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うっうっ……。
[青いアイシャドウと黒いアイラインが流れ落ちるのも気にせず、泣き始める]
マトリョーシカが1つ、マトリョーシカが2つ、マトリョーシカが3つ♪
[涙を流したまま、奇妙な節をつけてマトリョーシカを開いていくが、<49>個のところで手を止めた]
やっぱり1つ足りない……うっ。
[いちばん最後の人形の変わりにつめられていたのは小さな紙片。
そこには、暗号のようなものが2つ]
イヤなこと思い出しちゃったわ。
あいつらと、こんなところで会う筈なんてないのに。
[うつむく口元に微妙な笑みが浮かんでいる**]
あら、そうだったの。
流石に三等車ではないだろうと思ったけれど。
今から動いても…もう、足の踏み場もなさそうね。
逢いたい時にすぐに逢いにいける、と思えば、
近いのも悪くはないかもしれないわね。
始まりはいつも躍動を伴って、けれどゆっくりと、次第に速く。
[花火の音、爆竹の音、蒸気機関の上げる汽笛の音、車体の軋む音、初めはゆっくりとした振動も、次第に軽快なものに変わるだろう]
maestoso というところかな。
[くすりと笑って、ベッドから降りると、部屋を出る]
せっかくの旅だし、さっそく部屋に籠もるのも勿体ない、ね、ヤナーチェク。
[左腕の兎は、ここばかりは同意するように、かくんと頭を垂れた]
動き、出したわね。
[勇壮なファンファーレ、花火の音。
手を振って見送る式典参列者達に、手を振り返し。
流れる景色を楽しげに眺めている*]
[サロンで食前酒をたしなみながら、手に持った書類に目を通す。どうやら客室の配置図と乗客リストのようだ]
発車までの時間にカフェーを味わい、車掌に変装し手に入れられる程度の危機管理では、女帝も大した事はなさそうだ。くっくっく。
[細巻きの煙草に火をつけると、指で乗客リストをなぞって行く。一人の乗客の名前で指がピタリと止まる]
ラウリ・スモーバー…。アナスターシェの血族に、似たような名前の家があったような。ふぅむ、調べてみるか。
[紫煙を吐き出すと、乗客リストを懐にしまい、酒の味を*楽しんでいる*]
ふふ、足を踏まれる可能性の方が高いでしょう。
そうですね、いつでも、あなたを守れます。し、いつでも会いに来てください……と言いたいところですが……どうも、ワタシの方がきな臭いかもしれません。
−ピェルヴィクラース・コンパートメント−
『斯くして女帝は壮麗なる莫斯科を背に
浦潮への長い旅路へ吾を誘い給ふ。
遙かなる東の凍土。吾の血潮は彼の地に遠く、また近くも繋がれり。
白き大地と花の色は離れてなお、魂の記憶に鮮やかなれば』
…おや。
[葡萄黒の万年筆が動きを止める。
窓の外に視線を向けると、爆竹の音は華やかに出発を謳った。
先程開けたピロシキの包みの中身は既に胃へと消えている。
書きものをしない手には、今はプリャーニクと呼ばれる菓子があった]
あら、そうなの?
あなたの方がドジを踏むなんて珍しいわね。
いいわ、直接逢うのは、先のお楽しみに取っておきましょう。
私もしばらくはのんびり過ごすつもりよ。
さて、と。
[列車の簡単な見取り図を思い浮かべる。前から、蒸気機関、一車両目には件の……、それから順に一等、二等、三等の客車、さらに後ろに貨物車が続く、はず。人差し指を顎に当て、思案しながら]
激しくうろ覚えだけれど、まあいいかな。
[行ってみればわかるし。と、前、後ろ、と交互に見てから、とりあえず前の車両を目指してみる]
[茶色い表面の上には粉砂糖がかかり、まるでそれは残った雪に似ている。
蜂蜜入りの生地、胡桃に干葡萄にジャムが入っている。
崩れやすいその菓子の最後の一口を丁寧に口に運んで、
それから書きものを止めた手は万年筆に蓋をした。
窓の外には遠くなっていく駅があった]
さて───旅は道連れ、と言うからには少し散策するのも悪くないな。
[分厚い手帳と万年筆を懐へと仕舞い込んでベッドから腰を上げた。
上質な生地で作られた長い外套の裾がひらりと揺れる。
コンパートメントの扉を開いて廊下へと出れば、向かうのは食堂車]
(己の旅の道連れと成り得る人々を見ておくのは悪くない)
そう珍しい事じゃないですよ、この前だって捕まえた賞金首より損害の額の方が大きかったですし。
……。こほん。
まだはっきりした感触はないのですが。用心するに越したことはないですし、念のため、ですね。確認出来たら報告します。
確か食堂車があった、ような。
[無いわけ無い。それだけの長旅だ。
客車を移る、と、連結部分で受ける風は、きりりと引き締まりつつも心地よくて、目を細めた]
ん、いい音です。
[たぶん、機関車までいけば五月蠅いのだろうけれども。あるいは、トンネルにでも入れば。そんな事を考えながら、いくらかその場にとどまって。
寒さで指が冷えた頃には、食堂車へと向かうだろう。温かいお茶でも飲みに**]
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