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―数刻前 / プレーチェの部屋―
[兄に見守られて部屋の中へ入り。
疲れた体が倒れこむのは飛び出してきたその時のままではあるが、それでもふかふかの柔らかなベッド]
……くらくら、する。
いろんなこといっぱいありすぎたから…かな……
こういうときこそ、落ち着くのしなくちゃダメ。
ひつじくん。
[ひつじくんをぎゅっと抱きしめる。
視線の先には机と、その上に置いてある小さなアニマルフィギュアの小さなひつじ。]
そうだ、小さなひつじくん。
ねえ、ひつじくん。小さなひつじくんはね、ひつじくんのきょうだい。
妹だよ。日本語きちんとなおす、小さなひつじちゃん?
ひつじくんの妹は、お兄ちゃんの傍にいてもらうの。
おそろいで、一緒。
お名前つけて、お兄ちゃんにあげる。元気になるといいな。
よいしょ……
足のかんじ、変……どうしたんだろう。痛いのは、ない……ですけど。
そうだ、べたべたはあとで洗わなくちゃいけないです。約束。
[ベッドから起き上がり机に向かうふらつく足取りはひどい疲れ故のものか。それとも……]
[椅子に腰掛けて。
ひつじくんは小さなひつじと並んで机の上に。]
ねえ、ひつじくん。
変なこと。
お兄ちゃんに聞かれた。変なことはなかったか。
心当たり。
プレーチェはね。何かわからないけど、「知らないということ」を「知っている」です。
パパとママ、プレーチェに隠し事。昔からずっと。プレーチェだけが何か知らないってわかる。
何を隠してるかはどうやってもわかりませんです。なぜを、教えてもらおうとしてもいつの間にか話、そらされる。
プレーチェはプレーチェなりにがんばる、勉強頑張って日本来た。
やっと会える思ったのに、日本に来ても見つけることができなかったは、ちょっと変。それはわかる。
[瞳の中の幽かな揺らぎは疎外感からくる感情か。ひつじくんの頭を優しくなでる。]
……おまもり。
[小さなひつじの頭にふれて。優しくなでて]
お兄ちゃんと一緒にいられますように。
離れ離れはいやです。やっと会えた。
プレーチェがお兄ちゃんの傍にいれない時は、
小さなひつじちゃんが、お兄ちゃんを守るです。
守ってください。
そうです、お名前を分けてあげるです。
そしたら大学とお仕事で会えない時だって、いつだっていっしょ。プレーチェといつもいっしょ。
[小さなひつじの名前を綴った、兄に宛てるメッセージカードには想いを込めて。]
……ここでの事は、「わからないこと」と関係があるですか?
お兄ちゃんがどく…さつ…されちゃうのは嫌です。
お兄ちゃんだけじゃない。レンくんもズイハラさんもポルテさんも、みんな無事がいい。誰も狙われないで、誰も犯人じゃないがいい。
みんな元気ない。プレーチェが元気にする。お兄ちゃんだけじゃなくてみんなを元気にする。大変なときだからこそ。明日になったらお歌を歌ってはげますです。
最初は、お兄ちゃんにプレゼント。
プレゼント。リボン。
バックにいいのがあるといい。
――――きゃ!
[ひつじくんを抱いて椅子から立上がり、歩こうとするがその足は思うように動かない。
辛うじて床との衝突を避けてベットに倒れ込めたようだ。
しかし、白い何かが付いたその足は既に何の感覚も―――先刻のガラス傷の痛みすらも、何もない]
あれ、あれ?言うこと、きかないです……?いたくも……何も、痛いのが、ない……?
おかしいです、なんですか、これは?
ひっ……!
[動き、足に纏わりつく白い何か。足が沢山ある何か。]
たす、けて……たすけてお兄ちゃん!
変なの、動いてる、で、す……
[ひつじくんを強く強く抱きしめる。兄に縋る様に。
感覚のない足は蜘蛛が噛み付く痛みすら伝えない。
足に纏わりつくその白い蜘蛛を、蜘蛛とは知覚できない程に既に意識は朦朧としていて]
『お兄ちゃん』
[声に出したはずの言葉が、空気を震わせなかった事だけを辛うじて知覚して―――]
………
あ。お仕事の、かおり―――
[時が経ったのかも、経っていないのかもわからない。
意識は既に体から離れているのか。それともまだそこにあるのか。自分は何処に在るのか。
蜘蛛が持つ蜘蛛の主の香りであるのかも、ほんとうにそこにその主が「いる」のかもわからない。けれど。]
―――お兄ちゃん、たすけに来てくれたですか?
プレーチェのこと、守ってくれるですか。
[手を、ぎゅっと握る]
嬉しい――……
[――確かに甘く優しい香りがしたような*気がした*]
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