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[投票箱に、紙が入れられていく。
その中に書かれた名前が開かれる]
処刑するの、ですよね。
わたくしたちを殺す為に――
[多数の票が集まったものを。]
死なせない
――…って、言ったでしょう。
[彼はゆるく笑って答える。
イェンニの願いに対応するものではないが]
それに、それなら、
僕が選ばれたら、殺してくれる?
――なんてね。
[最後は少し、からかうように笑って**]
おぬしらを疑うものはまだおらんだろうて……
[小さく笑う。
夜になれば、また腹が減る。
食べようかと考えたのはウルスラだが――]
イェンニは、どうする?
[静かに、問いかけた]
こうして、投票が成されるのならば
人だと言われた人から…と、わたくしは思います。
もしまだ、ヴァルテリ様やレイヨさんが
見極める者だ、とおっしゃらるるのであれば
他の見極める者は被害にあわせては
疑われるかな…などと考えておりました。
[勿論、そのつもりが無いならば
見極める力持つものから―――とは思うものの]
とは、いいわけで…
実の所。
先程の怪我の治療から。
マティアス様の血の匂いが
頭から離れないのですわ。
[喉を手指が滑り降りる
恍惚の表情―――喉の乾きを癒したい]
…レイヨさん、が選ばれたら、
きっと…
手にかけようとするひとを。
喰い殺してしまいますわ。
[狂うた人と言われるだろう彼への返答は
ひどく、沈んだ声となった]
― 夜 ―
[いいわけだと、そう紡ぐ若い狼の声に小さく笑う]
ああ……たしかに。
あの血の匂いは、な……
[その気持ちは分からなくもなく。
ゆるりと頷いて]
ならば、食べてしまおうか。
[怪我が酷いマティアスを。
人だといわれた者を]
―夜―
ええ、ヴァルテリ様。
食べて、力に致しましょう。
ここから、にげる為の。
[告げて、輪郭を揺らがせた。
少しコツが掴めてきた。
血が着いても平気なように衣服を脱いでから
髪と同じ桔梗色の毛並みの狼の姿へと変じる]
[そして、狼の姿での力の加減が分からず。
扉を派手に壊してしまった。
桔梗色の毛並みが、トビラの破片とともに散らばるけれど
空腹に苛まれた若い狼は、気付かない―――]
― 夜 ―
そうそう、食べねばならぬ。
[逃げるためにも。
ゆらり、と姿を変じて。
灰色の狼が桔梗色のあとにつづく。
毛がおちたことには気づかぬまま、破壊された扉の間から控え室へと入り。
イェンニの食事の合間、怪我した男に食いついた]
……獣に食われるなら、先に食われていれば、よかったのにの。
[村の周囲の獣におそわれたのだろう。
傷跡に牙をつきたてて、血肉を食らった]
[深夜の食事を終えたあと]
……さて、見つからぬうちに戻るとするか……
[ついた血を舐め取るように毛並みを整えて。
イェンニを促して現場を離れる。
レイヨがおきているのなら、無理はしないようにと伝えて。
一度部屋に戻り]
― 早朝 ―
[アイノの血を舐める。
若い娘の血はあまく感じられる。
こんな無粋なナイフではなく、牙で引き裂きたかったが――]
さすがに、こんなじかんでは、の。
[狼になるにはもう夜が明ける。
なによりマティアスを食べたあとであるから、それほど飢えてもおらず。
ただ、もったいない、と深い吐息を零し]
アイノが、選ばれたぞ。
[そう、伝える声だけを届けた**]
―夜―
そんなことしたらバレちゃう。
僕は君に生きててほしいのに。
――だから駄目だ。
[イェンニの言葉に、小さく笑って、静止の言葉。
そしてヴァルテリの言葉を聞いて、たしかにね、と笑う]
そっちもまだ、疑われたりなんてしてないだろう。
僕らは今日は、誰も投票されないよ。
[二人の狼が狩りの時、彼はマティアスなら、と、見張りを申し出ることはなかった]
あの人、下だし。
でも、一応、外の音には気をつけておくね。
僕より、二人の方が優れていると思うけど。
[ドアのそばですわり、二人の声を聞く。
あえて口を挟むこともなく、そして、終わった時にはそっと一言、伝えた]
お疲れさま。
――ん、ありがとう。僕は休む。
おやすみ。
[ヴァルテリの言葉に、柔らかい言葉を返した]
[朝、起きる時間。
ヴァルテリの言葉を聴いて、そっと目を伏せた。
その感情までは、声には乗らない]
そう、アイノが。
それじゃあ、手が少なくなったね。
投票の時に苦労しそうだけど――仕方ないね。
君たちに、誰も投票しなければ、良いのにな。
[だってその方が面白い。
そんな言葉も伝えない**]
…ん、
[食事を終えて部屋に戻り。
ひとの姿を取り戻してから見下ろすと
肩口から腕にかけて青痣が出来ていた]
あら…
いやですわ…
[扉を壊した時にできたものだろう。
たいして気にもせず眠ったが、
慣れぬ変異に身体はまだついていかず
きしりきしりと軋みをあげていた]
[早朝の声の時は、眠っていたから。
問いのかたちは、他が聞けば
マティアスを殺した人物が
誰か、知っているからこそのものだが―――
血の匂いに気が緩んでいた]
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