[散歩に行く面々を見送り、
茶会の跡を欠片も残さず片付けた。
銀のトレイに茶器等を乗せ、台所へ向かう。]
あ?子供?
おったと?どこに?
[洗い物の手を止める。
語りかける先は、戸棚の脇の鏡。]
知らん子?
迷い込んできおったか?
[移動方法にも限りある男は、
布巾で手を拭き、靴音を響かせて館を出ると]
あ――?
[あんぐりと口を開け、月を見上げた。]
[飛びきた鳩が、
みる間に白い紙へ変わり、手元へ落ちる。
それに記された文に目を通した]
ははーん?
この紙ぃ、気品ある気配じゃのう。
温かい料理、ね。
ちょっくら、気合い入れて用意すっかの。
[もう月には目もくれず、
料理人心の燃えるままに台所へと戻って行く*]
[調理を終えると前掛けを外し。
先程の白い紙で紙飛行機を折った]
…うーんとぉ、
――そりゃ!
[飛ばせばそれは
多少ふらつきながらも注文主の居所へ導く。
[豆腐とネギをごま油で炒めた雷豆腐、白身魚の野菜あんかけの平皿、大根飯の椀に布巾を掛けて携え、
元・鳩の紙飛行機について行き、
塔、最上階、一つの扉を、やがては叩いた。]
ぃやあ、どうもどうも、
『紫の森』の魔女さんすよね。
さっそくのご注文、ありぁとございやす。
[入り挨拶した刹那、
紙飛行機が変じ、転がるムーンストーンが掌に。 にやり笑み]
俺にゃねえ、分不相応なもんすが
……マ、有難く、いただいときやすよ。
[ムーンストーンを何処かへと放り込み、料理を並べつつ、ルリへ目を細めた。]
ありゃ、見かけない子すね。
どっからきたのかな?
ふんふん、
ココアの匂いっすか。
あー、洋風の料理のがお好みすかね?
ん――?
[青い蝶が羽をやすめる水晶。
どこか緊張を孕んだアンの声が、そこから聞こえたようだった*]