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[浅く肉を潜る斬撃とすれ違いざま、
頭巾から覗く耳へ噛み付いて前へ引き千切る。
口唇の端へ爪を引っ掛け、鋭く視界を揺らす。
(…痛い?)
交わす視線、細める目元が違わず問うている。
復讐の刃が、爛れた胸板を捉える寸前も――]
が、はッ… !! !
[みしり、喰い込む刃が内壁を凹ませて
軽業師の身体が砂上へ叩きつけられる。]
――――〜〜ッ、…
[ヒュ、と喉笛が鳴る。
連続して長く、短く。]
[軽業師の男の意識が白く遠くなる。
サンテリが突きたてようとする刃。
断続的に、…喉笛。吹子の鳴く音。
銜は外れるのに、黒い煤煙は湧かず。]
[双方の記憶は今はここで途絶えている。
…白い。吐き出された塊と、*陽炎が*]
― 挿話・放浪する復讐者との舞踏 了 ―
― 庭園の在ったビル・低階層 ―
[床材が幾重にも抜けた吹き抜けの底。
煉瓦が混じる瓦礫の上で目を覚ました
ベルンハードを見下ろし立っている。
誰何への応えは、喘息めく息遣いの下。]
…ここの住人だよ
「引揚げ屋」をやってる
[相手の心底には頓着しない様子で、
空見える吹き抜けを見上げてみせる。]
塒が壊されたんで、困ってるところ
…気に入ってたんだけどな
ここは
[顔の向きはそのままに、少年を見遣る。
緩く詰るざらついた声音は当時のまま。]
ごめんなさいの一言くらい
――聞きたいじゃない?
[壊れゆく世界の端は、何処にあるか知らず]
[夜盗よけのバリケードが築かれたアリーナ
瓦礫の裡に歪んだ鉄扉閉ざす地下駐車場跡
乱雑に積まれた廃コンテナのうちのどれか
囁かれる噂、突き合わせられる額、目配せ。
ざわめきを感じ取る頃合より――時は戻る。]
― 回想・砂塵の街 ―
[砂塵に足元取られる、静寂の廃墟。
岩塊に凭れ、漸うに立つ軽業師の姿。
深呼吸。サンテリの剣を疵ある胸に受け、
深くひしゃげていた気管が僅かだけ戻る。
ヒュウヒュウと吹子(ふいご)になっていた
呼気の荒さも苦しさも次第治まっていく。]
は、ッ…
[完全燃焼状態を脱した体内の「炉」が、
また僅かに燻り始め溜息が煤煙となる。]
[熱源に寄生するいきものは、
ぐしゃりと前髪を掴み俯く。
隙間から覗く硝子玉の如き瞳。
来る何者かへ向けられる視線。
――軽業師は未だ陽炎を纏い、
見るものの視界裡へ*揺らぐ*。]
―庭園の在ったビル―
…
[ベルンハードが変化を解く合間に、男は
帽子を脱ぎ手の中へざらとコークスを出す。]
オトコのくせに言い訳すんな
[ひとつを口の中へ放り込む。
無造作に、少年の口の中へも。]
…マティウスと?
いつから石炭喰いになった、あいつ
[臭いに関してはぴんとこぬふうで首を傾げた]
…いいや、ちがう
[空気は乾いているが、気温の上がるビル内。
肉付きのよい少年ならば或いは汗ばむほどに]
「にいさまのともだち」は
――覚えてないかい、ベルンハード
[抜いていなければ少年の足へ刺さった儘の
翼人の矢を――踏みつけようと片足を出した。]
― 回想・砂塵の街 ―
[摩天楼の残骸、ぶらさがる看板の上より。
殺戮の祭壇眺めるビル、隣り合う建物より。
訪れた人影は『カレワラ』の――]
ホモ・サピエンスじゃないね
[軽業師は、己の腹から生えている様相の、
サンテリの片手剣を握る。
手に取れば刀身は、突いた勢いのままに
溶け曲ってしまっていて]
…そこを騙るのは流石に無理がある
[放り投げはせず、其れを眺めながら言う。]
― 庭園の在ったビル ―
[己の纏うクレオソート臭ゆえに嗅覚は鈍い。
訪れたマティウスに気づくならその足音か。
今はコークスを咀嚼する少年の態に苦笑する。]
友達。
…趣味が合った
[少年のにいさま観を揺るがしそうな発言。]
[苦いコークスは、それでも彼の出血を和らげ
刺さったままの矢は傷口に癒着して――――
尖った靴の底で踏み躙れば、斯くの如し。]
[絶叫にぱらぱらと落ちかかる瓦礫。
ひとつ帽子の尾を打ち振って――]
訊ねなくても、
教えてくれるコは…いいコ
[ゴ、と矢尻が床へ抜けるまで、深く]
― 回想・砂塵の街 ―
[軽業師が曲がった刀身を口元へ持って行き、
静かに咥えるとその部分から
赤くなり――白くなり――どろり 溶ける。
溶けた鋼を舐めとる仕草は水飴喰うに似て]
よき隣人、と呼んでほしくはあるけど
うん…
「理由」は、…逆じゃないのか?
[ふと顔を上げて、白い帽子の彼を見遣る。]
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