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ヴィルコラク――か。いい名だね。
新年早々イェンニが編集長ってのは幸先良さそうだ。
細かい仕事に頭悩ませずに済むって意味でもね。
[ほっとした態で椅子を軋ませ、地図を巡る談義に暫し聞き入って]
…ヴェルフェルミとイレアナの話か。
嘆きのイレアナ…なんて言われても、キナ臭い話は幾つかあってね。
イレアナは敵国だか敵軍だかの将と密かに通じてた、なーんて話。
絆されて不利な情報でも流したか、それともイレアナに思惑があったのかは知らない。
で………そこを、国王の密偵が嗅ぎ付けて追い詰めた。情報戦に長けている位だ、お手の物だったろうよ。
第三王子のマッテオが何をどれ程知っていたかは分からないが、そこらの事情によっちゃあ国王自ら手にかけたとしても不思議じゃあないと思うな。ミカの言う、謀殺説の亜種説になるかな。
イレアナは死亡とされているけど、生き残ったなんて説も………ほら、これ。
[鞄を開け分厚い美術本を取り出すと、一枚の絵画を示した。]
………“荊の乙女”。
それは美しい庭園を備えた屋敷に、近郊で起きた戦の最中、密かに隠れ住む女性が居た、とか。
その美貌、気品は王族の血縁かとも言われたが何を語ることもなく、戦の風が去ると共に何時の間にか姿を消してしまったらしい。後世の研究によれば、彼女はイレアナの肖像にそっくりだったらしいよ。
ストーカー王の居城から少し離れた地方で見付かったものなんだがね。
地形といい、風景といい……この辺りだったら面白いと思わないかい?
案外シュテルや、その周りの臣下が関わっていたりして。
ま、一般的に伝わっているのは「死亡」って話だから、これは俗説だけど。
何時の時代も暗躍するのは女性だったりするから、俺は結構アリだと思ってるんだ。
王に関してもさ。
ストーカー王なんて汚名が付いてしまっているが、裏を返して見れば賢王ともなり得たわけで。
歴史を紡ぐのは何時も後の世の人々だから、事実として伝わっていることを裏ッ返したり斜めから見たりするのも、面白いと思うな。
[と、斜めから見てばかりの男はぱたりと本を閉じた。]
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