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[投票の結果鷹野が隣の車両へと向かう。
その様子をただ扉に凭れぼんやりと眺めていた、数人が後を追うのも景色のように流れてゆく。
やがて血塗れの小鳥遊が帰ってきて漸く扉から背を離し]
先生は、いつでもお綺麗だと思いますよ?
失礼しますね。
[座席座って眠りについてしまった小鳥遊の前に恭しく跪く。
彼女の手を自身の掌に乗せ両の手で包み込み]
…何も感じないね。
小鳥遊先生も鬼じゃないみたいだ。
[そっと彼女の手を下ろし元居た場所に戻ろうとした時、寺崎の姿が目に映る。
先程より憔悴した様子で目を閉じる彼の頭にぽんと手を乗せ]
お疲れさま、おやすみ。
[寺崎の前から村瀬に向かい直る。]
さっき希望、出し損ねてしまったね。
見たい人と…死んでもらいたい人とで悩んでてさ。
誰かが僕が近藤さんを希望したから襲われたかもって言ってたし、悩んでたら出せなかった。
ごめんよ、村瀬さん。
希望は鷹野さんと小鳥遊先生で悩んでた。
鷹野さんは明確な返事が貰えなかったから。
どうにも僕を偽者扱いしたがってたみたいに感じた、長澤君を庇ってるのかもって。
小鳥遊先生は疑い方が自発じゃなく疑い返ししているように見えたから。
これは僕の偏った聞き方のせいかも知れないけど。
だから投票が鷹野さんに決まったみたいだから小鳥遊先生を見させて貰ったよ。
皆からの不信の目も多かったみたいだし。
[そこまで言うとクスクスと笑いだし、眠る小鳥遊に向け]
でもこれで先生も名の通り自由ですね。
鷹が居なくなれば小鳥が遊べる。
ああ、あくまでも僕目線での話ですけどね?
長澤君お待たせしたね。
[きっと帰ってきているだろう彼に向けにこやかに笑ってみせる。
自身は扉の前に戻って静かに結果を待つだろう。**]
[まただ。また声が聞こえる。
耳を塞いで片隅でガタガタと震えていた。
隣の車両に行くのは投票で決められた人だけのはずなのに、何故か皆入れ替わり立ち代りに隣の車両へ足を向ける。
皆変。変。変。なんで?
またしても血濡れで戻ってくる小鳥遊の姿を見て、思わず小さく言葉が漏れた]
センセー、変。**
[バクが顔を向けた方を見やると、淡い桃色の塊が此方へ近づいてくる。
鷹野さん、だ。
その姿はとてもヒトのかたちをしてはいなかったが、纏っている空気感から、近藤はすぐにそう悟った。]
……………。
[置かれた状況を理解していないのか、不安げに揺れてかたちを変え続けるそれを、声を出さず見守る。
やがて苦しげな息を吐き出したかと思うと、薄桃色の塊は、徐々に生前のクルミのかたちを成し始めた]
鷹野さん……、お疲れ様。
[寺崎が彼女に手をかけるのも、近藤は身じろぎせず見つめていた。
コハルと同じくらい、この場に居るのが不思議に思えた優等生の彼。聡明で快活、友人思いで周囲からの信頼も厚い彼は、学生時代の己とは雲泥の差で。近藤自身、彼を信頼していたが、心の底では羨んでもいた。]
寺崎……、俺はさぁ。
必死で自分を変えて、ここまで来たんだ。
[真面目で生徒思い、人気のある先生。
その地位を掴むまで、血の滲むような努力を重ねた。]
でも、寺崎。……お前は最初から、そうだった。
俺が願って、望んで、必死の思いで手に入れたそれを、お前は最初から持ってた。
[立場とプライドに遮られて外に漏れることはなかったけれど、寺崎は近藤の劣等感を刺激するに充分な存在だったのだ。
その寺崎が、我を忘れてクルミの喉を締め上げている。
いっそ小気味良さげな面持ちで、苦悩する寺崎を見つめた]
優等生も大変だな、寺崎。
[そう漏らす己の表情は、とても教育者には似つかわしくない、と自覚しながら。]
[寺崎がクルミを絶命させた後、小鳥遊とリウがそれぞれに彼女のもとを訪れては、身勝手な想いをぶちまけてその亡骸を弄んで行った。
何の事は無い、皆それぞれに鬱屈した感情を抱えながら生きている――生きていた、のだ。
この非日常の空間で、それが徐々に解き放たれているだけで。]
――、三枝も?
[ふとコハルに視線をやる。
おっとりしていて、嫉妬や怒りなど見せそうにもない彼女にも、そんな隠れた一面があるのだろうか。
もしそうなら、
――見たい。
そう、思った。]
[『帰りたかった』と慟哭した後、屈託のない笑顔に戻って長澤への想いを語るクルミに苦笑する。
リウの嫉妬と偏愛をかきたてたのは、こういったクルミの素直さ、なのだろう。
くるくると変わる表情は、涙に濡れても、僅かな嫉妬に曇っていてさえもどこか可愛らしく、『守ってやる』と口にした長澤の気持ちは容易に理解できた。]
長澤君も、可哀想に――。
[長澤がクルミに並ならぬ想いを抱いていたことは傍目にも明らかだった。クルミを喪った長澤は、彼女をどう位置付けるのだろう。
近藤の想い人のように、半ば神格化して想い続けるのだろうか。それとも、極限状態の中で、自分に想いを寄せるリウに癒しを求めてしまうだろうか。
自身とコハルに重ね合わせるように、彼の気持ちを慮る。俄然、彼らに興味が湧いた。
と同時に、友人の為に自らの想いを振り切ろうとするかのようなクルミに、意地の悪い好奇心が頭をもたげる。]
――リウちゃんは、長澤君に、どうするつもりなんだろうね?
[虚空を見上げて誰にともなく呟くが、それがクルミに向けた言葉であることは自明だろう。さて、果たして彼女は、深淵を覗いていたのだろうか。]
/*
ちょっとクルミちゃんの死に様を補足してみた。
そして正気なクルミちゃんを死んでから狂わせようとする近藤www
せっかくのTMMIなのに、狂わないなんて勿体無いじゃない?
さぁさぁ、遠慮なく吐き出せばイインダヨー!←
[声をかけても、止めても――
クルミは別車両へと足を進める。
その光景が現実のものとは思えず。
何人かがクルミのあとを追っているが、それを、クルミは一人じゃないんだな…って思ったりして。
焦点の合わない視界を、テレビの中の出来事のようにぼんやりと見つめていたが]
……クルミ。
[急激に焦点が合うと、ハッとして駆け出す。
途中、入れ違いで戻ってくる誰かとすれ違った気がするが、目に入っていない―]
――――――!!!
[血塗れで真っ赤に染まるクルミが床に投げ出されているのが目に入る。
―――糸の切れたマリオネットのように―――]
あ…
あ…
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーー
マモルマモリタイマモレナイマモルマモリタイマモレナイマモルマモリタイマモレナイマモルマモリタイマモレナイマモルマモリタイマモレナイマモルマモリタイマモレナイマモルマモリタイマモレナイマモルマモリタイマモレナイマモルマモリタイマモレナイ―――――
[クルミの元へ歩を進めると、視界が揺れている。
―自身が震えていることには気づいていなかった]
……クルミ…寒いのか…?震えてんぞ?
こんなとこで寝てんからだよ
しょうがねーなー
ジャケット貸してやんよ
[ジャケットを脱ぐとクルミにかけ、体を持ち上げて床から座席へと移す。]
ここで寝てろや
[クルミへ笑顔を向ける。
認識したくないものは目に入っていない。
クルミがただ寝てるようにしか見えていないようだ。
血塗れのクルミの頬に唇を落とすと戻っていく。
自身も血だらけになっていることなど気付いていない――]
[元いた車両に戻ると、その足で三枝に近寄る]
三枝さん、ちょっと失礼。
[三枝の額に血塗れの掌をかざし、じっと手を見る。
――何も変化はなかった――]
ん。三枝さんも鬼じゃねーな。
車両移動希望とかしてごめんな。
[三枝の額にかざした手を下ろし、結果を伝えると、座席に身を沈めた**]
[車両の片隅で蹲り震えているが、弓槻と長澤が各々の役目を果たそうとする姿が目に映り、治まらない震えをそのままに立ち上がった]
あ、あのね……クルミちゃん、違ったの……。鬼さん、じゃなかったの。
[最終的に自分が下した決断故、語尾が小さくなる]
……ごめんね。
[ポツリと漏らすと壁に凭れ、崩れ落ちるようにまた座り込んだ**]
[働かない思考をどうにか動かそうと、弓槻が話しかけていた内容を思い出す]
それ言ったの、六花なのね。
でも、見たい人言うのと投票したい人言うのとも、あの時の状況とも全然違うのね。
コハルちゃんも過剰な思考隠しいらないっていってたのよ。
……シンヤくん、言い訳しかしてないのね。
[視線を合わせたくなくて、最後は俯いて言った]
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