った。
2人が共に動いていることは、知らないまま。]
なあ。
さっきの答え、聞かせて貰えないか?
───少し離れても構わない。
[人数が多いかと、一応気にもしてみた。]
…うん、そうか。ありがとう。
なあ。
俺は確かに腕はあまり大したことがない。
だから利害だけで言えば、お前はこの話を聞かないだろう。
でも利害あるやつは、利害でまた裏切る。
利害でどっちにでもつくんじゃないかとも思う。
だから、お前の答えを聞いて考えた。
鬼役とかそれ以外とかじゃなく。
ただ、個人としての信頼関係が欲しい。
[探しに来たわけじゃない。
そういう彼に、真正面から心を告げた。そして、]
取りあえず、腹が減ってここに来たんだろ?
何がいいか分からないなら……
[くるりと8thに背を向ける。
4thにも9thにも、ひどく無防備な姿勢になっただろうが]
──…ここら辺でどうだ?
[適当に棚を漁って、
バランス栄養食とやら書かれたクッキーを、
ぽいぽいと彼らへ放った。デンゴにも放る。
味は試してないが、きっとそう悪くないだろう。]
明るくなったら、上にも行ってみるといい。
丸い食べ物の味は悪くない。
[大真面目にたこ焼きを勧めておく。そして、]
情報も交流のうちだろ?
…信頼するなら、まずは交流しておかないとな。
[振り返って、8thに向け*笑った*]
[それから、ペットボトルを漁って水分補給も行いつつ、
何となく和やかな様子のデンゴなどを振り返るが、]
お前、さっき何をしようとしたんだ?
[先の会話を思い出し、ちらと軽い疑いの目を向けたりもした。
そして、]
───なあ、セイジ。
[8thとの別れ際に声を投げる。]
さっきは話してくれて嬉しかった。
ありがとう。
さっきの言葉、俺は本気だ。
だから、何かあったら思い出してくれ。
そうそう、あと──…
[なんでもないように付け足す。]
俺は3rdと11thと会っている。
ふたりともいい奴らだったぜ。
多分気が合うから、一応伝えておく。
[そこまで告げて、彼と別れた。
ひとまず目指すのは2Fの婦人服売り場。
約束の待ち合わせ場所を目指す*つもりで*]
─ 2F 婦人服売り場 ─
[辿りついたそこは、昼間と違って静かに暗い。
そこで日記を確認した。]
”クルミとソラが来ていない”
来てないのは、分かったけどなあ。
二人は一緒なのか無事なのか、どうなんだ?
”2ndは12thと合流した”
”2ndは5Fでうどんを食べている”
”2ndは屋上へ向かう”
”2ndは12thと一緒に0thを見守っている”
ん?これは…。
平気そうかな。戦っている風でも、ないか。
[日記にぼやき、その記述に少し唸る。]
”階段に足音が響く”
”階段からクルミが駆け下りてくる”
なに…、
[階段から足音が響くより前。
日記の記述に目を見開いた。
咄嗟に殺虫スプレーを握り締め、階段へと駆ける。
結局、階段より手前でクルミが駆けて来るのに出会った。]
… クルミ、大丈夫か!!
[追われているのかと、咄嗟に思う。
だから彼女の背後を警戒した。
良く見えない薄闇の向こうを睨みつけ、庇うように動こうとする。]
え…っ、
[駆けてくるクルミと入れ違うように前に出ようとして、
服の裾を引っ張られた。
彼女が息を整えるのを待つ少しの間、
確かに追っ手の殺気が襲い来ることはない。
少し安堵して、肩の力を抜いた。]
無事で良かった。
二人ともいないから心配して…、
……なに?
[死。という単語に、目を見開く。]
死んでって…なに?殺されたのか?
誰に、どうやって…
屋上で?
[咄嗟に幾つもの疑問が零れ落ちる。
階段の上を見た。鼓動が早くなる。]
血が?そうか……
[右手首の端末が振動を伝える。
”0thが死んだ”
遅れて届いた情報が書き加えられた。
それを見下ろし、首を横に振る。]
いや、ありがとう。
気にはなるけど…、それよりクルミ。
君は大丈夫か?
[血が出ていた。と言った。
駆け下りてきた時の様子からしても、
やはり彼女は、こうしたことには慣れていないのだろう。
───自分と同じく。]
落ち着いたほうが、いいんじゃないかと思って。
[すぐに屋上へ向かうことはせず、傍らを見た。
未だ薄暗い中、クルミの顔色ははっきりとは見えないけれども]
いや。しっかりしているみたいで、安心した。
人が死んでりゃ、それはまあ…
驚くのは当然、だし。
[自らの常識を口にして、クルミの伝える言葉を聞く。
うん。と頷いて、自らも日記を確認した。]
じゃあ、その場に居たのはクルミとソラと、
12thと2ndと……
[彼女が知らなかった2ndの情報を付け加える。
思いついて、手にしていた水のペットボトルをクルミに差し出した]
飲む?
いいんじゃないか?それで。
まじまじと見たいものでもないしさ。
いや……、どういたしまして。
[返されるペットボトルを受け取る間。
時折挟まる沈黙が、纏まらない思考にありがたい。
言葉遣いが自然と解れていく。日常を、思い出した。]
2ndと話を?
[意外な話に瞬いた。
それから少し眉根を寄せる。]
……。…クルミは強いな。
[真っ直ぐに見上げてくる視線に、多分少し顔が歪んだ。
少しクルミの瞳から視線を下に逸らす。]
世界を壊す?人を殺して?
…いいわけがないさ。
知ってても知らなくても、いいわけがない。
でもやらなくちゃいけない。
俺は死ぬ気も、自分の世界も壊される気がない。
なら……、
[言葉を切り、視線を上げた。
再びクルミの目を見返す。]
俺は気楽でいたい。
自分の為に仕方なかったんだと思っていたい…んだと、思う。
俺に選ぶ権利なんてないのは、分かりきっているのに。
……だから、こそ。
[苦しげに一度、顔が歪む。結局は目を、逸らした。]
……うん。俺も後悔はしたくない。
俺が守れるのは自分の世界だけで、
でも助けられる世界ならば、きっと他にも……
……って!?
[細い指が伸びてきて、頬を抓られた。
慌ててクルミを見返して、その表情に眉を下げる。
悲しんでるのだか笑ってるのか、分からない表情になった。]
俺、多分、クルミの世界にも壊れて欲しくないよ。
…クルミ、ちょっと。
[右手を示してみせる。
袖を捲ってモニターを確認すれば、日記が更新されていた。]
”*分後、2Fフロアで10thと出会う”
10thがこっちに来ているみたいだ。
気をつけて。
[彼女が既に10thと面識あることは知らず、
声を掛けて辺りを見回した。]
ああ。そうだな。
ソラは強いし。
[きっと一緒にいれば大丈夫だろう。
細い指先が頬を離れていく。
ほんの僅かな温もりが、今は何だか随分と大切に思えた。]
[10thが現れる。
その姿に、クルミと少し離れて立つ。
男の長身に目を眇めて、彼女を庇う位置を占めた。]
逢引中と思うなら、遠慮すれば良かったんじゃないか?10th。
…はじめまして。1stだ。
[名乗らなかったのは何のことはない。
向こうが名乗ってこなかったからだ。]
ここに、用があったとは思わないけど。
[ぐるりと示したのは婦人服売り場。
彼が物を調達しに来たとは思えない。
つまりは、彼はわざわざここに会いに来たのだろう。]
生憎だが、障害じゃなくただのお邪魔虫だ。
[軽口を叩き返して相手の様子を見る。
が、続く言葉には意外とばかり僅かに目を見開いた。]
俺と話が……?
……。…、分かった。
[少し躊躇い頷いたのは、彼の声が静かだったからだ。]
いえ、どういたしまして。
[礼と共に頭を下げられれば、反射的に礼を返す。
歩き出す前にクルミを振り返り、安心させるようまた小さく頷いた。
そのまま、10thのあとに従って歩く。
自分より幾分大きく見える背丈に、
体つきはコートのうちに隠れて見えはしない。
けれど、手にしたポールは飾りではないだろう。
そう思わせる、慣れが感じられた。]
…話というのは?
[足が止まれば、距離を保ったまま話を促す。
番号で呼び合うのが滑稽なほど、丁寧な対面になった。]
…かも知れないな。
そもそも、0thがどれほど動いていたかも知らないけど。
行動を把握されないという点では有利。
───そのように注目を浴びる点では不利。
ってとこかな。
[返し、何を考えているのかと10thへ目を向ける。]
別に女だからって選んだわけじゃない。
ただの偶然だ。
そういう風じゃないのは、見れば分かるだろ。
[最後、余計なことまで言って肩を竦めた。]
チート日記、か。そうだな。
[クルミの言いようを思い出す。
黙って、男の手指が白くなるまでポールを握るのを見た。
それを見る目に浮かぶ表情は僅かに苦く、後悔に近い。]
……。それでもやるしかないんだろう。
出来るかなんて、分からなくても、
…これが博奕なのかな。
[零した言葉は、目前の男への問いというには弱い。]
……。
俺の名前は、誰に聞いた?
クルミでも聞いたのか?10th。
あなたが誰を守ろうとしているのか、俺は知らない。
聞きたいとも、思っていない。
…さっきあなたは言っただろう。
頼みを聞くことは、結局、その先の世界も背負うことだ。
俺には、そんなことは出来はしない。
───すまない。
─ 2F紳士服売り場:少し前 ─
名前は誰でも知っている……?
、ああ。
[首を傾げられて記憶を辿る。
そういえば、聞いた気がした。
それを記録していなかったのは、ミスといえばミスだろう。
柱の順序と顔を一致させることに気をとられ、
結局、日記所有者の名前はろくに覚えていなかった。]
そうか、だからか。
[納得して頷いた。
それでも強いて名を知りたいとは、今もやはり思っていない。
多分それは、10thがこちらの名を呼ぶのを躊躇ったと同じ理由。]
命を賭けて…、は、どうかな。
俺が死んで、仲間が残ればいいとは思っていない。
俺も残って、仲間も残るのが大前提だ。
……?ひょっとして、あなたは違うのか。
[可能性に思い至り、疑問を口にするのだが、]
…人数は、
[返さなかったこたえを、10thの駆け去った背に低く呟く。
先にクルミと言葉を交わした時のような顔になった。
視線が下がり、眉根が寄せられる。]
…──決められているんだ。
[最初から。とまでは音にしなかった。
ひどく、自分が汚いものになったような気がした*]
2ndと会話をしてみる…、か。
[どこに行くとも思い定めず、歩き始める。
脳裏には、先のクルミの言葉があった。
会ってどうなるだろう。やはり後悔しないか。
迷うまま日記を確認すると、2ndの動きが追加されていた。]
”2ndは4Fで、4th、5th、6thと会談する”…?
[足を止め、その内容に顔を顰める。
クルミに知らせようか。
そうまで思ってから、彼女も知れるのだと気がついた。]
[階段を登ると、右手首の端末が振動した。
日記を見下ろす表情が、僅かに困惑の色を帯びる。]
”キャンプ用品売り場で、懐中電灯を入手”
”3Fフロア廊下で2ndと遭遇する”
[少し考え、それでも歩を進める。
懐中電灯の類は、手に入れる必要がありそうだった。]
[懐中電灯を無事手にして、廊下へと出る。
そして辺りを見渡した。]
…、やあ。2nd。
[初めて、もっとも近くにいた彼女と対面した。]
別に不思議なことじゃない。
機会がなかった、それだけの話だ。
一々大所帯に顔を突っ込むつもりもなかったしな。
[既に先の動きを把握していることを、言葉で示す。
確かに2ndを探しに行ったことはない。
避けたこともないのはまた、事実であるが。]
…、別に。避けるまでもないと思っただけだ。
2ndは、俺に会いたいと思っていたのか?
[軽い問いには首を横に振り、逆に問い返す。]
3rdと?
ああ…、そうか。そうだな。
そっちは12thと動いていたんだったか。
俺の方も、なかなか手が空かなくてさ。
[軽い口調で、ひょいと肩を上げて返す。
挟まれたのはこちらも同じ。
そして12thの行動は11thに見えている。
何とも意地悪く良く出来たシステムだと、内心に思う。]
信用?それは…、会話だとか。
2ndはそんな風に、人を見ることはしないか?
[相談の内容を口にすることはしない。
ただ、あのメモの内容までは伝わってないらしきを心に留めた。]
未来を変えるために?
そうだったのか。それは…残念だったな。
[0thは死んでしまった。
それを止める為と言われれば、流石に神妙な顔になる。]
…。あの場で騙まし討ちはしない。
俺は3rdと11thと、そういう話をした。
確かにあの場でなら、容易に3rdを日記ごと消せただろう。
けれど、その先は?
俺がそんな真似をすると分かったら、
危険人物として真っ先に排除されるんじゃないのか。
11thや、他の誰かに。
そうかも知れないな。
このルールとやらは、時折ひどく掴み難い。
[2ndのため息には同意を告げた。]
……、なあ。
[立ち去る背に声を投げる。
振り返らずとも良いほどの軽さで]
君は、これから殺すかも知れない相手のことを知りたいか?
知って、殺して生き延びて───
…──”神”になる心地はどんなものなんだろう。
[口にするのは、どこか苦味を帯びた表情。
少し、視線を斜めに落として、]
[マシロとの会談を終えれば、ひとつ、大きな欠伸が落ちる。
そういえば昨日は寝ていない。
乾いた目を押さえて、エスカレーターへと向かった。]
一応、どうなっているかくらい…、
[屋上へと向かってみる。
途中、やはり大きな欠伸が*零れた*]
…ああ。戦うために、君は知るのか。
[各々の理由。
クルミとはまた違う2ndの答えに、僅か目を見開く。]
……。もう、会わないといいな。
[逃げていればいいと、それには何も返さない。
ただ少し前の彼女の言葉に同意のような言葉を返し、立ち去る背を*見送った*]
[屋上へ向かおうとした、その動きは少し遅かったらしい。
右手首の端末が振動し、再び日記が更新される。]
”2ndは屋上で、3rd、4th、9th、10th、11th、12thと遭遇”
”2ndは、3rdが11thに抱えられているのを目撃した”
”2ndは5Fへ移動した”
肝心なところが……!
[苛立って足を踏み出すと同時、日記が更新される。]
”屋上へ辿りつく。誰とも遭遇はしない”
…、このまま行っても居るのは0thだけ、か。
[正確にはその死体だ。
確認しようか少し迷った後に、首を振る。
先のソラとクルミの記述が気に掛かっていた。]
どう探す…、そうか。
[エスカレーターで5Fに向かい、
2人を探すつもりで順に足を踏み出す。
すぐさま日記は更新された。]
”5Fを探索。ソラとクルミは居ない”
…よし。
[この要領で、二人を探し始める。]
”4Fを探索。ソラとクルミは居ない”
”3Fを探索。ソラとクルミは居ない”
”2Fを探索。ソラとクルミと集合場所で出会う”
[日記を一々チェックし、更新される未来を頼りに歩く。
こうした使い方が出来るのだと、初めて思った。]
─2F婦人服売り場─
───ソラ、クルミ。
[既に彼女たちの未来日記も更新されているだろう。
集合場所とした婦人服売り場で、二人の名を呼ぶ。
ひとまず無事な二人の様子に、ほっと息を落とした。
他人の日記越しでは、なんとももどかしい。
足早に近づく。
次第にソラの怪我が見えてきた。足が早まる。]
な……っ、襲われたのか?誰に、
[咄嗟に頭の怪我に手を伸ばしかけ、
痛むだろうかとすんでで止めた。]
ああ。俺の方は大丈夫。
あれから10thとも2ndとも会ったけど、
会話をして終わったし……お?
[手が解けた。と思えば、
サンドイッチがぐいと押し付けられた。
何だか、小さいのから恨まれた気がする。
が、ソラのお勧めに従って遠慮なくカツサンドを口にした。]
……あ、美味いな。これ。
[寝不足で喉の奥が、ツンとしている。
少し沁みる気もしたけれど、それを上回る味だった。
思えば、腹も空いていたのだ。]
ぐ……っ
[これはデンゴの視線を無視した罰か。
いや。などと自問自答しながら、振り返る。
何だか平和そうな声の男だった。]
───5th、か。
[サンドの塊を飲み下して、口を開く。]
足止めだと?
…──何のためだ。
クルミ、誰かに襲われたか?
10thは俺たちが組んでいることを知っていた。
ならばソラを足止めして、個別に襲うつもりだったか。
[けれど口にしながら違和感がある。
自分には何もなかった。
ならばとクルミを見遣るのだが]
…。怪我、してて。勝てるわけないだろう。
[悔しげなソラへと声を掛けて、]
10thは2ndか4thを守りたい───…?
[クルミの言葉に、目を思わず大きく見開く。
困惑したような顔で、少し考え込んだ。]
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