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―1976年・根木弥神社境内―
[根木弥神社の伝統にて代々受け継がれる名。実際に神主を継ぐのはまだ先であれど、名を襲名するのはこの時期
今年襲名したばかりの跡取り長男―――根木弥餅肌(ネギヤモチキ)は幼名を櫛次(シツジ)と言う]
アンや、どうした?
[真面目に祭事を手伝う手を一度止めて、従兄妹の少女――杏奈(通称:アン)が空を見上げながら漏らした言葉に]
虫の騒ぎが大きいか、ならば言い伝えのように連れてゆかれぬよう鎮めねばな。はは、もうシツジ兄さんではないぞ、今年からはな、兄さんは餅肌なんだ。神事の手伝いをしていかなければな。
[シツジ兄さんと呼んだ従兄妹の頭に、大きな手のひらで、ぽん、ぽん。アンは一族の中でも霊感の強い子だから虫の鳴き声に何か感じるものがあったのだろうと察するからこそ]
誰も連れて行かれぬよう祀り、虫の騒ぎを鎮めねばな。
ほら、こちらへおいで。よければ村の行く末を占う儀式の準備の手伝いをしておくれ、アンよ。
[今年餅肌になったばかりの跡取りは、アンを秋祭りの輪の中へと促すだろう]
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