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─ 数日後・事務所 ─
呉服屋の旦那が、ねぇ……。もしかして、例の噂に関わってんのかね?
[焼鳥屋で思い出屋の噂を聞いた時手にしていた報酬は、実は呉服屋主のネギヤからのもので。
呉服屋の幼なじみや小学校時代の恩師の居場所を調べてほしいと、数人のリストを渡され、対象の生死を問わず全て探し出したのだったが。]
うーむ……。
──お、鍵は開いてますよ。どうぞ。
[ノックの音に我に返り、声をかける。入ってきたのは、焼鳥屋で見知った男。名前は確か──]
テンマさんだったね。ボロソファーだが、まあ座んなよ。
─ 事務所 ─
らしいな。
……やっぱりいるのかね、「思い出屋」。
[暫し躊躇った後、呉服屋から依頼を受けた件を、テンマに語り始める。]
──で、報酬を受け取った俺が呉服屋と別れる間際に、どっかに電話しててな。
小耳に挟んだのが、「誰との思い出を作るか考えてみる」
って言葉でね。
[どう思う?と話を結んだ**。]
─ 事務所 ─
うーん……。そのあたりの呉服屋の旦那の腹積もりはどうだったんだろうなあ。
尋ねもしなかったが、どうして俺にあの人たちを探させたんだか。
あんたの言う「想い」って奴はどんなもんだったんだろう。
[普段は書類仕事をするための机に腰掛けて、足をぶらぶらさせながら、テンマの言った事を考えていたが]
や、こいつは気がつかなくてすまんね。
[客用のガラスの灰皿をテンマの前に置き]
ちょいと失敬。
[自分はコーヒーの空き缶に、飲みかけていた茶を少し入れると、ポケットから黄色い箱のたばこを取り出した。]
[自分のくゆらす紫煙にわずかに目をすがめながら]
孤独な思い出ねぇ。
──餓鬼の時分に、悪さしたのがばれて、おふくろに閉め出し食らったとかいうのはあるかな。
[至極まじめな顔と口振りである。]
[テンマの心づくしの手土産を、事務所の隅の古ぼけた冷蔵庫に入れながら]
こいつは、ここの先代の頃からの現役でねぇ。
この事務所の屋号の「萬屋」ってのも、先代から譲り受けたのさ。
時代劇の好きな御仁でねえ。
[ニヤリと笑う。]
あー……何回か、んな事があったからなあ。
昔、うちの近所にデカい空き家があってだな。ちょいちょいそこに探検しにいってたんだわ。
空き家のままのうちはまあよかったんだが、ある日借り手が決まって、職人さんやら引っ越し業者やらが出入りしだしてな。
そこへ学校帰りにいつものごとく忍び込んだら、たまたまいた大工に見付かってえらい剣幕で怒鳴られた。慌てて逃げ出して、うちに帰ったら、家主から苦情がきた後でな。
いやあ、あの時は参った。
[そんな話をしながら、椅子にかけたジャンパーを羽織り、帽子を手にとって]
入れてもらえた後にも、おふくろに、「あんたを盗っ人紛いに育てた覚えはないよ」って、大目玉食らったねえ。
さて、焼鳥屋探検の支度は出来ましたぜ。
置いてきた もの?
[考えもした事はなかった。
が]
──どうだったっけなあ……。
[階段を降りながら、しばし考え込む様子であった。**]
拝のイントネーションか?
[しばし、口の中でぶつぶつと繰り返し]
お が み が、 ̄ ― _ って感じになるなあ。
ありゃ、劇中ではどう言ってたんだったんかね。
[ビデオでも借りて確かめてみようか、などと考えているうちに]
よう、真・ヒゲのおっさんじゃないか。
[先日酔った女に絡まれていた男に出会った。**]
俺は……そうさな、本家ヒゲのおっさんじゃないかなあ。
[グリタという名前らしい男に、しれっと返しながら店に。]
[つくねを摘みながら、集まった面々の話を聞いている。]
俺かい。そこのビルの探偵だよ。
[ひょいと手を挙げて、事務所のある方を指さす。]
浮気調査とか、そんな感じなんだが。
[シャーロック・ホームズあたりを連想されてはたまらない。]
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